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頭から被った血を流すため、帰蝶は長良川に身を沈めた
まだ冷たい川の水に、肌が引き締まる
それから鳥肌が立ち、長く浸かっていることはできなかった
大きく盛り上がった乳房に川の水の滴が垂れ、小さな滝のように流れる
その先端に痛いほどの感覚が走る
自分は女なのだな、と、心に刀が突き刺さった
男に助けてもらわないと、何もできない女なのだな、と
髪にこびり付いた血の塊を解き、自分の周りが朱の色に染まっていることを知る
          血を流せば流すほど、織田は栄華に咲き誇る
されど、流す血が途絶えた時が、織田の終りの時
夢の中で信勝はそう言った
髪を解いていた指が止まる
水の流れに朱の色が消える
心嘆いても、立ち止まることが許されないことを知る
指を落した瞬間、それに引っ掛かり、何本かの髪が抜けた
          いたっ・・・」
指の爪先に絡まる髪を見て、自分はいつまで戦わなくてはならないのかと、己の身の上を嘆いた
嘆いてどうにかなるものでもないのに、それを知っていながら、帰蝶は何故自分がここに居るのかを考えた
自分自身が選んだ道だとしても
誰かに凭れたい・・・
そう想うことは、罪なのだろうか

森部での戦に勝利し、織田軍は意気揚々と墨俣砦の手前の寺で束の間の休息を取る
「奥方様ぁ・・・」
情けない顔をした利家がひょこひょことやって来た
「あの・・・、俺・・・」
主君に対し、偉そうな口を利いたことを、今になって後悔している
そんな利家に帰蝶は目を釣り上がらせて睨む
「慶次郎が説教好きなのは、承知している。だが、『叔父』のお前まで説教好きだとは、知らなかった」
「すんません・・・ッ」
利家は大きな躰を丸めて謝罪した
「『誤る』な。私はお前を責めているのではない」
「奥方様・・・?」
「寧ろ、感謝している」
                
見上げた帰蝶は、微笑んでいた
「森部に入った時、私は自分を冷静だと想っていた。だが、そうではなかった。私は自分でもわかったよ」
「奥方様・・・」
「頭の隅々にまで、血が沸き上がるのを」
綺麗な瞳を惜しげもなく差し向け、帰蝶は呟くように言った
「ありがとう、犬千代」
                
綺麗な微笑みでそう言われ、利家は魂が抜けたように帰蝶を見詰めた
「ところで」
「はい」
「さっき、三左が首実検を行なった」
「はい」
「落し主のわからない首もいくつかあったが、権がお前が落したと提出したものもあってな」
「はい」
「犬千代」
「はい」
          織田に、戻って来い」
「はい。          え?」
利家はキョトンとした目をする
「『頚取り足立』の首があった。お前が落したのだな」
「『頚取り足立』?誰すか、それ」
「知らないのか?」
「いや、ここんとこ織田の軍議には参加してませんから」
「日比野下野守清実の与力で、足立六兵衛と言う猛将が居る。足立が落ちたから、日比野は総崩れを起したんだ。三左の話に縁(よ)れば、日比野を追い込むのに、そう労力は必要なかったと言う。首実験をして、日比野を容易く追い込めた理由がわかったそうだ」
「へぇぇ・・・。足立六兵衛て言えば、美濃豪族・日比野にその人在りと言われるくらいの、腕っ節の立つ人ですよね。へえぇ・・・、え?」
漸く、自分の落した首の価値を知る
「あの、もしや、わたくしめが落したる首印は、頚取り足立の異名を持つ、足立六兵衛様であらしゃれるので・・・?」
「そう言ってるだろ?」
「まさかぁ~」
それでも俄には信じられず、利家はへらへらと笑った
「確か足立の兜には、それまで落した武将の数が刻まれていると言う。その兜もそれだけで相当の価値のある物だしな、それが揃っていれば報奨金も出せるのだが、兜が見付からん」
                
『その兜』は、『邪魔だから』捨てて来た
「あっ、あのっ、俺っ、さっ、探して来ますっ!」
「待て。もう地元の民が『残飯整理』に入ってる。邪魔をすれば返り討ちに遭うぞ」
踵を返す利家の襟を掴み、帰蝶は引き止めた
「犬千代」
帰蝶は手を離しながら、呟いた
「吉法師様を忘れないで居てくれて、ありがとう・・・」
「奥方様・・・」
「又助が、情報を持って来てくれたそうだ。軍議を始める。お前も参加しろ」
                
利家は、黙って頭を下げた

殿を、忘れられる筈がない
そうでしょ、奥方様
だから、奥方様も、必死になってるんだ
必死になってるから、俺は、奥方様を守りたいって想うんだ

利家は帰蝶の背中に向って、心の中で語り掛けた

そうやって、無理ばっかりしてるから、俺は、せめて殿の代わりにって・・・
それも、無理なのかなぁ・・・

                
小さな声で呟く
帰蝶には届かなかった
もう一度、呟く
          殿」
                
帰蝶は驚いた顔をして、振り返った
「もう、『奥方様』って、呼んじゃいけないんだよね・・・」
「何度も、そう言ってるだろう?」
「それは、もう、『殿が居ない』ってことに、なるんだよね・・・」
          だから、お前は」
利家が、自分以上に信長の死を拒絶していたことを、初めて知った
図体のでかい利家の目から、ぽろぽろと涙が零れる
「俺、いつになったら、『泣き虫』じゃなくなるのかな・・・」
「それでも、良い」
前を向いていた躰を、利家に向けながら帰蝶は言った
「変わる必要はないと、昔、慶次郎に言われた」
「慶次郎に?」
「お前も、今直ぐ変わる必要はない。いつかお前が、『涙を流す意味』を知った時、お前は『泣き虫』ではなくなるだろう。私は、その日が来ることを信じてる」
          殿・・・」

佐治為興と共に参戦した増援部隊の津島衆に落された、旧友の首と対峙する
「日比野殿・・・」
清実は斎藤家の譜代で、重臣であり、斎藤家臣六家に数えられる優将だった
自分よりもずっと年上だったが、気さくで明るく朗らかで、年下の自分を良く面倒見てくれた人でもあった
父の代に土岐家から斎藤家に鞍替えし、その時の風当たりもそれなりに強かったものを、この清実が何かと庇ってくれた
心折れなかったのは、清実のお陰なのかも知れない
死したのち首を落とされたのか、清実の死に顔は比較的穏やかなものだった
それが唯一の救いだったのか
「森殿」
可成の背中から、勝家が声を掛けた
「軍議が始まるそうです」
          そう、ですか」
「殿は、落とした首は須らく、斎藤に送ることに決められました」
「そう、ですか・・・。遺族の許に、帰れるのですね」
「首の目録を作るための作業も、又助殿がいらっしゃるので、堀田殿の代わりは充分務まるでしょう」
「そう、ですね」
「おつらい、でしょうな」
                
可成は黙って首を振った
「つらいとか、悲しいとか、そう言った類ではないのですよ、柴田殿」
「森殿・・・」
「この、日比野殿の首が、いつか我らと取って代わる日が来るでしょう。その時、殿はどのようにお感じになられるのでしょう。嘆いてくださるか、ただの駒と見て取られるのか、それはこれからの私自身の働きが大きく左右するのでしょうが、それでも想わずには居られないのです」
          どのような?」
「せめて、『泣いてくれるな』、と」
                
「武士は死ぬことに本懐を遂げ、それを本望とする。だけども本音は、誰しもが生きて居たいと願うものです。私も、命尽きるまで生きていたい。それでも軍(いくさ)場に立てば、武士の矜持が死ぬことを命じる。死ぬことで、武士は尊いのだと自分に折り合いを付けるしかない。ですが、血腥い戦場(いくさば)と、家族と共に過ごせる穏やかな日常の間では、それはただの願望。本望などではない」
「そうですな」
「なのに、それでも別の場所で、誰かのために死ねることが嬉しいのではないのかと、問い掛ける自分が居るのです」
「森・・・殿」
「先代様は、殿を守ることに、命、賭けられたのでしょう」
「そう・・・で」
「私は、それを後押ししてしまった」
「森・・・ど」
突然話し始める可成に、勝家は目を丸くさせる
「そ、それは一体・・・」
「弘治二年四月二十日。美濃国、長良川」
                
