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朝餉、昼餉、夕餉と、なつはその時刻が来るのが楽しみだった
帰蝶と揃いの茶碗を使うのが嬉しくて、仕方がないのだろうか
他の城と違ってこの織田家は、和気藹々と局処が花盛る
一人で食事を済ませることもあれば、何人か集まって食すこともある
今は腹の膨れつつある巴を囲んで食事をするのが流行っているらしく、昼になると自然と巴の部屋に女が集まった
と言っても、ここのところその部屋にお能の姿はないが
本丸勤めの菊子も当然居ないものだが、代わりに『清洲のお日様』と喩えられるようになった市弥が居れば、その場は華やかな雰囲気に包まれる
この日も巴の部屋に何人かの女達の食事が運ばれ、巴が中央に座って待っていた
「いらっしゃいませ、おなつ様」
「あら、私が最初ですか?」
「もうぼちぼち、みなさん集まられると想います」
「そうですか」
なつはにっこり微笑みながら、与えられた自分の席に腰を下ろした
少し斜めに見る巴のお腹が、ほんのりふっくらと膨れている
『帰蝶の子』は生涯、帰命一人だと想っていた
巴の産む子も、名目上は『信長』の子であり、即ち、『帰蝶の子』にもなる
理由も結論も聞かされたが、なつにはなんとなく納得し切れない『気持ち』と言うものがあった
それでも、帰蝶が決めたことなのだから異論など出せる筈がない
『愛する人の子』を、そうではない人間の子として産み、育てると言うのはどんなものなのだろうか
                
『もしも』帰蝶が男だったなら、自分は帰蝶の子を産みたいと願うだろうか
そんなことを不意に想い描いてしまい、なつは自分が耳まで熱くなるのを自覚した
「おなつ様?如何なさいました?」
「あ・・・、いえ」
なんでもないと、なつは慌てて首を振る
「そう言えばおなつ様、以前よりも食が太くなられましたね」
「え?そうですか?米が美味しいく感じるからでしょうか」
さり気なく話題を変えてくれる、巴の気の利くところは大好きだ
帰蝶にはない聡明さが滲み出ている
それを想えば、巴のお腹も愛せるような気になった
「お茶碗が変わってからではありませんか?」
「そんなつもりはないのですが」
と、わかっていながら笑い出す
「殿の、お見立てなのだそうですね。伺いました」
「あら、お恥ずかしい・・・」
実は、殿と夫婦茶碗なんです、などと自慢げに言ってやろうかと思い立つ
そのなつに、巴は自分の茶碗を持ち上げて、見せびらかす
「実は、私も」
                
目の前に、自分と全く同じ柄の茶碗がある
なつはぽかんとした
「殿が、誂えてくださったんです」
「はあ・・・」
「おなつ様がこの頃よくお食べになられると聞いたらしく、だったら同じ茶碗なら巴の食も進むだろう、と」
「はあ・・・」
「大方様も、同じ茶碗を」
「え?」
慌てて腰を屈め、市弥が座るであろう膳を見詰める
                
確かに、同じ茶碗が置かれていた
「殿のお気遣いに感謝しながら、毎日米を食べております。そうすると、なんだか元気になれるような気がいたします」
と、若い娘らしく瑞々しい微笑を浮かべる
なつは、箸をばっきりと折りたい気分に駆られた
「それはようございましたね」
引き攣った顔で笑顔を浮かべるので精一杯だ
後から市弥が入って来たことには気付かなかった

「殿ー!」
昼餉の済ませた帰蝶の私室前の庭に、利家が駆け込む
「どうした、犬千代。何かあったか?」
「ええとですね、これから市中の見回りに行きたいんですが」
「夕べの今日で疲れているだろうが、励んでくれ」
「それでですね、見回りの最中に昼を食べようかと想ってるんですけど」
「おまつは弁当を持たせてくれんかったのか?」
「それが二番目が腹ん中に居るもんで、今、悪阻の最中でしてね」
「食べ物の匂いに弱い時期に入ったのか」
「それで、食堂に入りたいんですけど」
「一々私の許可などいらんだろ?お前の入りたい店に入ればいい」
「そうじゃなくて」
「さっきから『そ』で始まる会話ばかりだな。先に進まん、さっさと話せ」
「だから夕べ、殿に立て替えた『花代』を返してもらわないと、昼が食えんのです」
「花代?」
キョトンとした帰蝶の表情に、イラッとした口調で応えた
「女です」
「ああ、そうか。そうだったな。それで?」
しらっとする帰蝶に、頭の血管が切れそうになる
「立て替えた代金を返してください」
「ああ、確かに後で支払うとは言ったが、昨日の今日で早速請求か。お前は図体に合わず、随分と『ちっちゃい』男だな」
「何で知ってるんですか?!」
帰蝶の言葉を受け、利家は顔を真っ赤にして股間を掴むように押さえ隠した
その行動の意味がわからず、帰蝶は首を傾げて続ける
「なら、請求書を起こしておまつに持たせると良い。おまつは結婚前は前田の財布の管理を習っていたのだろう?請求書の起こし方も知っている筈だ。吉兵衛には言っておくから、いつでも取りに来いと伝えておけ。私も、久しぶりにおまつの顔が見たい」
          女代をおまつに取りに来させるんですか?あんた、鬼ですか」
                 ?」
利家の言葉が『全く理解できない』帰蝶であった
その帰蝶の部屋になつがやって来る

「お七の処遇ですが」
と、開口一番そう言いのける
「お能はなんと言っている?さっき顔を合わせたが、結局また泣いてしまってな、何も聞き出せなかった」
「仕方ないでしょう?女心は複雑なんです。頭ではわかっていても、心は納得できないものです。例え、お能が自分から出した提案だとしても、それが現実になると『理解』と『納得』が不合意するものです」
「そう言うものか」
『女心』の理解できない帰蝶には、なつの言ったことは然程飲み込めない
それでもわかった振りをしなくてはならなかった
「それで、お七をどこの部署に配属する気だ?」
「その件についてですが、お能と話し合いまして、しばらくは『客分』として扱うことにしました」
「どうしてだ」
「殿はお七の体を見ましたか?」
                 ?」
わからず、帰蝶はキョトンと目を丸くする
「見た目は、そうですね、顔の肉付きはそれほどでもないでしょうが、首から下は骨と皮だけです」
「え?」
なつの言葉に首を傾げる
「確かに貧相な顔立ちではあるが、そこまで」
「殿。お七に話を聞きましたか?」
                
私生活については何も聞いておらず、帰蝶は黙って首を振った
「これまでの生活、お七は食べるものも全て、子供達に分け与えていたそうです」
「え・・・?」
確かに「子供達にはひもじい想いをさせたことはない」とは聞かされていたが、そこまで及んでいるとは考えもしなかった
「自分の食べるものも、腹を空かせた子供二人に与え、自分はいつも汁だけだったとか」
「そんなことが・・・」
「それでも、ああやってしっかり足を踏み締めているんです。相当の気力を持った女なのでしょうね。それ自体は賞賛に値するとは想いますが、如何せんあのようなみすぼらしい風体をしていては、局処の女達が怯えます」
          確かに」
帰蝶は小さく呟いた
今のお七には、局処で働くよりも柳の下で佇んでいる方がお似合いだろう
「それで一ヶ月は客として扱い、その間に充分滋養を摂ってもらい、多少なりとも肉付きが良くなったところでと、話が一致しました」
「そうか、わかった。お七の滋養が足りてないことまでは、頭になかった」
「ええ。織田も、殿がお輿入れされるまで食事は慣例どおり一日二食でしたから、朝餉が出て驚いてましたけど」
「三食は食わんと、一日持たなかったからな」
「山を駆け回るのに、でしょう?堀田様にお伺いしました。他の者はみな、通例どおりの一日二食に対し、殿だけは朝昼晩、しっかり食べていたと」
「だから、こんなに立派に育ったんだっ」
自分は決して大食いの類ではないことが言いたくて、両腕を広げて胸を張る
「育ち過ぎです。そんな大女、目立って仕方がないでしょう?」
                
きつい一言に、消沈するが
          お能は、何故、傷付くとわかっていながら、自らお七を引き取ったのでしょうね」
なつはそう、ぽつりと呟いた
「一悶着程度で済めばいいのですが」
「だからこそ、平三郎はお能を愛したのだ」
          え?」
ほんの少し、声の低くなる帰蝶に、なつは目を丸くして見詰めた
「感情論だけを取れば、お七親子など放っておけばよかった。それでも、放っておけなかった。平三郎が自分に託した想いを、お能は必死に遂げようとしている。自分の心に嘘を吐いてまで。だから、私もそれを支援したかった」
「殿・・・」
自身が夫から夢を託されたからだろうか
だから、お能の気持ちがわかるのか
戸惑いながらも、その『想い』を叶えてやりたいと願う、お能の気持ちがわかるのか
どことなく懐かしんだような顔をしている帰蝶を見詰めながら、そんなことを考えた
「もしもそれが吉法師様だったなら、お七親子共々、八つ裂きにしているがな」
                
