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滝川久助一益が信勝の部隊と小競り合いを起している隙を縫って、佐久間右衛門尉信盛が喜蔵信時を守山城に入れた
代わりに守山城からは、事の発端である洲賀才蔵を連れ出すことに、成功
才蔵はそのまま清洲の信長に引き渡された
帰蝶は可成と弥三郎の解放交渉のため、清洲ではなく末森に向った
「このまま城に上がられるんですか?」
帰蝶の恰好は清洲城攻略の時と同じ姿である
頭に被っている面当も同じ物であり、それは信勝に「あの時の若武者は自分だ」と言うことを告白するのと同じ行為であった
「だけど、悠長に清洲に戻ってる暇がある?」
自分を心配する恒興に、帰蝶は困窮した顔で言った
弥三郎は尾張衆に入るかもしれないが、可成は美濃衆に分類される
末森が無事に帰してくれるとは考えられなかった
「喜蔵様を守山に入れてしまった以上、勘十郎様は敗北したのよ?すんなり帰してくれるとは想えない」
「ですが・・・」
「お前は帰ってなさい。とばっちりを食らうのは、嫌でしょう?」
「そう言うことを言ってるんじゃありません!私は奥方様の身を案じて 」
まるで纏わり着くような恒興に、帰蝶は苛立った声を上げた
「わかってる、なつの命令だものね?私に何かあれば、あなたが責任を問われる。なつの折檻が怖いんでしょ?」
「違いますッ!」
「 ッ」
普段穏やかで、自分やなつに振り回されているだけの恒興の怒声に、帰蝶はビクンと震えた
「母上の命令など、何ももらってません!私はただ、奥方様が心配なだけです!」
「勝三郎・・・」
「どうして、そうなんですか・・・。どうしていつも、自分ひとりで背負い込もうとなさるんですか・・・。私は、何なんですか・・・。何のために、いつも一緒に居るんですか・・・。どうして、私を頼ってくださらないのですかッ!」
「 」
帰蝶は、母親に言われ、ただ自分の側に居るのだと、ずっと想っていた
恒興の直接の上司は夫の信長で、今日もその夫から恒興を借りているだけに過ぎない
普段の接点など、ほとんどないに等しい
それでも、真剣に自分のためを想って怒鳴ってくれている
嬉しかった
「 ありがとう、勝三郎。心配してくれて・・・。でも、吉法師様は今、洲賀の吟味を行なっている最中だと想います。直ぐには二人の解放に動ける状態じゃないと想うの・・・。自分だけ無事で帰って、恵那や菊子になんて言い訳したら良いの?」
「奥方様・・・」
「弥三郎も三左も、今はもう、吉法師様を支える家臣の一人。大事な存在なの。私一人と引き換えに二人を返してもらえるのなら、安いとは想わない?」
「 」
恒興は俯き、黙って首を振った
「勝三郎」
「それでも私は、あなたを引き止めます。お二人が織田にとって大事な存在ならば、あなた様は殿にとっても大事なお方です。そのお方を一人末森に置いて帰ったとあれば、殿がどのように想われるか、想像なさってくださいませ」
「勝・・・・・・・」
その時
「よく言った、勝三郎」
「 ッ!」
信長の声がして、二人は驚いて後ろを振り返った
恒興の部隊を掻き分け、信長が姿を見せる
「殿ッ!」
「吉法師様・・・」
信長は、半分笑い、半分呆れた顔をしている
「帰蝶、お前な 」
なんて言えば良いのか、言葉が見付からない
「奥方様!」
その後を追って、なつも姿を見せた
「なつ」
「母上」
「やっぱり、無茶をなさろうとしてましたね?」
「 ごめんなさい・・・」
自分をきっと睨み付けるなつに、帰蝶はやはり小さくなる
「でも、洲賀の吟味は?まだなんじゃないですか?」
「なつがな、お前が中々戻らないからまさか末森に乗り込んでるんじゃないかって、さ。来てみたら、案の定だな。なつの言うとおりだ。それに、蝉丸が小屋の中で落ち着かねぇ。早く帰って、安心させてやれ」
「でも・・・・・・・」
「弥三郎も三左も大事だ。だけどな、お前の方がもっと大事だ」