可成はこれから何を話そうとしているのか
勝家は理由(わけ)もわからず、胸の鼓動が激しくなるのを感じた
「あの場所で          。羽島の大良にて陣を敷き、そこから斎藤の様子を伺った。どちらが優位に立っているか、それを確かめるため弥三郎が走った。弥三郎は道三様の戦死の報せを持って、戻って来ました。先代様は戻るか進むか、悩まれた。その時、です。          私なのです」
「森殿・・・?」
「先代様に進軍を薦めたのは、私なのです」
                
可成の告白は、勝家を驚愕させるのに充分な力を持っていた
「新九郎様が勝ちに酔った今なら、稲葉山城を落とせる。私はそう想い、先代様に進軍を薦めました。先代様も稲葉山城に向かって走り始めた。ですが、その直後、清洲が岩倉の攻撃を受けていると報せを受け、先代様は迷わず斎藤に背を向けた」
勝家は言葉を発することができなかった
それは咎人の贖罪なのか
「私は、先代様を殺した人間の一人なのです」
「森殿・・・」
「あの時、稲葉山城ではなく清洲に戻ることを進言していれば、先代様は斎藤が追い付く前に危機を脱していられた。そうできなくしたのは、私なのです。だから・・・」
帰蝶のためなら、この命、惜しむなく散らせられる
          森殿・・・」
勝家は突然聞かされた懺悔に、大きく深呼吸をした
「嘆いてばかりいても、詮無きこと。殿なら、そう仰られるでしょう」
「柴田殿・・・」
「こうして、旧知の人の死を嘆きながら、あなたはご自身の身の上まで嘆いていらっしゃる。そして、殿を心の底から心配なされておいでだ。そんな森殿を、殿が責める筈がない。          このことは、殿にはお話には」
「しておりません。          怖くて、話せないのです。殿の憎しみが、自分に向けられることを、恐れているのでしょうな」
そう言って、可成は苦笑いした
「だからあなたは、殿の無茶な作戦にも従っておられるのですね。せめてもの、罪滅ぼしとして」
「そうなのかも、知れません」
「私の憶測です。ですので、どうか聞き流してください」
「柴田殿?」
「殿は、そんなこと、もう、とっくの昔にご存知なのでは、ございませんでしょうか」
「え・・・?」
「あなたは、殿がご幼少の頃より側におられる方。殿が心底心打ち解けられる相手。だから、殿ご自身も、それを知っていながら黙っている。殿はきっと、心の拠り所を失いたくないのです」
「心の・・・拠り所・・・」
「殿が尾張に嫁がれた際、付き従ったのは侍女ばかり。少人数で尾張に入られ、例え吉法師様と仲睦まじかったとは言え、女は故郷を想うもの。帰れぬ故郷を、あなたの中に見ているのではないでしょうか」
「そんな・・・」
そんな筈がないと、可成の目は言っていた
「あなたが側に居るから、殿は耐えられた部分もあったのではないでしょうか、森殿。あなたが、殿を支えてらっしゃるのです。縦しんば殿がそれに気付いておられなかったとしても、あなたは一番の腹心であることに変わりはございません、『槍の三左』殿」
「柴田殿・・・」
「あの時、対峙した時、私はあなたにこう問い掛けた。殿に着いて、その先に何が見えるのかと。あなたはこう応えられた。「明るい未来が見える」と」
                
可成の目が見開かれる
「最も、あの時の私は、吉法師様を『殿』とした。あなたの言う殿は現在の、斎藤帰蝶様であらしゃったのでしょうが」
「そう・・・ですね」
「あなたは誰よりも殿と共に駆け、誰よりも殿と共に戦って来られた。殿には、あなたが必要なのですよ、森殿」
「柴田殿・・・」
「あなたは誰よりも殿のお側におられる。そんなあなたが心危うい気持ちでおられたら、殿まで迷ってしまいます。ご自分の意見が間違っていたなどと、想うことなかれ。あなたは、今までも、そして今も、殿を支え、付き従っている。旧知の友人を殺すことにさえ躊躇わず、あなたは殿のためだけにその御身を捧げていらっしゃる、これは紛れもない事実。胸をお張りなさい、森殿。あなたは、殿の『片腕』なのですよ」
                
ありがとう、と言えば良いのか
買い被りだ、と遠慮すれば良いのか
可成は困惑した顔をして笑った
今川との直接対決の折り、帰蝶は自分の命よりも大切な嫡男の帰命丸の身の安全を、託してくれた
大切な『戦友』をも、委ねてくれた
それは自分を信頼してくれたからなのだろう
あの日、信長の葬儀の時、帰蝶は側に居ることを許してくれた
心に決めたことを、他の誰よりも先に報せてくれた
「この世を、吉法師様の望んだ世界にする」
帰蝶は、そう言った
力を貸してくれと、そう言ってくれた
その『想い』に応え続けねば、自分の罪は赦されることはない
可成はそう想った
「さて、そろそろ参りましょうか。殿を待たせると、槍ではなく鉄砲の玉が飛んで来ますからな」
「そうですね」
可成は軽く苦笑いを浮かべ、腰を上げた
与り知れぬ場所で、勝家も信長殺害に加担してしまった身
だからこそ、その言葉には『重み』があった
『説得力』があった

俄本陣の中央に座る帰蝶は、資房から受け取った小さな壷を眺めていた
「これは?」
「おなつ様から、お預かりしたものです」
預かった資房は、その片隅で御首印の目録を作成している
「何だ?」
「伺っておりませんので、わかりません」
「開けて良いものか」
「知りませんよ、話し掛けないで下さい。私は堀田殿ほど記憶力が良くないのですから、話し掛けられたらやるべきことを忘れてしまいます」
                
「次、長井方部隊長、井上久四郎」
帰蝶が呆然とする中で、秀隆が落とした首の名前を言って上げる
「ええと、井上久四郎・・・。おや、長井家の傍流ですな」
「どれ」
資房の姿を片隅に置き、帰蝶は壷の蓋を開けた
中は真っ暗でよく見えない
そろそろ夕暮れが迫っているのか、空も暗い
「雨が来るかなぁ・・・」
空を見上げながら、帰蝶の側に控えている利家が呟いた
壷の中に、細い指を差し入れてみる
『ぷにゅっ』とした嫌な感触が伝わり、帰蝶は青い顔をして利家を見た
「なんか、嫌な感じがする・・・」
「え?」
恐る恐る指を出してみる
ほんのりと土色に染まっていた
「なんだこれは!排泄物かッ?!」
                 ッ」
突然変な事を叫ぶ帰蝶に驚き、資房の持つ筆が大きく震えた
「あああああ!殿!なんてことをッ!」
折角書いた目録が、左半分駄目になってしまった
「知るかッ!」
叫びながら、帰蝶は土色の付いた指を眺める
「なんか、味噌みたいな色ですね」
「味噌?」
尾張の味噌は味の濃い赤である
味噌と言われれば、そんな気もして来た
「味噌、か・・・?」
ビクビクしながら指を舐めてみると、口の中一杯に芳醇な香りと味醂の甘みが広がる
「これは・・・」
「どれどれ?」
と、今度は利家が壷に指を突っ込む
しかし、手が大きくて爪先にちょこっと付く程度であった
その爪先に枯葉のようなものが付着する
「ん?なんだろ、これ」
しかし、帰蝶と違って利家は恐れることなく舐めた
これを味わい、やがてパッとした顔をして帰蝶に伝える
「これ、焼き味噌ですよ」
「焼き味噌?」
「味噌を長いことゆっくり炙ったもので、味醂とか砂糖とかを混ぜるんです。これで飯食うと美味いんですよねぇ」
「焼き味噌か。それなら何度か食べたことはあるな。特になつの焼き味噌は絶品なんだ。薪をたくさん使うから、勿体無いと滅多に作ってはくれないが」
「じゃあ、この葉っぱは青紫蘇(大葉)ですね」
「そうか。そんな高級なものまで使ってくれたのか」
「紫蘇は防腐や殺菌の効果もありますから、戦に持って行くにはもってこいですよ」
「そうか」
なつの心尽くしに、帰蝶は嬉しそうに頬を綻ばせた
その時、勝家に連れられた可成が姿を見せた
「遅いぞ、三左」
          申し訳ございません」
苦笑いして謝罪する
「首実検、全てお前がしてくれたのだな。大儀であった」
「いえ」
たった短い言葉の中に、感謝の気持ちが籠ってる
それだけで救われたような気がした
「なつが焼き味噌を持たせてくれた。後でみんなで食べよう」
「焼き味噌ですか、豪勢ですね」
「槍働きの後の焼き味噌は、絶対美味しいって!俺、給仕に早く飯炊くように言って来なきゃ!」
ウキウキしながら立ち上がる利家の頭に勝家の拳が突き刺さり、
「お前は夕餉と軍議と、どっちが大事だ」
と、帰蝶に嫌味を言われる
「そりゃ、め          しの前の軍議」
「お前、言い直しただろ」
帰蝶に突っ込まれ、利家は顔を赤くして俯いた
そんな利家に周りから笑い声が溢れる