できもしないくせにと、なつは苦笑いする
「それはそうと、いいところへ来た」
「はい、なんでしょう」
話を変える帰蝶の言葉に、背筋をしゃんと伸ばした
「今、三十郎が五郎左と組んで小牧山の砦を改築している」
「ええ、伺っております。何でも、住居に立て替えるのだとか。それでいて砦としての機能も拡大させるそうで、随分と予算が掛かると吉兵衛が苦虫を噛んでおりました」
「私を気遣っての改築だろうが、そうなると一時的に小牧山に移ろうかと想っている」
「小牧山にですか?まさか」
「いや、本拠まで移すつもりはない。織田の本拠はあくまでこの清洲だ。美濃攻めの間だけは、小牧から出陣した方が早い」
「そうですね。背後に土田、金森、遠山が居れば後顧の憂いも少ない。おまけに、犬山への監視も行える。一石二鳥と言うところでしょうか」
「そんなところか」
「まさかとは想いますが、お能とお七のことを予見して、厄介ごとに巻き込まれ面倒なことになる前に回避しようとか言うお考えでは?」
          小牧山に菊子を連れて行きたかったのだがな」
                
逃げたな、と、なつは心の中で想った
「菊子も今ではすっかり帰命の乳母として、貫禄が板に付いて来た。それに、小牧山に帰命を連れて行くわけにもいかん。かと言って、懐いている菊子を連れて行けば、帰命が駄々を捏ね、義母上がお困りになられるだろうしな」
「若様も、菊子の言葉にはよく従うようで」
「全く。父親に似て、親の言うことを全く聞こうとせん」
                
では、殿は如何だったのですか?と聞きたくなる
どちらかと言うと、父親の信長よりも、母親の帰蝶に似た傾向があるように想えて仕方のないなつであった
特に、年端もいかぬ内に口が回るところや、大人も絶句するような言い訳の上手さには定評がある
「だからとしても、お能を連れて行くことも困難だしな」
「当然です。局処はお能が全て取り仕切っているのですから、これから出産を控えようかと言う巴の方に負担が行ってしまいますし、土田の窓口になられている大方様に分担させるわけにも参りません」
「そこで考えたのだが、局処でもこの頃暇を持て余している者が居ると聞いてな」
「まあ、そんな好都合な人間が居たのですか?」
「ああ、偶然な。局処はお能と吉兵衛が居れば、困ることもそうないだろう」
「そうですね。でも、その『暇を持て余している人物』とは?」
「なつ、一緒に参れ」
          私のことだったのですね」
『一緒に来い』と誘われるのは嬉しいが、余計な一言が邪魔をして素直に喜べない

十月に入り、帰蝶と共に小牧山に出向く人事が発表された
黒母衣衆筆頭の秀隆は勿論のこと、勝家、可成、成政、勝家にくっついて利家、実家が近いと言うことで佐治も池田隊から離れて随行することになり、小牧山砦の普請に携わった長秀、三十郎信良も同行する
清洲の護衛として残ることになった信盛は論外として、それ以外は加納砦と墨俣砦に分散されることになったのだが、長く佐治と組んでいる藤吉が離れて行動するのは嫌だと申し出、子供のように駄々を捏ねるものだからさすがの帰蝶もそれに折れた
大垣調略でも成果を挙げた二人だからこそ、要求を呑んだだけなのだが
その藤吉から、この夏、武家長屋で付き合っていた女と祝言を挙げたと聞かされ、馴染みの浅い家臣とは言え、人の幸せは素直に喜びたいと、そう想っていたところに義母の訪問を受ける
「美濃攻めを前提にしても、側には犬山の城が聳える。上総介、万が一にも三つ巴の戦いにならないとも限りません。どうか、充分に注意を」
開口一番、市弥は真剣な目をして帰蝶の身を案じた
「義母上、出発は来年の年明けです。今から心配なされていては、心が持ちませんぞ」
義母の目を、笑いながら見詰め返す
「わかっているわ。だけどお前は、『血気盛ん』なお年頃だから、なつには『きっちり』監視するようにと言付けてあります。お前は余計なことを考えず、存分に励みなさい」
          ご配慮賜り・・・」
単に気が短いと嫌味を言われ、眉間に皺が寄る
都合に合わせてなつを同行させることにしたことが、まさか『監視役』となるなど露にも想わない
自分の裏を掻く市弥に、帰蝶は内心舌打ちをした

「え?結婚?」
小牧山に出向の決まった佐治が、同じく小牧山配属の決まった藤吉からその話を聞かされた
「いつですか?」
「先々月ね」
少し照れ臭そうに藤吉は応えた
「どうして言ってくれなかったんですか、水臭いじゃないですか」
「すまん、すまん。丁度佐治さんが市橋との談合で忙しかった時期だったしね、話しそびれちゃって」
「そうだったんですか。私もどたばたと美濃と尾張を往復していて、藤吉さんが来たり来なかったり気にはなっていたんですが、中々暇が持てなくてうっかりしていました。事前に伺っていたら、お祝いでもお贈りさせていただいたんですが」
「そんなそんな、気を遣わないでくださいよ」
藤吉は笑いながら両手を振った
「結婚ったって、武家長屋で小さな祝言を挙げただけ。おまけに、女房の実家からは結婚を反対されててね、それを押し切ってやっちゃったもんだから、あんまりおおっぴらにもできなかったし」
「そうですか。奥方様は確か、浅野家の家臣の木下様でしたか」
「ええ。私との結婚を妨害しようと、女房をあちこちに養女にやって、最後には仕えてる浅野家の養女にしやがりましたけど、そんなのこっちには関係ありませんからね。養女とは言え浅野家の娘を雑兵にやるなど以ての外、なーんて嫌味言われましたけど、そんなの出世しちゃえば問題ありませんもん」
前途多難な新婚生活を送っているにも関わらず、藤吉は極めて明るい顔をして言ってのける
その陽気さは、今の佐治には羨ましかった

          佐治だけ?」
辞令を妻の市に伝えた時の、あの嫌そうな顔は一生忘れられない
小牧山の砦周辺に屋敷を建て並べ、そこに連れ添う家臣らの家族を迎える準備は着々と進行しているのだが、身重の市はそれから除外された
安定期に差し掛かっているとは言え、若年での初産である
移動中にもしものことがあっては一大事と、市弥の猛反対に遭い、佐治は泣く泣く市を置いていくことにしたのだが、それを伝えようと説明した時の、市の歪んだ顔は中々に強烈だった
それを想い出し気落ちする傍ら、明るい藤吉の表情が心底羨ましく感じられた
どんな困難があっても、常に前向きで居られるその性格は真似しようとしても中々できない
生まれ持った性質がそうさせているのだから、生真面目な佐治には無理難題以外の何物でもなかった

「へえ、そうですか。佐治さんとこは、奥さんはお留守番で」
「動かすわけにはいかないもので」
「そうですよねぇ。出産を控えた身なら、中々遠出は無理でしょう」
事情を説明すると、藤吉は親身になって聞いてくれた
佐治と藤吉の実際年齢は八つほど離れている
当然、藤吉の方が年上なのだが、それでも自分を年下の若造と舐めて掛かるような態度はこれまで、一度も取ったことがない
自分より少し後ろに下がって、背中をそっと押してくれるようなその物腰の柔らかさは、佐治を和ませてくれていた
今ではありがたい存在となっている
「それで、嫌味を言われてしまって」
「へえ?、なんて?」
「『どこへなりとも行け』、と」
          ははは!」
聞いた途端、藤吉は口を大きく開けて笑い出す
普段からニコニコしている所為か、藤吉はまだ三十にもなっていないのに、顔中『笑い皺』だらけだ
その皺が深く刻まれ、高い声を出して笑うものだから、見ているこちらも可笑しくなって来る
「あの『クソ生意気そうな小娘』だったら、言いそうなことで」
                