「吉・・・・・・・・・・」
公然の前で、なんて恥しいことを言い出すのかと、帰蝶は顔を真っ赤にして俯く
周囲の兵士らも、気恥ずかしさに当てられて顔を赤くし、あっちを向いたりこっちを向いたりしている
「駒はいくらでも集められる。女房は、お前しか居ない」
「吉法師様・・・・・・」
その言葉は嬉しいが、周りの『駒』にとってはあまり嬉しくない
「だから、大人しく帰れ!」
「はいぃっ!」
信長の声に押されて、帰蝶は恒興に連れられて清洲に戻ることにした
「いやぁ、当てられっ放しでございます」
「煩い・・・」
自分を冷やかす恒興に、帰蝶は恨みの睨みを送りながら帰路に着く
その背中を信長となつが見送った
「では、参りましょうか。若」
「 ああ」
母親と、きちんと顔を合わせるのは何年振りか
父親の信秀の葬儀の際も、互いに目を逸らし合っていた
今は母親から目を背けている場合ではないと感じる
自然と、背筋が伸びた
記憶の中の母は、いつも不機嫌な顔をしていた
何が原因か、信長にはわからなかった
今もこうして、何が面白くないのか、仏頂面で自分の正面に居る母に居た堪れない気持ちが芽生える
できることなら今直ぐ、清洲に帰りたかった
「何用か」
母の声を聞くのも、いつ以来か
覚えていない
「森三左衛門と土田弥三郎の解放をお願いします」
「解放?まるでこちらが拉致でもしたかのような言い草ですね」
「そうは言っておりません。しかし、守山城下の放火をやめるよう説得に向わせた二人が、未だ戻りません。私とて、ことを荒立てたくはありません。今直ぐ解放していただけませんか」
「引き換え条件は何だ?」
「引き換え条件?」
「何も提示せず、無礼を働いた者を解放せよと言うのか」
「無礼を働いたとは、誰のことでしょう」
「 土田、弥三郎だ」
「弥三郎が?」
未だ庶民感覚の抜け切れていない弥三郎だが、主君の母親に対して無礼を働くほど躾のなっていない家庭で育ったわけではない
帰蝶の話によれば、母親のやえはおっとりとした性格だが、躾に関してはしっかり行き届いた教育をしていると聞いている
「どのような無礼を働いたのか、もしよろしければお聞かせ願えませんか。全く見当が付かないものでして」
「 」
「この度の、予期せぬ不遇の事故について、愛息を亡くされた大方様の心中を察しますに、余りあるところ。しかしながら、相手の言い分も聞かぬ内に成敗と言うのも、如何なものでしょう。どうか、今直ぐ勘十郎様を守山から引き上げさせるよう、大方様からもご説得頂けませんでしょうか」
正直なところ、どうして馬廻り衆の自分達が交渉役に買われたのか、可成も弥三郎もわからなかった
単に誰よりも早く馬を走らせられると言うだけで選抜を受けたのだとしたら、随分迷惑な話だ
可成は美濃衆
尾張衆とは相反する対極の位置におり、末森織田にしてみれば『敵国』の人間なのだから、些細なことでも命取りになる
弥三郎はこの市弥の祖父に家を乗っ取られた因縁を持つ
可成以上に、できることなら市弥とは関わり合いたくなかった
「吉法師は、実の弟が殺されたと言うのに、全く動かないのは何故ですか」
「殿は現在、清洲にて情報収集を行なっておられます。正しいことを知らなければならないのは、もしも後になって間違いでもあれば、それは織田の命運に関わるからでございます」
「孫十郎が喜六郎を殺したのは紛れもない事実であろう?!それを疑うのか、吉法師はッ!」
「疑うと言うものではなく、双方の話を聞かぬ以上、どうにも判断できぬ複雑な話でございます。簡単に結論を出してしまうのは尚早かと」
「黙れ!よもや孫十郎と結託し、喜六郎を殺したわけではあるまいな?!」
「そ、そのようなこと、決して 」
「殿は裏で何かを企むような、そんな面倒なことを考えられるようなお方ではありません」
それまでずっと黙っていた弥三郎が、漸く口を開いた
「弥三郎」
自分の助け舟を出してくれたのかと、可成が弥三郎を見る