          なるほど」
資房から大垣の情報をもらい、帰蝶は頷いた
「弥三郎のお父上は、馬屋を長く営み、その人脈も広い。その平左衛門殿が持って来たと言うことは、近江の物騒な話も強ち噂とは言えないだろうな」
「それでしたら、私も伊勢で拾った情報が」
と、一益が進言した
「なんだ、話してみろ」
「はっ」
帰蝶の声に応え、一益は膝を滑らせながら半歩前に進んだ
「斎藤治部大輔様が没せられる以前より、近江では六角家と浅井家の間で対立が俄に沸き始めております。いえ、これは元より争いの種が尽きない両者ではございますが、動くとしたら、浅井家に相違ありません」
「何故そう言い切れる」
「六角の膝元には、『一向宗』の拠点がございます」
「比叡山、か?」
「はい。この比叡山が紀伊の高野山と犬猿の仲であるのは周知の事実、その高野山が比叡山に向け、仕掛ける準備があるとかないとか。その噂のお陰で一向宗も俄に殺気立ち、湖南方面は何かと物騒なことが続いております」
「例えば?」
「寺の焼き討ち、など」
「焼き討ち・・・」
誰からともなく声が漏れる
「今の段階では末寺程度の小さな場所に留まっておりますが、もしも本山に火が及べば、戦が始まってもおかしくない状態。そんな状況の中、六角が領地を留守にして美濃に入るのは、盗人を家に招き入れるのも同義。そして、越前でも同様、加賀の一向宗が一揆を起こしております」
「加賀でもか」
「朝倉が越前を空ければ、若狭と挟み撃ちで領地を失う可能性が大きい。しかし、浅井は宗教的な場所には存在しない。自由な行動が取れます。増してや、美濃国の実力者である国主が亡くなった後となれば、攻めるには容易い」
「なるほど、やはり浅井か」
「殿も予見なされておいでで?」
「ああ。だが、その確証は全くなかった。しかし、資房の情報とお前の情報を照らし合わせ重ねれば、確証は確信に変わる。斎藤は織田と浅井の両方を相手にせねばならなくなると言うのも皮肉だが、私は余所者に美濃を蹂躙されるのだけは我慢がならない」
「では」
「八郎殿」
「はい」
名を呼ばれ、為興は体ごと帰蝶を向いた
「引き連れてくださった津島衆と共に、どうか、領地にお戻りください」
「構わないので?」
為興の隣に居る千郷の父、荒尾作右衛門善次も為興同様、声は出さないがキョトンとする
「織田だけで先に進めば、斎藤は間違いなくこちらを標的にする。そうなれば、近江との国境(くにざかい)が手薄になり、浅井家の侵入を容易くさせてしまう恐れが出ます。久助が伊勢を出れたと言うことは、少なくとも北畠は当分動く気配はないでしょう。しかし、万が一動いたとしても、知多の猛将が二人揃っていたら尾張に入ることは叶わない。津島衆も揃っているとあれば、尚更、伊勢湾を出ることなど不可能。これは、美濃を守るためでもあります」
「美濃を守る・・・?」
何故、『織田信長』が美濃を守らねばならないのかと、為興も善次も疑問を持った
「斎藤がこちらに顔を向ければ、先に出発している池田勝三郎の部隊が近江を迎撃できる。つまり、美濃にとっては近江勢を織田が近隣の美濃国人衆と組んで追い出せると言う、既成事実が作れる。美濃の片隅にでも織田の恩を売っておけば、今後も活動がしやすくなると言うものです」
「つまり、斎藤は織田様に向わせ、何れ入るであろう浅井勢は既に配置している『織田が追い出す』と言うことですね?」
「その通り」
「確かに合理的ですが、果たして上手く行くでしょうか」
「難しいからこそ、遣り甲斐があるってもんです。ねっ、『殿』」
                
自分の代わりに返事する利家に、帰蝶はキョトンとする
「お前はまた、差し出口をっ」
利家は再び勝家に拳で殴られた
「織田様」
黙っていた善次が口を挟む
「織田様の作戦、確かに実行するには価値のあるものでしょう。我らもそれに従う度量はございます。ですが、一つだけ願いがございます」
「何か」
「帰る前に一目、『婿殿』のお顔を拝見しておきたい」
「荒尾殿」
「千郷の夫の働き振りを、この目で見ておきたい。老兵の、我侭と受け取ってくだされば幸いに存じます」
          承知した。歴戦の猛者であるそなたが、足手纏いになる筈もない。心行くまで勝三郎を眺められるがよろしかろう」
「ありがたき幸せ、謝しまする」
『織田の娘』の嫁ぎ先である『佐治家』と、『織田の家臣の妻』である『荒尾家』とでは、帰蝶の口調も違う
それでも、『それで当然』と受けている善次は丁寧に頭を下げた
「では、途中までお送りしよう。久助」
「あ、いえ、織田様、お気遣い無用にございます。我ら少数で移動しますゆえ、斎藤に見付からぬ自信はございます。護衛は寧ろ心苦しい」
「そうか」
「序でに、婿殿にこの話しを伝えておきましょう。織田様はこのまま兵力を維持なさってください」
「忝い」
「織田様」
「何だ」
「勝って下さいませ」
                
「尾張は国だけ発展し、その実、領地は小さい。中身がどんどんと膨れて行き、なのに、それを収める『器』が小さいままでは、何れ自滅の道を辿ります。あなた様が美濃と言う大国を手に入れ、尾張と共存できるのであれば、私のような老い耄れも、安心して次世代にこの世を手渡せる。私は、あなた様に期待しております」
          忝い」
帰蝶はそっと、会釈した
善次もそれを返し、静かに立ち上がった
「では、御免」