たまに莫迦正直になるところは、中々馴れないが
以前は隣同士だったからか、織田家の娘であることまでは知らないとしても、一応藤吉は市のことを知っている
その時感じた印象が今も抜け切れないのか、藤吉の市への『見た目』と言うのは決して良くはなかった
確かに、『市をよくわかっていない人間』にとっては、クソ生意気な小娘かも知れない
そう想うと、妻には悪いと心の中で詫びながらも、否定することは差し控えるに留まった
「そうかぁ。佐治さんも、父親になるのかぁ」
「藤吉さんもご結婚なされたのですから、直ぐにできますよ」
「だと嬉しいなぁ」
「武家長屋を引っ越してからは、藤吉さんとも仕事でしか顔を合わせられなくて、お互いの様子を伺うこともありませんでしたしね」
「ああ、そうだった。佐治さん、池田隊に正式入隊してから間もなく長屋を出て行ってしまったんですものね。その後入って来たのと言えば、佐治さんとは正反対の喧しい男で」
                
その『後釜』が利家であることを知っている佐治は、なんとも返答できず困った顔を笑うように歪ませた
「なんでも、前は西側の長屋に居たそうなんだけど、日当たりが悪いからって移って来ましてね」
「そうですか」
「聞けば柴田様のところの、前田家の次男だとか?佐治さん、ご存知ですか?」
「さ、さあ、誰のことやらさっぱり」
と、誤魔化そうとしているところへ、見回りに行こうとしていた利家が通り掛かる
「よう!佐治!元気か?!俺はこれから外回り行って来るさ!」
「は・・・、はあ・・・」
「じゃあな!殿におやつ残しててくれって、言っといてくれよな!頼んだぞ!」
と、大きく手を振る利家を見送る
「佐治さん、あの男ですよ、隣の住人」
「そうですか」
「お知り合いだったんですね」
「どうも、そのようで・・・」

「言ってくだされば良かったのに。よく考えれば、佐治さんは織田の家臣。あの人も織田の家臣なんだから、顔くらい見知ってますよね」
「はあ・・・」
実はよくご存知ですと説明すれば、藤吉は悪びれた様子もなく笑い飛ばし、挙句の果てには呆れたような顔をして説教を食らわせる
付き合っていて、どうにも飽きない男であった
「まあ、お近付きになれば俺にも出世の道が開けるってもんです」
「殿はそれだけで人好きしませんけどね」
「そうそう、その織田のお殿様。俺もたまにお顔を拝見しますけど、随分お綺麗な方ですよね。武家の男ってのはみんな、あんな女みたいな顔してるんですかね。いや、蜂須賀様だけを見ていたらそうでもないような気もしますけど、斬り込み隊の隊長は女顔ですし、黒母衣衆の筆頭も武人にしておくには勿体ない美形ですけど。ああ、佐治さんもお綺麗で」
「どうも・・・」
取って付けたような誉め言葉に、佐治の頭から汗が流れる
「あんな綺麗な顔して、この先やってけるんですかね」
「え?」
「ほら、よく言うでしょ。『綺麗な顔して』って。綺麗な顔しておっかない人ってたまに居ますからね。織田のお殿様だって、ご自分の奥方のご実家を攻めてらっしゃるわけだし、妹の嫁ぎ先まで手に掛けようとしてる。その内自分の周りが敵だらけになっちまう」
「そうですね・・・」
藤吉の言っていることは、いつか現実になるかも知れない
そうならないかも知れない
佐治にはどちらとも取れず、そう応えるしかなかった

「お帰り」
          ただいま」
少し疲れた顔に、無理をして微笑む
目の前の妻・市に心配を掛けさせたくなくて
ただ、それだけで
僅かに目を落とせば、膨れている腹が見える
そこに自分の子が居る
なんだか不思議な気持ちになった
「今日はどうだった?」
そっと、腹を労わる言葉を掛ける
「うん、かなり動いてた」
市も静かな口調で応えた
「私のお腹、足で蹴っ飛ばしたのよ?」
「もうそんな活発に動くようになったのか」
「母様は、お腹の形を見て男の子じゃないかって、言ってる」
「大方様が来られてたのか?」
「ううん、今日じゃないけど。この間」
「そうか」
「今は佐治も忙しいし、局処の方も人事異動があったから、母様もお城から出られないみたい。土田とも交信してるし」
「そうだな」
腰を上げ、撫でるように市の腹に触れる
「男の子か」
「そうしたら、佐治の跡取りができるね」
                
そう言って、にっこり微笑む市が眩しく感じた
破瓜を割り、女になり、子を宿しても、市はなんだかまだ穢れのない少女のままのような気がして
無邪気に笑う幼い頃を想い出し、これもまた佐治を不思議な気分にさせた
「うん、そうだな・・・」
感慨深いものがあり、それ以上の言葉が掛けられない
「もう安定期に入ってるし、さちを見舞いに行ってもいい?」
夫の後ろから廊下を歩き、佐治の背中に声を掛ける
「さち、まだ床から離れられないのか?」
「最近は起きることはできるようになったけど、まだ立ち歩くことは無理みたい。子供を産んで随分になるのに、元気なさちにしては産褥が長いって、母様も心配されてるの」
「そうだな、さちは局処の人気者だったからな、みんな心配してるだろ」
「行ってもいい?」
「ああ、無理をしない程度にな。向こうは弥三郎さんのお屋敷だし、母親のやえさんも着いてるから大丈夫だとは想うんだけど」
初め、よそよそしい言葉しか掛けられなかったのが、いつの間にか夫婦らしい会話ができるようになっていた
それも佐治にとっては不思議なことだった
市を娶ってから、佐治は毎日不思議な気分に浸っている
どうにも馴れない
「私は、いつ、小牧山に行けばいいの?」
居間に入り、佐治の少しずれた横に並んで座る
市が自分をじっと見詰めているのが雰囲気で伝わって来た
「私が小牧山に行くのは、暮頃だから、市はそれから少し後かな」
「一緒に行けないのね」
「それは以前に、ちゃんと説明しただろう?今は動かせないし、何より、小牧山に行く頃には、市は臨月に入ってるかも知れないじゃないか」
「そうだけど」
今年で十五になった市だが、体付きはまだまだ子供だった
その、若干小さな体で子を宿した姿は普通の妊娠期よりも腹が膨れて見え、医者の見立てでは、子が出て来るのは今年の終わりか新年早々だろうと診断されている
正にそんな時期に小牧山の砦に移動するのだから、連れて行けるはずもない
増してや
「あの、元気だったさちでさえ、初産で弱ってるんだ。大方様のご心配も頷ける」
結婚前は一人で那古野まで行っていたさちが、子を産んだ途端床に伏せがちになっている事実に、然しもの市も口答えができなかった
「わかってるけど、でも、これ以上佐治と離れ離れはいや・・・」
「無理をしたら、それこそ元も子もなくなってしまう。少しだけ辛抱すれば、また逢えるから」
そう言って、佐治は宥めるように市の頭を撫でた
その手を払い除け、市は佐治の胸に凭れ掛かる
「ほんの少し?」
佐治の小袖の襟を掴み、胸元で呟く
「少し我慢すればまた、佐治と一緒に居られる?」
「ああ。そのために、少しだけ我慢するんだ。ほんの少し、ほんの少し。つらいことを我慢した先には、きっと、楽しいことが待ってるぞ?」
「楽しいこと?」
「いつ、市が来ても大丈夫なように、屋敷をきちんとしておくな。子供も育てやすいよう、工夫しておく」
「本当?」
「ああ、本当だとも。私を誰だと想ってるんだ?織田では丹羽様の次に『普請の天才』と呼ばれてるんだぞ?」
          初耳」
                 っく・・・」
市の真顔で突っ込む様に、佐治も苦笑いする
「まあ、『一部』で有名なだけだけどね」
「それって、『知る人ぞ知る』ってこと?」
「そうだな。          知らない人は知らない、ってことか」
「ふふふっ」
自分で言って呆然とする佐治に、下から見上げている市はその表情が可笑しくて、吹き出す

佐治が欲しいと駄々を捏ねたあの頃が、まるで遠い昔のように想えた

朝倉家に正式に仕官することになり、今日はその朝倉家に仲介してくれる、しきの親類と落ち合うことになり、再びしきの寺を訪れる
「明智様!」
寺の前で十二~三の少女が自分に手を振った
          綾乃様」
その娘は、これから自分が世話になる越前斎藤の愛娘である
しきにとっては従兄妹の子で、従姪に当たる
朗らかで明るく、活発な少女であった
どこか帰蝶を想い出させるような
「三宅様、今日は」
「今日は」
光秀の従者である弥平次にまできちんと辞儀ができるのだから、帰蝶にはない配慮である
「お出迎え、ありがとうございます」
「いいえ。ご機嫌如何ですか?」
帰蝶と違うところは、目上の人間をきちんと敬えるところか
「ええ、麗しいほどに」
「それはようございました」
「ところで、綾乃様は如何してこちらに?」
綾乃の実家はこの近くにあり、時折煕子を見舞ってくれていることは知っていた
なので、光秀にとっても顔見知りではあるのだが、今日、ここに綾乃が居ると言うことは、父親にくっついてやって来たのだろうか
単純にそう想っていた
「だって、明智様は明日から朝倉家の門を潜るのでしょう?」
「ええ、そうですが」
「私もですから」
「え?」
綾乃の言葉に、光秀も弥平次もキョトンと目を丸くした

「このしき殿と私の父は兄弟でして、しき殿は兄上の子、私はその弟の子であります」
綾乃の父・斎藤利宗は名が現すように、れっきとした美濃斎藤の流れを汲む家筋の生まれである
正しくはしきの従兄妹に相応する
「父同士は異腹の関係ではありますが、同時に乳兄弟でもあり、同じ女性を乳母として育ちました。故に実の兄弟とも言える間柄で、兄の危機は弟の危機、弟の危機は兄の危機と、互いを支え合って育ち、弟は兄の役に立とうと、こうして越前までやって来て」
越前を中心として、斎藤家は日本海沿いに広く分散している
『藤原家』から派生した『斎藤』の本家は東北にあり、利三の『斎藤』は『美濃斎藤』の嫡流なだけで、斎藤家の宗家ではない
越前斎藤も然りでその内の一つではあるが、そもそも利宗は美濃の出身であった
しかし、越前斎藤に跡取りがないことと、次男であったことが重なり、利宗の父が越前斎藤家の嫡養子として入り、現在に至る
「父の代で越前斎藤の家禄を受け継ぎ、今日まで至る次第でございます。その辺りのことは、既に聞き及びか?」
「は、はい」
仲介したのは、『越前蜷川家』であった
蜷川は、今も斎藤に留まる利三の母の出身
名門中の名門であり、嘗ては幕府相伴衆にも数えられ、その力は朝倉家を凌駕するほどの勢力で、近隣諸国にも少なからずとも影響力は及ぶ
故に、利三の家が蜷川家の干渉を受けても、拒絶できない立場にあった
蜷川家が斎藤に内政干渉するのにも、やはりこのしきの存在が多少なりとも影響する
こんなところで、利三としきの関係が浮き彫りになるのだから
光秀は越前斎藤、如いてはその後ろ盾とも言える蜷川家の恩恵をも受ける計算だった
「しき殿が美濃に留まり、明智家に輿入れし、美濃斎藤と外戚関係にまで発展し、更には」
「兵九郎、もういいでしょう?」
しきは聊かうんざりした顔をして止めた
光秀が座敷に入るなり、延々と家系を説いているのだから
「爪先が痺れて来たわ」
「何を言うか、しき殿。我ら、子供の頃こそ互いの顔も見知りはしなかったが、こうして時を経て巡り会い、再び同じ血を通わせられるようになったと言うのに、これだからおなごは嫁いだ先の家しか考えん薄情者で困る」
「まあ、私がいつ、斎藤のことを考えなかったと?」
利宗の言葉に、しきの目が釣り上がるのを、光秀も弥平次もハラハラして見守った
利宗はしきの、明智家での暮らしを知らない
『美濃一のじゃじゃ馬』と称された帰蝶と、ほぼ『互角』に戦っていたのだから
「今の言葉を聞きましたか、十兵衛、弥平次、綾乃。私は非常に悲しい想いをしております。長山でのあの光景を、今ここで、兵九郎に見せてあげたい気分です。私がどれだけ苦労していたか、斎藤の名を汚さぬよう、日々戦っていたことも何も知りはしない。なのに、この言い草はどうでしょう!」
「ま・・・、まあ、まあ、義叔母上様」
「頑張りが足りんのではありませぬか?明智は一家離散の憂き目を見、斎藤も今は尾張の織田に攻め込まれておる。その斎藤も、嫡流が枝葉のような存在に成り下がってしまった。美濃で一体、何が起きたと言うのです」
                
利宗の疑問は、成る程のものだった
応えられるものなら、答えたい
だが、光秀もしきも、応えられなかった
当事者である二人にも、何故、『それ』が起きたのか、理解できないのだから
しきを宥めようと中腰立った光秀の手が、空しく宙を泳ぐ
部外者の綾乃だけが、キョトンとした顔をしていた

          そうですか、綾乃殿は奥室の」
「はい。花嫁修業として、朝倉様の奥方様の許で見習い奉公をすることになりまして」
気分転換のつもりで煕子を誘い、四人で中庭に出る
「それで、共にと仰っていたのですね」
「何れどなたの妻になるのか私にはわかりませんが、家の恥にならぬよう今から身に着けるべきことは身に着けようかと」
                 っ」
綾乃の言葉に、光秀は想わず吹き出した
「あら、私、何かおかしなことを申しましたでしょうか」
「いえ・・・」
慌てて取り繕うとするも、おかしさに笑い出した喉は、中々元には戻らない
「あの・・・」
「違うのですよ、綾乃様」
そっと、煕子が間に入った
「旦那様は、きっと、斎藤の姫様のことを想い出したのだと存じます」
「え?」
「あ、私もそうです」
と、弥平次も小さく挙手した
「斎藤の姫様・・・」
「ええ。何事にも自由で、束縛を嫌う姫君でした。しき様とも、何度も衝突したり、だけど、それでも決して心折れぬ強い意志の持ち主で、女ながら頼もしいお方でした」
「まあ、そのような方が」
「明るく元気で朗らかで、凡そ悩み事などないかのように見えて、その実、誰よりも思慮深く、いつも時代を見詰めて愁いておられました。綾乃様はどことなく、その姫君様に雰囲気が似てらっしゃるのです。なのに考え方が真逆なものだから、きっと、それがおかしくて、旦那様は笑ったのではございませんでしょうか」
「・・・ええ」
笑いを抑え、漸く口を開く
「綾乃様、大変失礼いたしました」
「いいえ」
「人は絶望すると、強大な力に頼ろうとする。今の私が正にそれに当て嵌まり、心の中で縋っているのです。嘗ての、小さな姫君に。今も・・・」
「明智様・・・」
「そうあってはならないと、自力での回帰を願い、こうして朝倉家に仕官へ、そう言った次第でございます」
「そうですか、明智様はそのようなお考えで」
柔らかな、春の日差しにも似た暖かな微笑を浮かべ、綾乃は光秀に言った
「明智様の願いが、一日でも早く叶うとよろしいですね」
                
まるで、それは、まるで、帰蝶が微笑んでいるかのような
そんな錯覚を感じた
          ええ。・・・ありがとうございます」
光秀の礼に綾乃は「いいえ」とでも言いたげに、そっと辞儀をする
思い遣りに溢れた優しいお方だなと弥平次は、綾乃を見詰めた

人肌恋しい想いは時々強くなり、側に居てもその温もりを求め、安定期に入ってからは腹を庇いながら躰を重ねることも屡だった
その度に佐治は断りを入れるも、市が欲しがって仕方ない
夫婦の契りを結んだ後も、市とてそう強請ることはしなかったが、妊娠し、腹が膨れると徐々に性欲が強くなって行った
女の経験も豊富ではない佐治なので、誰に相談すればいいのかもわからず、市の強請るまま床で抱く
腹を庇うものだから、自然と市が四つん這いでの姿勢になった
腰を突き動かしながら、腹の子は大丈夫だろうかと考えると、中々絶頂を迎えられない
それが『じらし』となって、市を熱くさせた
想わぬ方向で妻を満足させていることを、佐治だけが知らなかった
それでも、やがては限界を迎える
小さく呻きながら、佐治の精が放出された
          あぁ・・・ッ!」
深い場所で夫の熱い精を受け、市も絶頂を迎える
体の力が抜け、糸が解けるかのように肩から崩れる市を、腹がぶつからないようにと、背後から佐治が支えてそっと横たわらせた
重い腹を片腕で抱えながら身を捩じらせ、市は佐治の方へ躰を向ける
満足そうな微笑を浮かべながら
その微笑みを受け、佐治も身を崩す
          幸せ・・・」
佐治にくっつき、胸元で呟く
「ああ・・・。私もだ・・・」
脱力した倦怠感に襲われながら、佐治も呟いた
「こうして一緒に居られること、許してくれた姉様には、感謝しても足りないの・・・」
「私も、殿にはとても感謝している・・・。士分にまで取り上げてくださって・・・。だから、こうして市と一緒に居られる・・・」
「うん・・・。          まだ本当の夫婦って認めてられてないけど、いつかきっと、認めてもらえる。私はそう信じてる」
「ああ。そのためには、私が頑張らなきゃな」
「それだけじゃない。・・・この子ができた時、私、堕ろせって言われると想ってた・・・」
「え?」
佐治は少し驚いて、市の顔を見た
市は佐治を見詰めながら続ける
「私達はまだ、姉様が望む結果を出してない。だから、それまで子供は作っちゃいけないんだって想ってた。でも、違った。姉様は言葉では祝福なんてしてくれてないけれど、母様がこの屋敷に来ることを拒絶してない」
          そうだな」
「あのね」
「うん?」
「さっきね、お腹の子、動いたの」
「え?」
佐治の目が丸くなる
まさか、と不安が過ぎり
「お腹蹴っ飛ばして、私達の仲が良いことを、まるで冷やかしてるみたいで、くすぐったかった」
「腹は、大丈夫か?なんともないか?」
少し身を起こし、やや上から市を見下ろし心配する
「うん、なんともない。今は静か」
「そうか、良かった」
「でもね、早く出て来て、父上と母上の顔が見たい、って、言ってるみたいな感じ。私も、早くこの子の顔が見たい」
「私もだよ」
「うん」
夫婦なら
愛し合う二人なら、この幸せは当たり前のことであり、いつまでも続くものだと信じて疑わない
いつまでも続いて『当たり前』だと感じる
それでも、『いつか』は訪れることを、誰も予想しない
帰蝶ですら、予想できなかった