「犬は息災でやっていますか」
「はい。頗るお元気で。時折お母上様が手紙を遣してくださるので、家内もそれを楽しみにしております」
「そうか、それは良かった。では、後に残る心配事は『世継ぎ』だけで。織田も、楽しみにしております」
「あはは・・・、責任重大でございますね」
そう苦笑いする為興は、腹の底から笑うことはできなかった
未だ、犬の懐妊の兆しがないのだから
善次が先に出発し、それを見送るように佐治家も森部を出る
残った織田も墨俣に向けて準備を進めた
「殿」
兵助が松風に向う帰蝶を呼び止めた
「どうした、兵助」
「先程は佐治の方々がいらっしゃったので、話には出せなかったのですが、殿のお耳に挟んでいただきたいことがありまして」
「何だ、話してみろ」
帰蝶は兵助に躰を向けた
「はい。実は、三左殿が行なわれた首実検で、身元不明の首がいくつかありました」
「身元不明?何だ、どう言うことだ」
「いえ、後に身分ははっきりしたのですが、何処の誰とも知らない雑兵の類ではなく、おなごのような顔付きの者ばかりで、三左殿も首を傾げていらしたのですが、生け捕りしていた長井の部隊兵に問い質したら、どうも近江の猿楽若衆のようで」
「猿楽若衆?どう言うことだ」
帰蝶の眉が歪んだ
「大変言い難いのですが、その若衆の首は長井甲斐守衛安様、日比野下野守清実様の、其々最も近い場所に落ちておりまして、どうも         
口篭る兵助に、帰蝶は呆れたような顔をして前髪を掻き上げ、言った
「つまりは、長井の義叔父も日比野も、戦の場に衆道の相手を連れて来ていたと言うことか」
          そのようで・・・」
「呆れた」
短く言い捨て、忌々しそうに唾を吐き捨てる
「こんな状況にあっても、下の事情は別問題だと?」
「僭越ながら、殿。おなごの殿に、我ら男の事情がおわかりになられるのでしょうか」
                
帰蝶の左目が吊り上がる
「殿を軽んじているわけでは、ございません。どうか、言葉のままにお聞きください。長井の雑兵らによって、おなごの顔をした男衆の話は、他の部隊にも広まっております。つまり私が言いたいのは、この先、村の略奪などが起きても不思議ではないと言うことです」
「冗談じゃない!」
帰蝶は想わず兵助の鎧の縁(へり)を掴んで揺さぶった
「吉法師様は、今までにただの一度も、村の略奪など行なったことはないッ!吉法師様の名に泥を塗る気かッ?!」
「ですから、そうなる前に手を打たねばならぬと言うことですッ!」
                
「今はまだ、耐えられるでしょう。七日、十日の話なら、みな耐えられるでしょう。ですが、ひと月も経てば男です、精神的におかしくなってしまう。殿、下種だなどと簡単な言葉で打ち捨てないで下さいませ。『男には女が必要』なのです。どうか、ご理解ください」
          すれば・・・」
「殿?」
「どうすれば良い。どうしろと言うのだ」
兵助から手が離れ、帰蝶は項垂れた
「専門の売女(うりめ)が必要です」
「売女・・・」
「ご用意、できますか」
                
応えられるわけがない
首も振れない帰蝶の代わりに、兵助は言った
「では、私が代行しても構いませんか」
          聞くまでもない」
「なら、手配させていただきます」
                
何も言えない帰蝶から離れ、歩き出す
少し先を進んで、兵助は振り返った
「殿」
帰蝶は黙って顔を向けた
「首を落とされた猿楽若衆の件、先手を打っておいた方がよろしいかと存じます」
たかが猿楽の少年らだとしても、近江が『報復』としての常套手段に使われては面倒なことになる
それは帰蝶にも理解できた
「それでは」
                

『遠征』とは、面倒なものがたくさん待ち受けているものだと、松風の上で帰蝶は深い溜息を零した
「殿」
晴れて織田に復帰した利家が、今度は堂々と馬に乗って帰蝶の隣に付ける
「いよいよ墨俣ですね」
          ああ」
「俺、今まで以上に頑張りますからっ」
「わかってる」
重い兜を無理に横に向け、帰蝶は心掛けて微笑んだ
「もう、『間違え』たりはしない。墨俣攻略、私は後ろで見させてもらう」
          殿」
利家は嬉しそうに頬を綻ばせた
「慶次郎も揃ってるからな、二人掛りで説教を受けたら発狂しそうだ」
「え・・・、えへへ・・・」
帰蝶の言葉に利家は顔を少し赤くして笑う
図体は大きくても、心の中はまだ純粋で子供なのだなと、帰蝶は想った
その空の上では、俄に雨雲が集まり始めた

          また、同じだ、と
「左詰めろッ!」
降り頻る雨の中、視界の狭い墨俣砦を囲み、織田の一斉攻撃が開始する
「北を空けろ!ヤツらの逃げ口を塞ぐなッ!」
にわか雨はやがて大雨へと変貌し、秀隆は感じていた
帰蝶が戦に出る度に雨が降る
雨が降り、織田の姿を消してしまう
帰蝶が戦に出る度に雨が降り、帰蝶を『守る』
斎藤方長井は、雨で見えぬ織田の攻撃に恐怖した
「隼人佐様」
墨俣で待機していた利三が駆け寄った
「清四郎」
「打って出ますか、それとも」
「そうしたいのは山々だが、甲斐守の討死が大きい。西側は既に占拠されてしまっている」
          では・・・」
「ここは大人しく、撤退するしかないだろう」
「撤退・・・」
道三の義理の弟・長井隼人佐道利は悔しさに口唇を噛んだ
「帰蝶の亭主、織田上総介がこれほどの切れ者だとは想っていなかった」
                
信長の名に、利三は動揺した
「我らの逃げ口だけは塞がず空けている。そこから出て行けと言う意思表示だろうな」
「隼人佐様・・・」
「我らは十四条城まで下がる。お前は速やかに稲葉山城に戻り、このことを報告しろ。新九郎が死んだとて、夕庵くらいは残っているのだろう?例え隠居したいと言っても、胸倉を掴んで働かせろ」
「そんな、夕庵様は・・・」
今も斎藤を守るため、稲葉山城で戦っておられるのに、と、利三は心の中で浮かばせた
「殿!長井が撤退を始めました!」
後衛に着けている帰蝶の許に報告が入る
「そうか。このまま西側を中心に東南を攻め続けろ。大将が出れば、残りは雑兵ばかりだ。鎮圧には容易いだろう」
「はっ!」

古い時代の砦だけに、造りは重厚だった
長く放置していても、誰も落そうとしなかっただけのことはある
幾重にも連なった石垣も、登るには困難で、小さく切り崩しながら中に入るしかない
当然、長井側からも攻撃を受け、織田の兵の消耗は激しく、帰蝶を苛立たせた
だが、降り出した雨が織田を包み込み、別の方向から受ける攻撃に長井は成す術がなかった
空を見上げ、落ちて来る雨を顔に受ける
受けながら、帰蝶は呟いた
          吉法師様。守って、下さっているのですか?また、帰蝶を。無茶をする帰蝶を、守って下さっているのですか?」
空は何も応えない
ただ黙って、雨を落し続けた
西の空が真黒に染まる頃、漸く墨俣砦が落ちた
そこに利三の姿はなかった
既に脱したか
逢いたい、とは想っていなかっただけに、そこに『お清』が居ない当たり前に、帰蝶は落胆するわけでもなく、落した墨俣砦に入った

「ち・・・、義父上様・・・!」
突然姿を見せた義理の父親に、恒興は背筋をびしっと伸ばし、佐治を驚かせた
「は、は、は」
娘婿の様子に、善次はゆっくりと笑った
「そう驚きなさんな」
「いや、ですが、義父上様、突然何しに、いえ、どうなさいましたかっ」
恒興は慌てて善次の許へ駆け寄った
「この『下』の森部で交戦があってな、それに参加していた」
「ええ?!義父上様がですかっ?!わかっておりましたら、お助けに入りましたものを」
「莫迦を言うんじゃない。若造に助けてもらうほど、まだ耄碌しとらんわ」
「いえ、そのような意味ではなく・・・」
可笑しいほどしどろもどろな恒興に、少し離れた場所に居た藤吉が佐治の許に駆け寄り、耳打ちした
「佐治さん、あの方は?」
「ああ、知多の荒尾家ご当主、荒尾作右衛門様ですよ。池田様の奥方様のお父様で、勝三郎様にとってはお舅様ですね」
「へええ、そのお舅様が何しに」
「さあ、それは私にもわかりません」
それもそうだな、と、藤吉はそれ以上何も聞かなかった