誰にも『終わり』が遣って来ることを

信濃での越後上杉と甲斐武田の騒動など忘れたかのように、帰蝶の日常は容赦なく流れる
長秀と信良が組んで普請している小牧山の砦も完成に近付き、秀貞の詰める加納砦も静かで、恒興と正勝が交互に詰めている墨俣砦も今のところ動きは見せなかった
斎藤が何を考えているのか、今の帰蝶にはわからない
考える暇もない
おまけに、妻子を無事奪還した元康からも書状が届く
「年明けに?」
「直ぐとは行かないだろうがな、それでももう一度私に逢って、話がしたいそうだ」
帰蝶となつの会話を、少し離れた場所から右筆の道空が見守る
この頃、なつの訪問が多くなっている
いよいよ小牧山への移動が現実味を帯びて来るからか
帰蝶が動けば犬山も比例して動く
その後のことまでは想像できなかった
また、『局処』の件についても、気掛かりではある
主が不在になりがちになれば、統制する者が居ない場所でどのような騒動が起きるか、これもまた想像できない
今は大事にならなければいいのだがと祈るしかなかった
何より、局処の主でもある帰蝶が、局処の様子に全く関心がないのだから尚更心配だった

十一月が過ぎ、十二月が遣って来る
帰蝶が動くのはその翌年ではあるが、先に佐治らが小牧山に移動することになった
初めに長秀が部隊を引き連れ、後から来る部隊の受け入れ態勢を整える
信良もそれに連なって移動した
出発を、まるで祝いの門出のように大袈裟に見送る母・市弥に恥ずかしい想いをしながら清洲を出る
早く嫁が欲しいと祈る信良であった
妻を娶れば母から独立できる
単純にそう考えていた
小牧山で出迎えの準備ができると同時に、勝家が動く
利家は妻のまつと子供を連れ、勝家に同行した
生憎、屋敷暮らしのできる身分ではないので、小牧山の麓に設けた武家屋敷での生活となるが、今の長屋よりは部屋も広くなったと長秀からは聞かされており、少し浮かれた様子である
その後、続々と既に発表されている人事で移動が行われた
可成は加納砦のこともあり、弥三郎、秀貞と交代で詰めることになり、妻の恵那はそのまま清洲に残ることになった
父親も預かっており、まだ幼い子供らも居る
清洲で幸丸を産んだ後にも子を産んでいるのだから、尚のことか
ただ、元服間近の傅兵衛は父にくっついて、小牧山に向かうことになった
存外にしっかり者と育ってくれた傅兵衛なので、恵那も幾許かの安心感は持て、心置きなく夫を見送れた
可成と組むことの多い弥三郎を夫に持つ菊子だけは、聞かされた当初どことなく不安な顔をしていたが、小牧山に向かうと言っても出張程度のことであり、どちらかと言うと加納に詰めることの方が長いので、そちらに気が行ってしまう
しかし、今は帰蝶から預かる帰命をしっかり育てること
それが菊子の責任であった
夫のことだけを気に掛けられる立場にはない
商家の生まれとは言え、夫が武士になって長い
菊子にも武家の妻の心構えと言うものを、嫌でも認識せねばならない時期に差し掛かっている
素直に、夫に『寂しい』と言えなかった

この世に『海』と言う、大きな水溜りがあることを教えてくれたのは、あなたでした
海の色が『青い』ことを教えてくれたのは、あなたでした
この世には嬉しいこと、悲しいこと、切ないこと、悔しいこと、楽しいことがたくさん溢れていることを教えてくれたのは、あなたでした
あなたは、私の全てでした
私に『世界』を教えてくれたのは、あなたでした
私の世界の中心に居るのは、あなたでした
私の世界から消えたのも、あなたでした
あなたは私の心に穴を開け、この世から消えました
だけど、あなたは私に残してくれました
この世の全てと、あの子を

「帰命を、頼んだぞ」
「はい。お任せください」
頼もしいほどきりりとした目をする菊子を、帰蝶は満足げな顔をして微笑んだ
本丸には資房も居る
必要とあればいつでも局処から市弥が駆け付けてくれるだろうし、貞勝も養子に取った勝丸を本丸の道空の許で学ばせていた
人材には事欠かない
敵が攻めて来ない限り、帰蝶に心配する要素はどこにもなかった
帰蝶が清洲を出る少し前、遂に池田隊二軍を率いる佐治の部隊が小牧山に向けて出発した
副部隊長と言う立場からか、帰蝶からはきちんと屋敷を誂えろと言われている
それは市が世間に恥かしい想いをしないための、帰蝶なりの配慮なのだと感じていた
屋敷の普請は佐治自身が行い、時には恒興もが手伝い、佐治にくっついて行動していた藤吉も協力してくれた
それでもまだ不満足な部分があると時々は小牧山に向かい、改築と増築を繰り返していた
この時ばかりは市も、自分と子供のためにしてくれていることだからと、とやかく言う気にはなれなかったが、いざ砦に向かって出発となると話は違って来る
「それじゃ、行って来るよ」
          うっ、うっ・・・!」
                
それまで、幾度となく美濃には入っているのに、比較的近場になる小牧山に行くだけで泣かれると、慰めの言葉も見付けにくい
「奥様、お子が生まれたら、また一緒に暮らせるのですよ」
と、従者である侍女のおえいに背中を擦られ、嗚咽を上げながらも何とか見送ることはできた
見送られる佐治としては、酷く後ろ髪を引かれる想いをするが

藤吉と、藤吉の新妻である寧と三人で出発する
後ろからは佐治の引き連れる部隊の何人かも着いて来るので、単独での小牧山入りとまでは言わないが
「いつも主人がお世話になっております」
寧は少し肉付きの良い、笑顔の可愛らしい少女だった
「こちらこそ、ご主人にはお世話になりっぱなしです」
「池田様とご一緒させていただくようになってから、殿への覚えもめでたいようで、嬉しい限りです」
「いえ、私の力ではなく、藤吉さんの実力も合わさっておりますから」
佐治からそう言われ、途端に藤吉が低い鼻を天に突き上げる
その様子を見て、寧は背中をバシンと叩いた
まだ少女ながらも、しっかり亭主の手綱を引いているしっかり者のようで、さすがに武家の女は強いなと感じた
寧のお陰で道中は退屈することもなく、佐治は用意していた屋敷に到着した
建てた武家長屋の部屋数が足りず、藤吉はよしとしても、佐治の部隊の何人かの単身者は自分の屋敷で当面の面倒を見ることになっており、先に入っている侍女の出迎えを受け、荷を解く
「お帰りなさいませ」
佐治を受け持ったのは、若い女だった
この小牧で募集したため、馴染みの浅い侍女である
「旦那様、お待ちしておりました」
屋敷の完成と共に一番に入ったのは、清洲の屋敷でも家の管理をしていた左兵衛と言う初老の男で、佐治の許で働いて長い
「左兵衛、留守の間すまなかったな」
「いえ。ところで、奥様はお元気で?」
返答しながら佐治の荷物を受け取る
「ああ。出発前に大泣きしてたくらい元気だ」
「ははは、奥様らしいですなぁ」
「一息吐いたら、砦の丹羽様にご挨拶をして来る」
「それでしたら、お供します」
「いいえ、左兵衛様、わたくしが参ります」
と、隣に居たその女が間に入る
「新しい侍女か?」
「はい、お袖と申します」
「お袖でございます。よろしくお願い致します」
「よろしく」
「お袖はこの近くの村の土豪の娘です。一応の教養は身に付けているようで、採用いたしました」
「そうか。左兵衛の見立てなら期待できるな」
まだ二十代に差し掛かったばかりの若い、美男子な佐治を、お袖は少しばかり熱い眼差しで見詰めた
話を聞けば、実家は相当裕福な家のようで、お袖自身、見栄えの良い女だった
年は今年で十六だと言う
元々女にはあまり感心のない佐治は、特に気にするでもなくそのままお袖を連れ、砦に入っている長秀を訪れた