「ところで、このようなところまで如何なさいましたか。千郷なら、元気でやっておりますよ」
善次を連れ、恒興は木陰の側に腰を下ろす
「いやいや、お前達のことを心配してやって来たのではない。千郷からはいつもよい報せばかりを受けている。心翳ることもなかろう」
「では、一体」
「婿殿」
「はい」
                
少し考え、それから善次は改めて恒興に体を向け、平伏した
「おっ、お義父(ちち)上様・・・!」
「婿殿。いや、池田様。どうか我が荒尾家を、池田様の軍門に下らせていただきますよう、何卒ご配慮下さいませ」
「お義父上様!」
恒興は慌てて善次を起した
「このようなこと、お義父上様がなされることではございませんっ!」
「婿殿、荒尾はもう長く持たない」
          え?」
善次の言葉に、恒興は目を丸くさせた
「我が息子は、何れも凡愚。いや、それより若干はマシと言ったところか。だが、娘婿であるそなたの器を越えることは、罷りなりにもありはしない」
「お義父上様、何を突然そのような・・・」
「荒尾を守るためです」
「お義父上様・・・」
「どうか荒尾を守っていただきたい」
          どうして、急にそんな・・・」
                
善次は少し俯き、何から話せばと言う顔をした
それから、ゆっくりと口を開く
「我ら荒尾は、それまで伊勢の制海権を盾に生き長らえて来た。だが、これからはそのような古い慣わしなど通じないのではないかと、そう想うようになって来た」
「それは一体、どうして・・・」
「そなたの主君、織田上総介様が『大国・美濃』に歯向かっている、その姿に翻弄された、と言うべきか・・・」
「え?」
「いや、私もこれとした確証は何もないのだよ。ただ『そう感じる』としか言えない」
「義父上様?」
「婿殿」
「はい」
「そなたの主君は、何を想って美濃を攻めている。何故、『勝てる見込みも無い』美濃に、こうも逆らい続ける。何故だ」
「それは         
「そなたの主君は、その先の未来を見ているのではないか」
                
恒興は何も言えず、押し黙った
「婿殿。のう、我らの故郷、尾張は小さい。周囲の国と比べても、格段に小さい。その小さき国の、まだ国主にもなっていない織田が、尾張の発展のために戦っている。たった一人、戦っている。その姿を見て、血、荒ぶらぬ男など居るものか」
          義父上様・・・」
「我が愚息達は此度の戦に参加しようと、声すら上げなんだ。何故かわかるか」
          いえ」
「美濃に勝てるなど、毛の先程も想っておらんからだよ。万が一の可能性にすら、賭けようとはしない。織田に着いて、共に栄光の祝杯を挙げようとは、想っておらん。尾張のことは織田に任せておけばよい、そう日和見の姿勢で居る。私にはそれが我慢ならなかった」
「義父上様・・・」
「古の荒ぶいた魂を焚き付け、共に時代を駆け抜けようとは想っておらんだろう。賢く生き抜くことはできても、ただ、それだけ。荒尾をそれ以上の家にしようとまでは想っておらん、それが私には歯痒く感じてしまうのだよ。婿殿」
「はい・・・」
「荒尾はこれからもずっと、伊勢の海を守ることだけに心力を注げばよいのか、それだけのために生きておけばよいのか、荒尾はただ、それだけの存在なのか、否か」
                
善次の静かな闘志に、恒興は圧倒された
「我らも、時代を築く礎になりたい。そう願うのは、愚かなことだろうか」
そこに居るのは、力衰えた一人の老兵
想うまま動けぬことに抗い、抜け掛けた牙で必死に食い下がろうとする孤高の狼
恒興には、そう想えた
「願わくば、強き荒尾のまま、次世代に受け継がせたい。それも叶わぬことか、否か」
「義父上様・・・」
恒興が岳父と向き合っているその時、墨俣砦が落ちたのは正にこの瞬間だった
          時代は、織田を呼んでいる。我らはそれに付き従いたい」
二本の烽火が上がるのを眺めながら、善次は呟いた
「時代を、共に駆け抜けたい・・・。そう願うのは、不相応なことだろうか」
          いいえ・・・」
恒興は、涙で潤んだ瞳で小さく、そう応えた

大雨のお陰か、想定していたよりも容易く砦が落ちた
織田の損失も想っていたより少なく済んだ
このままなら稲葉山城に向えると、帰蝶は踏んだ
残骸処理を片目に、帰蝶は墨俣砦の表座敷に入った
あちらこちらに血が飛び散っているが、今ではもう、見慣れた光景だ
信長の流した血に比べるものでもないと、平然とした顔で膝を崩す
目の前に布陣図を広げ、それをじっと睨む帰蝶を、兵助は複雑な面持ちで見詰めた
墨俣砦を落とし、それでも一向に喜んだ姿のないその様子に、帰蝶が真に捕捉しているのはここではなく『稲葉山城』であることを、痛いほど知っているから
尚更、帰蝶はこれからも無理や無茶を続けるのだろうと、その危うい姿勢に心を痛めた
「兵助」
          はい」
少し遅れて返事する
「犬山に、応援の要請を」
「え?」
帰蝶の提案に、兵助は耳を疑った
犬山は清洲に逆らっている
表立った行動はまだしておらず、精々斎藤の影に隠れてよからぬことを考えているに過ぎないが、それでも清洲に傅いているわけでもない犬山が動くわけがないと
それでも、それ以上を口にしない帰蝶に、従うしかなかった
          承知しました。小牧山の丹羽殿に、その旨、お伝えします」
兵助が返事をしても、一礼をしても、座敷を後にしても、帰蝶は顔を上げなかった
じっと布陣図を見ている
          十九条、その次は長井の逃げ込んだ十四条。その間に・・・」
帰蝶の細い指先が、ある一点で止まる
「父上・・・」
小さく呟く
「使わせてもらいます」

「はぁぁ~。終わった終わった。取り敢えず、当面の目的は果たしたな」
少し痛んだ大槍を肩に担ぎ、慶次郎はまだ瓦礫の処理の最中である石垣に凭れ、身を休めた
「お前、この後伊勢に戻るって?」
「ああ、叔父貴も北畠への睨み、緩めるわけにはいかないからな。明日朝一で戻るよ」
側に居た利家も慶次郎に倣って隣に腰を下ろす
「そうそう、織田復帰、おめでとうさん」
「ああ」
「よかったな。また、殿の側に堂々と居られるぞ」
「よかった・・・のかな」
星が見え始めた空を見上げ、利家は呟いた
「俺、なんかいっつも、殿に庇ってもらってるだけのような気がしてさ、俺、役に立ってるのかなって想うよ」
「ほえ~。殿のこと、奥方様って呼ばなくなったんだ。そっちの方が大進歩だな」
「どう言う意味だよ」
「そう言う意味だよ」
『叔父』『甥』の関係ではあっても、年齢は帰蝶と同い年の慶次郎の方が若干上である
それでも系譜上の面倒な関係ではないことが、今の利家には助かった
「莫迦野郎、からかってんじゃねーよ」
「からかってねーよ。大人になったじゃねーかと、誉めてやってんだよ」
「甥に誉められるって、惨めだ」
「ははははは!」
                