やがて帰蝶が小牧山に移動する日も近付く
                
目の前には、怖い顔をした義妹の姿がある
臨月に差し掛かったか、腹が随分と目立つ
          なんだ。なんの用だ」
「姉様から、仰ってください」
「何をだ」
「これを、佐治に着けるように、と」
「ん?」
市が差し出したのは、焦げ茶色をした地味な面当てだった
「戦に出る時は、これをきちんと着けるように」
「何故だ。佐治は池田隊の先鋒を務める。佐治はその前線に立つのだぞ?面当てなど、邪魔なだけだ」
「佐治のあの綺麗な顔を、敵方の刀や槍でずたずたにされても、姉様は平気なのですか?!」
          私の顔にも、多少なりとも傷はあるがな・・・」
突然怒鳴り出す市に、帰蝶は脱力しながら応えた
顎の下、頬に近い骨の辺りに引っ掻き傷がある
それは信勝を殺した時に付いた傷で、それ以外にも目立ちはしないがじっくり見れば、薄っすらといくつかの傷がその綺麗な顔に刻まれていた
「姉様は良いんです、姉様は」
「おい」
声は低く目が据わる帰蝶を、なつは苦笑いを浮かべて見守った
「これから生まれて来る子が、父親の顔を見て驚き、泣き叫び、あまつさえこんなの父様じゃないと喚き散らしたりしたら、母親として私はどうすればよろしいのですか」
「子供と一緒になって喚き散らす気か?」
「姉様!」
                
バシン!と畳を叩く市は、これ以上ないほど迫力がある
「私がこれを差し出せば、殿に対して申し訳がないと、佐治はきっと受け取らないと想うのです。だけど姉様からだったら、佐治は文句も言えません」
「と言うことは、一度はそれを手渡したことがあるのだな?」
                
急に黙り込む市に、なつは「わかりやすいなぁ・・・」と、心の中で呟く
「なんと言っていた」
          邪魔だ・・・と」
「それ言わんことじゃない。佐治とてわかっているではないか」
「でもでもでも!佐治のお顔に傷が入るなんて、嫌なの!嫌なの!嫌なのっ!」
大きな腹をして、未だ子供のように駄々を捏ねる市が、可愛らしく感じる反面、鬱陶しくて仕方ない
「なら、これを手渡せば、お前は静かにできるのだな?」
「手渡すだけじゃ駄目です。ちゃんと着けてもらわなきゃ」
                
やれやれと、帰蝶は鼻から溜息を零す
それ以上に、市の鼻息も荒かった
なんだかその小さな穴から湯気が、今にも昇りそうで
「それほど心配なのなら、手紙の一枚でも書き宛てたらどうだ」
と、呆れ気味に言う
「私が筆不精なの、姉様だってご存知でしょう?」
市は市でシラッとした顔をして応える
「お前も少しは努力ぐらいしろ」
「これから子を産む妹に対して、余りにも非道な言葉。恨みます」
と、市は「よよよ」と泣き崩れる
「あのな・・・」
帰蝶の頭には汗が浮かんだ
                
なつは、笑っていいのかどうなのか、真剣に悩んだ

「おかしなものですね。お市様も、以前は佐治が戦場に出向いても、なんとも仰らなかったのに」
市が引き払った後、なつがぽつりと呟く
「不安になって来たのだろう。もう直ぐ子が出て来ると言う時期だからな、夫の身の上が心配で堪らないのだ」
「言われてみれば、私にも覚えがありますわ」
帰蝶の言葉を受け、なつも冷静に考えてみる
「出産前って、なんでもないことが途轍もなく不安で仕方ありませんでした」
                
特になつは、夫が死んでからの出産だったので、その不安も普通ではなかったろう
それを考えると、手にある面当てに市が安心できるのなら、と、受け取ることにした
それから数日後、帰蝶の本隊の出発の日がやって来た
予定では年明けとしていたが、今年はまだ雪が積もらず、移動するには手頃な日が続いたからだ
もしも暢気に年が変わるのを待って、本格的に雪が降り始めればどれだけ積もるか予想できない
もしも雪に足を取られ、小牧山砦に入るのが遅れれば、取り返しの付かないことにもなりかねんと判断したからだ
「気を付けて、存分に働きなさい。可児のことは、心配しないで。兄上も織田に与すること、この頃は然程嫌でもなさそうなの。あなたが周りとしっかりやっているからでしょうね。あなたは気鬱を晴らして、斎藤を落としなさい」
「はい、ありがとうございます」
見送りに、大手門まで市弥が態々出向く
資房や貞勝も入り、菊子も帰命を連れて来てくれた
大勢の見送りの中に紛れ、お七も帰蝶を見送った
「なつ、あなたも体を大事にね。小牧は標高こそ低いけれど、山であることには変わりないのだから。つらくなったら、砦を降りるのよ?いいわね?」
「はい、大方様。ご心配、ありがとうございます」
戦に出る時はそれほどでもなかったが、清洲城の主である帰蝶自ら城を離れるのはさすがの市弥も心細いのか、いつも以上に自分を心配する市弥に後ろ髪を引かれた
それに同行するなつにまで気を配るのだから、長期で小牧山砦に張るのは無理だなと帰蝶は直感する

小牧山に入ってから、薄っすらと雪が積もっていることに気付く
「殿!」
先に到着していた利家が、砦に入った帰蝶を見付けおおはしゃぎする
「殿!遅いっすよ!もう、待ちくたびれて・・・」
「女でも物色していたか?」
「なわけないでしょ。結局お七さん引き取った時のことまつに知られて、監視がきつくなってるんですから」
「いいことだ。女房が強い家は、土台も強くなる。しっかり尻に敷かれていろ」
「殿ぉぉぉ!」
「殿、お待ちしておりました。おなつ様も、ご無事で」
後ろに居るなつが、そっと会釈する
「姉・・・、とっ、殿・・・!」
長秀の陰に隠れて、普請に携わった信良が、少し慌てた引き攣り笑いを浮かべた
「五郎左、犬山の様子はどうだ」
「はっ。今のところ、目立った動きはありませんが。ただ、斎藤と連絡を取りたがっている気配が垣間見えます」
「勿論、邪魔はしているのだろうな?」
「はい、そこは抜かりなく。大方様からのお知らせで、土田家もこちらに友好的になりました。そのお陰か、以前に比べ情報が入りやすくなりまして、隣接する犬山の監視なども買って出るようになりました」
「土田の動きが面従腹背でないことを祈るがな」
「ははは」
長秀は帰蝶の皮肉に苦笑いし、義弟の信良は麗しい義姉の、今日も凛々しい姿に頬を染めた
「こちらは雪が降ったか」
「はい、夕べ遅くに。初雪です」
「そうか。早目に出た判断は間違ってなかったか」
「清洲は如何ですか」
「寒さが沁みることはあっても、まだ雪はないな」
「今年は遅うございますね」
「では、殿。私は先に住居の方へ」
「わかった。私も後から行く」
長秀と話しながら、帰蝶はなつと別れ、表座敷に入った

「一同、大儀である」
「ははっ!」
到着した帰蝶を出迎え、揃い踏みした小牧山部隊が表座敷で顔を合わせる
「ここに来るまでに少しばかりの雪を見た。恐らく稲葉山城も雪に包まれていると考えて、間違いないだろう」
末座ではあっても、土田隊の一員として加わっている利治が静かに頷く
「私が動いたことで、犬山も警戒心を持つ頃だろう。仕掛けて来ないとも限らない。各自、警戒を怠るな。雪解けを待ち、斎藤に仕掛ける。それまで、体力を温存するよう心掛けよ」
「はっ!」