鼻から溜息を吐く利家を、慶次郎は横目で見やった
「これでまた、殿を守れるんだな」
そう、擦り切れるような声で呟く
「そうだな」
慶次郎は少し苦々しい顔をし、小さく返事した
「よかった・・・」
「うん」
「砦も落としたし、後は加納か」
「そうだな。でもあっちも上手くやってるだろ」
「ああ」
「心配することねーよ」
「別に弥三郎の心配なんかしてねーよ。あいつは精鋭だからな、心配しなくても加納を落とすなんて容易いさ」
「確か弥三郎も、先代さんと馴染みの深い男だったな」
「ああ。まぁ、色々複雑な事情抱えてるけどな、殿・・・じゃねえや、吉法師様が目を掛けた男だからさ、無能な筈がない」
「そういやその先代さんだけど」
「うん、どうした」
「いや、さ、先代さんて人は、どんな男だったのかなって」
「気になるのか?」
「気になるって言うか、俺は先代さんが死んでから入ったからな、何も知らなくてよ」
「久さんには?」
「聞いたことねえよ。叔父貴も先代さんへの想いが大きくて、寧ろ話題にしないよう努めてる気がする。ずっと一緒に伊勢に張ってるけどよ、一度も話に出なかった」
「そうか・・・」
「先代さんて人は、どんな男だったんだい」
「そう・・・だな」
まだ胸の奥が、ズキンと痛む
だけどその痛みは、『懐かしい』ものだった
「良い男だったよ。男前って言うのか」
「ああ、女がイチコロになるような」
慶次郎の返事に、利家は軽く笑った
「バーカ、そんな軽くて単純なもんじゃねーよ。気風が良かったな。サバサバしてて、大胆で、細けーことは気にしねえけど、細かいとこにまで目が行き届く。直ぐ熱くなられるお方でな、正義感が強いのか、曲がったことが大嫌いだった。でもさ、どんなに熱くなっても、殿の一言で冷静になってた。そこが面白い夫婦だったよ」
「へええ」
利家の顔が、ほんの少し翳る
          冷静になれなかったのは、殿の父君が危ねえって時だけだった」
「そうだったのかい、それで」
「どうした、慶次郎」
「それで殿は、今も一人、罪を背負ったつもりで居るんだな?」
「え?」
慶次郎の言葉で、利家の顔が青くなる
「『亭主を殺したのは自分だ』って」
「慶・・・・・・・・・・」
「自分で自分を罰することはできない。だから、死に追い遣った人間を憎み続けてる。自分自身を投影して」
「そんな・・・」
「犬。お前、殿を守るって言ったよな」
                
利家は青い顔をしたまま頷いた
頷いた首が小刻みに震えている
「殿を守るってことは、生半可なもんじゃねえぜ」
「どう言う・・・」
「殿の手にある刀は、いつか殿ご自身に向けられるかも知れねえ。お前はそれを止める自信があるのかい?」
「何で・・・」
「仇を全部殺し、誰も居なくなった時、殿の刀は何処に向けられる。まさかとは想うが、殿はご自身にですら躊躇いもなく向けるんじゃねえか、俺は今、そう想った」
「慶次郎・・・」
「『殿を守る』ってのは、そう言うこったよ。殿ご自身からも、殿を守らなきゃならねえ。お前にその自信はあるのかい」
                
「初めて殿と顔を合わせた時、俺はその器の大きさに驚かされた。でもな、付き合いが長くなれば長くなるほど、殿は器が大きいんじゃねえ。無理して背伸びしてるんだって、わかった。本当はもう、とっくの昔に心が折れても不思議じゃねえ。だけど、倒れることを許されない。許さないのは、『織田』ってゆう家だ。あの家が、殿に無理をさせている」
「そんな、そんな筈ない・・・ッ!俺達は別に、殿に無理してもらいたいなんて想ってないッ!」
「でもな、あの御仁の両肩に圧し掛かってるものは、なんだい。『織田』って言う家じゃねーのかい。亭主の残した全ての物が、殿の両肩に乗っかってんじゃねーのかい。それがいつか、殿を押し潰すかも知れねえ。それでもあの人が踏ん張ってるのは何のためか、お前、考えたことあるかい」
黙りこくる利家に、慶次郎は畳み掛けるように言い放った
「亭主と交わした約束。たったそれぽっちのために、あの人は休むことも立ち止まることも許されない。立ち止まっても、「がんばってください」とお前らが後押しする。それで殿は休めるのかい」
                
「俺は新五に、早くねーちゃんを背負えるだけの男になれと言った。ところが、あいつはそうなる前に女房をもらっちまった。子供も生まれる。あいつ自身、まだガキの分際でそれ以上、背負えるもんなのかい。もう、無理だろ」
          だか・・・ら、俺が・・・」
「ついさっきまで出奔の身分だったお前に、何ができる」
                 ッ」
「犬。俺はな、『殿を守る』なんて軽々しく口にすんじゃねえって、言いたいだけなんだよ。殿ご自身のことについては、殿が自分で決めることだ。それでも織田を背負いたいって言うんだったら、それを助けてやればいい。でもな、それ以上を望むんじゃねえ。お前も、俺も、新五も、帰命の若様も、誰も、『織田信長』にはなれねーんだよ。誰も、殿の亭主の代わりなんてできねえんだよ」
          お前・・・、何で・・・」
「何で俺の心を読んだかって?はっ!お前より若干長く生きてんだ。わからねえとでも想ってんのかよ。その単純なオツムで必死になって考えたんだろうけどな、俺にはお見通しだよ。殿だって、知ってて、だからお前に庭を貸してたんじゃねーのかよ。『庭先のでっかい雀』さんよ」
                
知っていたのかと、利家は目を伏せた
「それで殿を守るだなんて、よくもまぁほざけたもんだ。身の程知らずって言葉、知ってるかい」
「慶次・・・・・・・・」
「『それ以上を望むんじゃねえ』。甥の俺が叔父のお前に言える、たった一つの言葉だ。よおく覚えとけ」
                

打ちのめされ、打ち拉がれ、心をずたずたにされた気分だった
それでも、慶次郎の言った言葉は正しいのかも知れない
何も言い返せない利家を置いて、慶次郎は腰を上げ立ち去ろうとした
その慶次郎の前に帰蝶が現れた
「お前達、こんなところで二人きりで、何をやってる」
「殿」
「犬千代、どうした。墨俣を落したのに、何を落ち込んでる」
          いえ・・・、別に・・・」
言葉が詰まって、いつものようにすらすらと流れて来ない
「慶次郎」
「はい」
「伊勢に戻るのだそうだな、さっき久助に聞いた。来て直ぐとんぼ返りで申し訳ないが、伊勢を頼む」
「そんなの先刻、承知の上さ」
「すまんな、伊勢のことはお前達と巴に任せっぱなしだ」
「へへへ、そんなの大したこっちゃねえよ。俺も叔父貴も、里帰りしたと想えば気も楽だ。          あ、そうそう、その巴の方様だけど、近い内戻って来るってよ」
「どうした」
「いや、細かい事情は聞いてねえけど、殿に逢いたいって」
「ははは。里心が付いて居座るかと想っていたが、巴も何を心配しているのやら」
「留守の間に殿が浮気でもしてんじゃねえかと、心配なんじゃねえすか?」
          どうやって浮気をしろと・・・?」
帰蝶の眉間が情けなく寄り、頭から汗を浮かばせる
「まぁ、巴の方様をお送りする時には俺も戻るからよ、盛大な宴席でも用意しててくれや」
「ほざけ。貴様には煮干一匹で充分だ。巴には充分にしてやらんとな」
「ひでぇなぁ、それ」
帰蝶と慶次郎が笑う中、利家だけは笑えなかった
「慶次郎」
「ん?なんだい」
「後は、頼んだ」
小さく呟く帰蝶に、慶次郎は「こちらもか」と苦笑いする
「何心配してなさる。殿、いつもみたいに大口叩きなさいな」
「いや、今大口を叩くと、墨俣を落したのが夢であるかのような気がしてな、自分でも馬鹿馬鹿しいほど今川を倒したよりも神妙になってる。仕方がない」
「美濃に一歩、近付いたんだからね」
                
自分が言おうとしたことを慶次郎に先読みされ、帰蝶は目を丸くさせた
「それで、怖気付いたかい?」
「まさか。俄然やる気が出て来た」
にやりと顔を歪ませる帰蝶を、慶次郎は笑い飛ばした
「ははは、しょーがないお人だねぇ、殿は。相変わらずだ」
「慶次郎」
「あの庭で、刀を折ろうとした時のまんまだ。手探りでしか先に進めない。なのに、恐れもしない」
          そんなことはない。あの頃より私は、臆病になってる」
「殿」
ご冗談を、と、慶次郎は軽く笑った
「それでも私は、まだ、何一つ成していないのだ、慶次郎。まだ何一つ。私は」
ひとつ、息を吐いて、それから続ける
「弱い存在だ」
「殿」
慶次郎は困ったような顔をして首を振った
利家も、驚いた顔をして帰蝶を見上げる
「そんなことはない。そんなことはないんだよ、殿。そりゃあんたの考え過ぎだ。いや、それを臆病と言うのならそうだろうけどね、だけどね、殿、そうじゃないんだよ」
「慶次郎・・・」
「なあ、考えてもみなよ、殿。弱い人間に、何かを守れる力があるってのかい?それは欺瞞だ、虚勢だよ」
「でも・・・」
「はぁぁ、主従揃って、俺に説教されたいってか、大したもんだ」
                
利家は、今度は慶次郎を見上げた
「なあ、殿。守る力のない人間が、何かを守れるもんなのかい?よおく考えてみな。俺はね、伊勢に向いて、わかったんだ。伊勢は今、大変なことになってる。勢力衰え掛けた北畠の猛威に晒され続けていた坂の家が、今じゃ立て直してるんだよ。それもね、殿が巴の方様を側室として迎え入れたからだ。その織田も版図を伸ばし、去年にゃぁあの今川を倒した。それだけでもね、坂家は北畠から守られてるんだよ」
「慶・・・」
何かを言おうとする帰蝶を遮り、慶次郎は続けた
「巴の方様が尾張に来た時にゃぁ、坂家はもう北畠に飲み込まれてもおかしくないほど、弱り切ってた。だけどさ、荒尾家をツテに殿に触手を伸ばし、必死になって縁を辿り寄せた。そして殿はそれを迎え入れた。お互い打算はあっただろうよ、でもね、殿。それは殿が自分の手で引き寄せた『縁』なんだよ。巴の方様が尾張に入った時には、まさかあの今川を倒すだなんて、想っちゃいなかったろうよ。でもよ、殿はそれを成し遂げた。『無力な人間』ができるもんなのかい?そうじゃないだろう?殿がやったんだよ。あんたの、その細っちい頼りない腕が、肩が、成し遂げたんじゃねえかい」
「慶次郎・・・」
「下らねえこと、言ってんじゃねえよ、殿。自分を弱い存在だなどと、努々想わざること。いいかい」
                
慶次郎の言葉に嬉しくて、涙が零れそうになる
それを帰蝶は苦笑いで必死になって、零れないよう堪えた
「片やてめえを見誤って、過大評価するヤツ」
そう言って、慶次郎は利家の腕を掴んで立ち上がらせた
「片やてめえを見縊って、過小評価するヤツ」
そう言って、帰蝶の肩に手を回し、利家にもそうする
「あんたら二人、正に『割れ鍋に綴じ蓋』だな」
          なんだか嬉しくない」
「俺にはおまつが居るし、殿はちょっとおっかないし・・・」
「どう言う意味だ、犬千代!」
帰蝶は慶次郎の腕を振り解き、怒り心頭に顔を赤くした
「あっはっはっはっはっ!犬は女の尻に敷かれてるのが、丁度良い」
「慶次郎、お前なぁ・・・!」
怒って良いのか、逆にこのまま帰蝶の怒りに怯えれば良いのかわからない
複雑な顔をする利家に、帰蝶も少し眉を歪ませて笑った
そんな帰蝶を見て、利家の心にある決意が浮かぶ

斎藤が信長の仇だと想っていた
だが、それだけが全てではない可能性もあることを、慶次郎に教わった
それでも利家は、帰蝶の側に居ようと決めた
帰蝶が『間違えて』しまわないように
そうならないためにも、帰蝶の側に居ようと、利家は改めて決心した
努めて笑おうとする帰蝶を見て、尚更、『なれなくても』そうありたいと願った
帰蝶の中に居る、『自分と言う名の仇』が消えてなくなる、その日まで
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其々が、其々に
帰蝶を守りたいと願う男達の『守りたい理由』は、其々です
いろんな想いを抱えて、帰蝶を守りたいと願っています
ただ単純にそう願っているわけでは、ありません
可成、秀隆は自分の罪に苛まれ、少年だった頃から信長と帰蝶を見て来た利家は、帰蝶をある意味『神聖化』している部分もあります(出奔理由の中に触れています)
そして、其々が其々に、帰蝶を守るのは自分だと言う理由に、ある意味酔い痴れている部分もあります
本人の望むと望まないも関係なく
それはただ『無償』故の想いなのです
なんの見返りも欲しない、ただ自分の想いのままに、そうしたいだけの純粋な気持ちです
今回は合戦シーンを(いつもですが)割愛しました
戦いのシーンはこれから先何十回と手懸けなくてはならないので、その度に同じ表現を繰り返すのは苦痛以外の何物でもありません
その代わりに、帰蝶を取り巻く人間の心理と言うものに重点を置いてみました
前回まで、市弥はやえによって、今回は可成は勝家に因って、心の深い部分に居座る『負い目』から救われるよう織り込みました
余談ですが、何故市弥が『賢婦』と呼ばれるのか、その由縁をどうしても描きたかった
「ただの、信長の母親」と言う役割だけで済ませたくなかった、終わらせたくなかった
必死になって生きる女性を、軽く扱いたくなかった、その一心でまぁ若干無理強いとは想いましたが、あのような情景に仕立てたわけです
そして今回は、可成の深い部分の闇について触れてみました
帰蝶に振り回され、過去を振り返る暇もありませんでしたが、時々は可成が帰蝶を過剰に心配する場面も置いております
桶狭間合戦前夜、帰蝶に「三左に命令はないか」と尋ねるシーンなど
可成は『信長』の主だった戦には参戦しているはずなのに、桶狭間山だけは名前が出て来なかった
信長に仕えた時期は、それよりもっと古いものだとも知られているのに、にも、関らず
なので、私は『帰蝶の一番の腹心』として、可成を清洲警護に回しました
安心して任せられるから、帰蝶はあの夜、一人で城を出れたのです
後付と言われてしまえば、それまでですが(苦笑

これより先に手懸け、今は休止中にしている方では、これまで出て来る織田方武将は少ないです
精々、私個人が好きな河尻くらい、勝三郎に至っては、想いっきり悪役で使っていました(笑
今もまだ再開の目処は立っていませんが、再び公開した時には暇潰しにでも読み比べてみてください
自分でもおかしいほど、その人に対する『想い入れ』が全く違いますから

さて、今回は戦の陣、遠征には必要な『色事』にも少し触れてみました
その部分を詳細に書くつもりは全くありませんが(私は官能小説家ではありませんので)、この、戦場に随行する売春婦達の呼び名を、私は知りません
とある本には『御陣女郎』とも記されておりますが、そもそもその言葉自体、いつ頃の物なのかはっきりしませんし(もしかしたら秀吉か家康の時代の物かも知れない。両者は遠征をよくしていたので)、当時の文献で見付けることもできません
万葉集は無理だとしても、何かの和歌に載っていてもおかしくない物が、探せど探せど見付からない
なので、もしかしたら近代になってからの造語ではなかろうかと看做し、使用しませんでした
但し、当時の売春宿が『傾城屋』(かぶきや)と呼ばれていたことは確認済みです
室町時代に京都にも存在したそうです(後の島原がそれに当るそうです)
そして、『御陣』と言う言葉そのものが辞書にもどこにも載っていないので、今後もこの言葉を使わないように決めました
ですので、ここでは私の造語を何か考え、それを代用したいと想っております
その旨、どうかご了承くださいませ