どこか、気が緩むこともあった
斎藤と争ったのは夏の前のことで、それ以降、戦らしい戦も起きていない
なんとなくだらだらと毎日を過ごし、佐治自身、犬山近くの実家の村を訪れることもしていなかった
それが、帰蝶が一人現れただけで、身が引き締まる
何かしなくてはならないと言う気持ちにさせられる
側になつが居るから、と言うだけではなかった
誰も彼もが背筋を伸ばし、帰蝶の前に顔を並べる
それは一種、開戦の烽火にも似た光景だった
この、細くか弱い躰一つが、山を動かす
帰蝶を良く知る者ばかりの中で藤吉だけが、ぽかんと軍議を聞いていた
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死んだら負け
物騒な表現ですが、何れ死ぬにしても自分の歴史を知ってくれている人間を残さないと負けだなと、常々考えております
小牧山に舞台を移し、佐治と市夫婦にスポットを当ててみました
市が佐治に面当てを帰蝶を介して渡す場面は、信長の家臣のエピソードを拝借しました
と言うのも、後世に残る有名な家臣らの多くは、信長との濃厚なエピソードがありながら誰一人出世していないことに気付いたため、もしかしたら他の誰かのエピソードを盗用したのではないかと思ったからです
あまりの美しさに、信長から「顔に傷を付けるな」と、戦では常に面当てを被らされていた武将が居ましたが、彼はさほど出世しておりません
また、信長との男色のエピソードを持つ利家も、信長存命中は三下のままで終わっています
信長の身の周りで異例の出世をしたのは、濃姫の実弟・斎藤利治
美濃攻略後、彼は城を与えられました
同じく美濃攻略後、池田恒興も同じく犬山城を与えられました
同じく森可成も兼山城(長井家の所有していた城)を与えられ、其々美濃の守りとして配備されていました
その後、岩村を落とした信長は、腹心の河尻秀隆に兼山城近くの城(変換の難しい漢字です。割愛させていただきます)を与え(この場合は城代ですが)、浅井滅亡後は近江に其々の家臣らを配置させましたが、信長に特別可愛がられたと自負する人間の誰一人、城を持っていません
これに気付く人は居ないでしょうが、城を与えられることは出世も同じ
また、その功績を高く評価されたことに繋がります
なのに、「信長に愛された」と言われている人間の誰一人、信長の存命中は名を残すだけに留まっているのです
そう考えると、「信長から面当てを付けるよう命令された」のは別の人間ではないかと思い(現に、それに該当する武将は、私個人の中では全く印象に残らない人物なので、創作の中でも一度か二度しか登場させておりません。また、特別なエピソードも用意しておりません)、今回の更新に載せた物語に仕上げました
お七の登場の後、いよいよ藤吉も活躍する場面が出て来ます
藤吉にとって佐治は、とても大事な存在です
自分の歩く道を示してくれた人物であり、生き甲斐を感じさせてくれる人物です
そんな二人の絶妙なチームプレイを上手く構想して行きたいと考えております
Haruhi 2011/01/27(Thu)20:53:00 編集
無題
濃姫の実弟・斎藤利治が破格の扱いを受けているのは才能があったことも機縁していると思いますが、やはり正室濃姫の血縁だからだと思います。坊丸もそうですが、知れば知る程、濃姫様って信長の天下統一に多大な貢献してるじゃんか!
何故世の識者はその事重要視しないのか、本当に死んだら負けですね。でもお公家さん達の書き物に残っていてよかった、”武将功夜話”信じてる輩に一矢報えますもの。巷の本屋さんは”工””ゴウ”のオンパレード、戦国の美女はお市様と三姉妹でチョンですが、お願い我らの”濃姫”様忘れないで。3人の夫を持ち運命に前向きと言いますが、要するに最後の夫が秀忠だから名が残ったのでしょう?それに比べ、濃姫は一人で美濃衆、斉藤を守った、やはり凄い。当分本屋さんに足向けないぞよ。常在寺、行きたくなりました。
kitilyou命 2011/02/06(Sun)17:04:03 編集
Re:無題
>知れば知る程、濃姫様って信長の天下統一に多大な貢献してるじゃんか!

でも、認めるわけにはいかないんですよね
だって、『濃姫の子孫は居ない』から
生きてるもん勝ちです

>”武将功夜話”信じてる輩に一矢報えますもの。

あれを真実だと認めるのは、「自分は神の子だ」と言ってる秀吉の言葉を信じるのも同じです
気の毒な人達なので、そっとしてあげましょう^^

>戦国の美女はお市様と三姉妹でチョンですが

お市の方をよく『戦国一の美女』と称しますが、当時の人達は自分の生きてる時代を『戦国時代』とは呼んでいません
増してや、市が『東西一の美女』とも呼ばれた形跡もありません
全ては茶々、初、江の陰謀です
それに、長政と市が円満夫婦だったと言うエピソードも一切残っていません
あくまで観光地用のパンフにそう書かれているだけで、実際、福井県には『柴田勝家』と『市四母子』の仲睦まじい銅像までありますし(万福丸の母親は市ではありませんし)、結局は小説ドラマの影響に過ぎません
今現在放送されている『お江』、随分評判が悪いそうですね
それはきっと、史実に基づいた、多少脚色しても違和感のないドラマではないからそのようなことになっているのでしょう
私はこれまでNHK大河は見たことありませんが(見ても全然覚えていません)、それでも来年の大河は楽しみにしています
なんせ、これまでずっと『悪役』扱いされていた平清盛が主人公ですもの
来年は清盛ブームが来ますよ
日本人て、そんなもんだから(苦笑
濃姫にスポットライトが当たったら、これまで長年彼女に汚名を被せていた『捏造』など、一気に晴れることでしょう
私はそんな時代が来ることを信じています

>それに比べ、濃姫は一人で美濃衆、斉藤を守った、やはり凄い。

美濃の全ても守りました
歴史に名前しか残していない彼女が、生まれ故郷を守ったのです
凄いですね
山科言継の日記に残された『夫婦喧嘩』騒動、たった3行が濃姫と信長の力関係を物語っています
だって、信長に詫びを入れさせるって、絶対できないことですよ!(笑
濃姫は偉大ですね

>常在寺、行きたくなりました。

私も行きたいです
信長が人生で初めて(かな。きちんと確認していないので、誤りがあるかも知れませんが)寄付したお寺ですもの(1564年、大金を寄贈)
恐らく濃姫の弟が常在寺の住職に就任したからでしょう
と、私は見ております
だって常在寺は道三・義龍親子の菩提寺ですもの
信長にとっても大事な場所だったと想います
Haruhi 【2011/02/06 22:15】
仰せ、ごもっともです。
細くか弱い躰一つが、山を動かす
もうウルウル、美濃も守ったのですよね。アテネで思いました。滔々と流れる時の狭間に、心底、共鳴できる先人を見つけられる幸せを。濃姫様もビックリ、小石、パルテノンと遭遇。信様も未体験です。私も清盛楽しみです、恐らく天智、鎌足に続く英傑だと思います。名より安岐の守で貿易の利に着目したんですものね。以前も確か清盛、大河でやったような?江は信長居なくなってから見ようと思います。多分綺麗事でしょうが~斉藤家の春日との対決に興味ありです
kitilyou命 2011/02/07(Mon)12:06:31 編集
Re:仰せ、ごもっともです。
>アテネで思いました。

そう言えば、ギリシャに旅行されると仰ってましたね
良い旅行だったようで、何よりです

>濃姫様もビックリ、小石、パルテノンと遭遇。

この場合、パルテノンは濃姫様で、小石が信長でよろしいでしょうか
すみません、濃姫信仰者なもので^^;

>恐らく天智、鎌足に続く英傑だと思います。

天智は・・・、どうかな^^;
鎌足は、今風に言えばハイパークリエーター?(笑
ただ、日本の歴史に捏造はこの人から始まっているので、悪しき習慣を生み出した罪深き人でもありますので、私個人は心象よくない人です

>名より安岐の守で貿易の利に着目したんですものね。

先見の明あり
ですが、時代が追い付かなかった・・・
私個人が大好きな武将・楠木正成も、いつか大河にされるかなぁ・・・(できればされないで欲しい
先ずは今も『売国奴』の汚名を被せられている井伊直弼公から(笑
彼は素晴らしい政治家だったと思います

>江は信長居なくなってから見ようと思います。

昨日、いなくなったそうで

>斉藤家の春日との対決に興味ありです

どのように扱われるのかわかりませんが、史実云々関係なしにしても斎藤福をきちんと把握しなければ、多分脚本家は振り回されて終わりでしょう・・・
私は一切見ておりません^^;
Haruhi 【2011/02/07 18:52】
小石は濃姫様の五輪塔のです
ご期待裏切って済みません。パルテノンから小石1個取っても御用ですねん。濃姫様の小石ーお守りの中、アテネを見せてあげました。で、信様は見てない、でお濃様、信様にエバレルと単純な発想です。まあ、別世界で仲良くお話ししてるでしょうが?毎日労働に勤しみ、今度は草食べる日々から、来月、おフランスへ~もちろんお濃様も一緒。うー、天智、鎌足基準に合いませんか?でも清盛は凄いと思う。信長とは別な意味で。奥が深いですね。日々、勉強ですね。がんばります。でも不思議なんですよね、歴史の彼方の人って、何故この人が好きなの?と言われても心の琴線に触れたのとだけしか、きっかけ答えられないのです。藤原彰子と定子なら長生き、栄華、国母、紫式部と没落の中で25歳で散った定子より彰子選ぶ人多いと思います。でも生き様から、私は定子様。そんな心の宝石一杯の歴史っていいですね。
kitilyou命 2011/02/12(Sat)12:00:40 編集
Re:小石は濃姫様の五輪塔のです
>パルテノンから小石1個取っても御用ですねん。

こんばんは
そうでしたか
以前、総見寺のお話をされてましたが、その時のものなんですね
うっかり、うっかり

>濃姫様の小石ーお守りの中、アテネを見せてあげました。

おおー
異文化交流ですねぇ
お濃様は信長よりも早く世界を見てらっしゃるので(道三存命中、ルイス・フロイスが稲葉山城(現・岐阜城)訪問済み)、きっと「あら、この程度?」なんて笑って、それで信様に「大したことなかったわ。安土城の方が上ね」なーんて、夫婦で笑ってるかなぁ~
そう言う肩肘張りそうな夫婦と言うイメージがあるもので
いい意味でですね(笑

>でお濃様、信様にエバレルと単純な発想です。

私も同じこと想像しました(笑

>まあ、別世界で仲良くお話ししてるでしょうが?

ですね

>毎日労働に勤しみ、今度は草食べる日々から、来月、おフランスへ~もちろんお濃様も一緒。

中々インターナショナルですね、kitilyou命さんは
一緒にお濃様もナショナルデビュー

>うー、天智、鎌足基準に合いませんか?

すみません
天智は兎も角、鎌足はスケールでかすぎて、ちょっと範疇から零れてしまいます
ただ、私個人は(清盛好きな理由で)入鹿(←本名ではない)が好きなので、鎌足はどうしても敵役
今にすれば、陰気臭い仇ではなく、知能戦で負けちゃったと言う感じですから、鎌足を憎むとまでは行きません
鎌足も素晴らしい政治家だったと思いますので

>でも清盛は凄いと思う。

ですね
kitilyou命さんの方が良くご存知の様子なので、思いの丈を綴っていただきたいです
私個人は、武将の中で一番好きなのは『楠木正成』です
彼のお膝元である大阪に生まれたのは奇跡としか言いようがありません
史料が余りにも少ないので、どこで生まれてどこで死んだか、くらいしかわかっていないのですが、彼には人を惹き付ける魅力が満載
お濃様と同じ系統の人間だと想ってます
(その存在を決して無視できない、だが、詳細を説明するのは極めて困難)
お濃様、正成、共に私の想像力を掻き立てます

>でも不思議なんですよね、歴史の彼方の人って、何故この人が好きなの?と言われても心の琴線に触れたのとだけしか、きっかけ答えられないのです。

「好きに理由はないけれど、嫌いには理由がある」
今休止中にしている『信長のをんな』での、帰蝶の母親が言った言葉です
私も常々そう感じています
好きに理由は必要ないけれど、嫌いには必ず理由が存在する
「どうして好きなんだろう」と考えるよりも、「やっぱ好きだわ~」としみじみしている方が幸せを感じられる
私はそんな風に考えています(笑

>そんな心の宝石一杯の歴史っていいですね。

日本が誇れる、歴史の一編ですね^^
Haruhi 【2011/02/12 21:34】
お恥ずかしながら
Haruhi 様の帰蝶に、そして総見院の濃姫様との出会いに、私の中の何かが動きました。そう、他の方が書いた濃姫に不満なら、自分が信じるお濃様と語らいながら、その思いを書いてみたら?と。いろんな方の濃姫様に影響を受けながら、おい盗作かよと思われる方もおられるかも知れませんが、初めてのそう、読書感想文以来の”作文”です。でも回を重ねるうちに、帰蝶が勝手に動き始めています。仰せの通りですね。誤字、脱字、言い回しの間違いetc恥ずかしい限りですが、とっても楽しいです。今のところ、ご意見ご感想は怖くて停止にさせていただいています。このような機会を与えていただけたのも濃姫恋歌との出会いからです。本当にありがとうございます。更新をゆっくりお待ちしております。
kitilyou命 2011/03/01(Tue)17:53:50 編集
こんばんは
>Haruhi 様の帰蝶に、そして総見院の濃姫様との出会いに、私の中の何かが動きました。

そう言っていただけると、嬉しいです
誰かのきっかけになれると言うのは、そうそうありませんから

kitilyou命さんが仰っているように、「他の方が書いた濃姫に不満なら、自分が信じるお濃様と語らいながら、その思いを書」きたい
そう思い、ここを開設しました
初めは自己満足に毛が生えたようなもの
誰かに見せて喜んでもらえるようなものでもない
だけど、何度も何度も繰り返し書き直し、読み返し、やっと、人様からお褒めの言葉をいただけるようになりました
それでも、時々は「こんな内容でいいのかな。素人だから、その甘い立場に逃げていないかな」と思うこともあり、帰蝶を充分に動かせなかった時は濃姫に申し訳ない気持ちでいっぱいです
他の方の作品と言うのは拝見したことがなく、増してや信長と立場が入れ替わっているというのも目にしたことがなく、今は模索しながら、また、矛盾が生まれないよう気を遣いながらの創作ですので、今まで以上に時間が掛かります
思えば信長が存命中の頃が、一番更新が早かったような気がします
『信長』と言う逃げ道が存在したので
その逃げ道もなくなり、その後の別の逃げ道である義龍も死に、今は完全にオリジナルな世界になっております
それでも、歴史とどこかリンクさせなくてはならないのと、其々のご子孫方が偶然ここを見付けて嫌な気分にならないよう配慮もしたく、結構骨が折れます

>でも回を重ねるうちに、帰蝶が勝手に動き始めています。仰せの通りですね。

うちでは帰蝶ではなく、なつが一人歩きしております(笑
多分私自身が、『なつ』を敬愛の対象にしているからなのだと思っております
これから先も、帰蝶は様々な面でなつに救われることが起きるでしょう

ところで、kitilyou命さんも創作されてらっしゃるんですか?
是非とも拝見させていただきたいですね
誤字脱字は私もよくします
後でこっそり修正してますけどね(笑

>とっても楽しいです。

それはきっと、『帰蝶』と同じ時間、同じ空間、同じ思いを共有しているからだと思います
うちの帰蝶は次に何をしでかすのかさっぱり想像付かないもので、創作者の私自身、彼女を把握できなくなっております
なつはなつで自分勝手に動き回りますしね・・・

>このような機会を与えていただけたのも濃姫恋歌との出会いからです。

なんだかこそばゆい思いを・・・

>本当にありがとうございます。

こちらこそ、いつもお越しいただきありがとうございます
なんのお構いもできませんが^^;

>更新をゆっくりお待ちしております。

ありがとうございます
今現在、完全に帰蝶のパートから離れてしまっておりますので、意欲が少し消沈してしまいました
でも、秀吉の『出世譚』の矛盾を突き崩すには、どうしても必要な場面
今月中には更新できるよう、気持ちを新たに取り掛かる所存にございます
Haruhi 【2011/03/01 20:54】
内緒です
おいおいおいと、Haruhi様にお叱りを受けるかもしれませんが、帰蝶様が勝手に動いていると、お許しください。”濃姫春秋”でヒットすると思います。ごった煮で恥ずかしいのですが、もう、私の手では止まりません。どこまで行くのやらどうなるのやら皆目見当がつきません。
kitilyou命 2011/03/02(Wed)12:17:54 編集
Re:内緒です
内緒といいつつ、ありがとうございます
機会あれば拝見させていただきます

其々の濃姫で良いと思います
くよくよ泣くのも、濃姫
ガンガン行くのも、濃姫
其々が其々に愛した濃姫で良いのではないでしょうか
Haruhi 【2011/03/03 00:10】
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おのれコーエーめ
よくもお濃様を邪険にしおってからに・・・(涙

(画像元:コーエー公式サイト)
オンラインゲームにてお濃様発見


転生絵巻伝 三国ヒーローズ公式サイト:GAMESPACE24
『武将紹介』→『ゲーム紹介』→『Exキャラクター紹介』→『赤壁VS桶狭間』にてお濃様閲覧可
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また、信長を愛し通した一途な妻でもあった。

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量的に肉や魚の血落としや、料理用として使っています
麹の香りが良いのが特徴ですが、お酒に弱い人は「うっ」と来るかも知れません
どちらも一般スーパーに置いている場合があります
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