それではまた、次の更新で
Haruhi 2010/05/31(Mon)10:11:19 編集
舞台観てきました
Haruhiさんこんにちは。
エントリーとは関係ない内容になってしまいますが…
昨日、『ちはやぶる神の国~異聞・本能寺の変~』を観てきました。
帰蝶がクローズアップされるわけではないのですが…。
蝶柄の着物でお邪魔してきました。
みんなが吉法師様を守るために討たれていくシーン、涙が止まらなくて。
でも「お願い、吉法師様を守ってぇぇぇ」って(笑)
走り書きのメモには、
「みつひでのバカー」(吉法師様を討つと言った時)
「みつひでごめんー」(光秀のせいじゃないとわかった時)
と書いてあります(笑)
吉法師様が好きすぎて、帰蝶が乗り移ったかのように吉法師様を見てドキドキしました。
mi URL 2010/06/07(Mon)11:10:52 編集
楽しそうで、何よりです
>昨日、『ちはやぶる神の国~異聞・本能寺の変~』を観てきました。

コメントから察するに、楽しかったようですね
『ちはやぶる』からはどうしても、百人一首、あるいは『千早』を連想してしまいます
『千早ぶる』で簡単に調べると、「苦し紛れにこじつけの解釈をする老人を題材にした落語」だそうで、『ちはやぶる国』の意味はわかりませんが、想像するにドタバタのコメディなのかな、と
千早と言うと、巫女さんの制服、あるいは昔大和の国、今は大阪府に編成されている、楠木正成公の出身地、大阪府でも唯一の村、『千早赤阪村』をつい思い浮かべて、古の浪漫の香りが漂うかのよう
良いですね、日本と言う国は
大事にして行きたいです

>でも「お願い、吉法師様を守ってぇぇぇ」って(笑)

これは帰蝶のセリフですか?

>「みつひでのバカー」(吉法師様を討つと言った時)
>「みつひでごめんー」(光秀のせいじゃないとわかった時)

思い切り笑ってしまいました
特に、「みつひでごめんー」の下り
見たかったです、この場面
きっと客席は笑い声が溢れていたのでしょうね

>吉法師様が好きすぎて、帰蝶が乗り移ったかのように吉法師様を見てドキドキしました。

公式サイトを見てみると、どうも私が思っていたのとは違うのかな、と感じました
私がネットで見付けたものは、ちゃんと『濃姫』のキャスティングがあって、本能寺に信長が隠した財宝を巡って、みんなが右往左往するコメディタッチのものでした
Haruhi 【2010/06/08 00:03】
舞台の内容は…
Haruhiさんの素敵なお話のページにこんなに書いて良いのか…お目汚し、すみません。

『ちはやぶる神の国~異聞・本能寺の変』、私の勉強不足ですが、本能寺の変の新解釈と言うか。
光秀の謀反でもなく、秀吉の謀反でもなく、家康の謀反でもなく、信長の仕組んだ大芝居。

神になるべく、張り付けにされたゼウス様が3日後に生き返り(生まれ変わり)その
遺体が見つからなかった、と言う宣教師の話を信じて光秀に信長討伐を頼みまし
た。
秀吉では自分を討てない。
家康を謀反人にしてはならない。
なぜなら、自分のなきあと太平の世を築けるのは家康しかいないから。
神として生き返るには、インパクトのある最期が必要。
だから光秀に歴史に残る謀反人になってくれ、と頼みました。
遺体を絶対見つからないようにしてくれ、と。
最後は切腹する寸前で暗転。
信長が最期どうなったかはわかりません。

「みつひでのばかー」と書いた時はやっぱり光秀か、と思ったのですが、光秀が自害する時、利休が止めに入りました。
名を変え僧侶として太平の世を見届けて下さい、と。
でも光秀はお屋形様の言いつけ通り、謀反人として首をさらされる道を選びまし
た。
その時、「みつひでごめんー」です(笑)
光秀が桔梗の花が好き、と言うシーンがありました。
桔梗の花言葉は、「一途、変わらぬ心」
ココに繋がっていたのかなと思いました。
濃姫は元宝塚の方が演じてました。
全然出演シーンは少ないのですが…私自身が帰蝶の気分で(笑)
舞台に上がっていなくも、戦いのシーンではハラハラドキドキ。
吉法師様を守ってぇぇぇって、叫びそうでした(笑)

女性キャストはお市とその待女、葛(帰蝶の待女)吉乃と言う側室とその待女、6人
だけでした。

信長は極悪非道な人って描かれ方が嫌でしたが、小姓たちが必死に戦う姿にはお
屋形様愛が溢れてました。

蘭丸に嫉妬して毒を盛ってしまった真之丈。
仲間にそれを見抜かれてしまいますが、「身内に不幸があった」と信長の元を離れます。
ですが光秀が攻めてきた時、戻ってきます。
「この命、信長様をお守りする為に…っ!」って。
その時に言った信長の台詞に涙腺MAXでした。
「小姓として仕えた時から、お前の命はわしのものだ!」
俺様な発言ではなく、信頼している優しい気持ち。


舞台の間は完全に吉法師様に恋していたような…そんな感覚でした。

なんだか…今でもドキドキ(笑)
mi URL 2010/06/08(Tue)14:54:05 編集
ありがとうございます
>Haruhiさんの素敵なお話のページにこんなに書いて良いのか…お目汚し、すみません。

いえいえ、とんでもない

>光秀の謀反でもなく、秀吉の謀反でもなく、家康の謀反でもなく、信長の仕組んだ大芝居。

やはり違いますね
私が拝見したもの(舞台は見ておりません)で主要登場人物の女性は『濃姫』だけでしたので、別のお芝居のようです

>名を変え僧侶として太平の世を見届けて下さい、と。

天海ですかね
でもあの方は、明智光秀ではないことが筆跡鑑定ではっきりしましたしね
私は光秀に何かを習った人物と言う風に見ております
例えば文字の書き取りとか
昔は教科書などない時代ですので、きれいな字を書くにはきれいな字を書く人の手紙などをお手本にしたのではないかと
現に上杉謙信は養子の景勝に『教科書』として「この字が汚い、この字が整ってない」と添削した手紙を送り返してますし

>その時、「みつひでごめんー」です(笑)

誰が書いたんですか?
信長自身ですか?
なんだかドタバタの演劇なのかと思ってたのですが、違うようですね

>光秀が桔梗の花が好き、と言うシーンがありました。
>桔梗の花言葉は、「一途、変わらぬ心」
>ココに繋がっていたのかなと思いました。

桔梗は私も好きです
花言葉はあまり気にしてませんでしたので、初めて知りました
桔梗は土岐・明智家の家紋、軍旗ですね
宣教師に評判の悪い光秀ですが、日本では悪く書かれることってありませんよね
不思議な人です

>全然出演シーンは少ないのですが…私自身が帰蝶の気分で(笑)

残念・・・
でも、史実、濃姫(帰蝶)は本能寺にはいなかったそうなので、仕方がないと言えば仕方ないか(涙

>女性キャストはお市とその待女、葛(帰蝶の待女)吉乃と言う側室とその待女、6人
>だけでした。

市は兎も角、史実でも既に死んでる人がご出演・・・?
ここは普通、お鍋の方なのでは・・・?と、苦笑いが浮かびました

>舞台の間は完全に吉法師様に恋していたような…そんな感覚でした。
>
>なんだか…今でもドキドキ(笑)

とても素敵な舞台だったようで、ご覧になられて良かったですね
内容を教えていただき、私も嬉しいです
ありがとうございました
Haruhi 【2010/06/08 18:52】
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