「弥三郎? お前が、土田弥三郎ですか」
「父と兄がお世話になりました」
物静かに頭を下げる弥三郎は、あの時と同じ、清廉な顔付きをしている
それはまるで、『鳶が鷹を産んだ』が如くに感じられた
「縁あって、今度は私が大方様ご長男、上総介様に仕える身となり、久しくなります」
「勘十郎から聞いてます。物好き同士だと笑っておったところだ」
「大方様のお口にまで上れるとは、この土田弥三郎利親、冥利に尽きます」
「変わった男ですね。もっと尖がった印象だと聞いてましたが」
「父の実家の因縁でしたら、私が生まれる以前の話。大方様にはなんの恨みもございませんゆえ、私にとっては主君のご生母様。それ以外にございません」
真っ直ぐ、穢れのない瞳で自分を見詰める弥三郎に、市弥は興味を覚える
「ほぅ。吉法師の部下にも、お前のような冷静沈着者が居たとは、意外です」
「お褒め頂き、光栄至極に存じます」
「弥三郎」
「はい」
「吉法師を捨てて、末森に来ませんか」
「 え?」
市弥の言葉に、弥三郎だけではなく、隣に居る可成も驚く
「お前のような、打算だけでは動かない男が末森に居れば、他の者の士気を高めるにも役立ちます。どうですか」
市弥が弥三郎に興味を持ったのは、真面目な顔をした時にだけ見せる秀麗な顔立ちか
あるいは、仇も同然の自分を目の前にしても、一切動揺しないその豪胆さか
何が気に入ったのかわからないが、市弥の瞳が色付いて輝いていた
「知行も弾みますよ。吉法師の倍は出しましょう」
「倍、ですか・・・」
「弥三郎ッ!」
まさか魂を売り飛ばしてしまうのか、と、可成は焦った
「口車に乗っては駄目だ!裏切りは、新たな裏切りを生む。それでは、堂々巡りになってしまう!」
「お黙りなさい、美濃の間者風情が!」
「 ッ」
「どうですか。考えてみませんか」
二十歳を超えた倅が居るとしても、市弥の美貌は全く衰えてはいない
寧ろ円熟した大人の魅力を放っていた
男としてそそられる相手だ
だが
「ありがたい申し出ですが、主をあちらこちらと変えては、尻が落ち着きません。それに、うちのかみさんは奥方様とも懇意にしていただいておりますので、夫婦で主君を裏切るような行為は、とてもではありませんができませんよ」
「何・・・?」
「それじゃぁ、ご先祖様に合わせる顔がない」
下から睨(ね)め付けるような眼差しを真っ直ぐ向け、弥三郎はきっぱりと断った
「私は母から、「どんな貧乏暮らしをしようとも、人様に誇れるような生き方を選べ」と常に教わって育ちました。その甲斐あってこうして、兄弟揃って武家に返り咲いたのです。兄が大方様のお世話になったのは、大変ありがたいことだと感謝しております。ですが、こんにちの私があるのは、全て、上総介様のお陰です。私には過ぎた女房もいただきました。ついこの間、子供も生まれたばかりです。その娘に、「父は主君を裏切って豊かな暮らしを選んだ」と後ろ指を差されるのはだけは、御免蒙ります。大方様」
「 なんですか」
「男が、矜持を手放してしまったら、後には何が残るんですか」
「 」
自分を袖にしただけではなく、虚仮にまでした弥三郎を居間に監禁するのと同時に、可成はそのとばっちりを食らっただけである
尚更、事実は話せない
黙り込む母に、信長は再三、二人の解放を懇願した
「ならば、喜蔵の守山城主拝命を取り消しなさい」
「それはいくら母上の願いでも、できません。守山には既に次の城主を伝え、町の復興作業も始めようかと言うところを、また、別の者が城主をやると伝えて回っては、織田の信用に関わります。母上、それはできない相談です」
「ならば、せめて陳謝くらいしては如何ですか」
「陳謝? 誰がですか」
「お前がです」
「何故私が謝らなければなりませんか。その理由は」
「喜六郎が殺されても、孫十郎に報復をしないどころか、三十郎を蔑ろにして庶子である喜蔵を城主に据え置くとは、どういった了見ですか」
「 今川の人質に落ちる迂闊者では、役不足。勘十郎はこの末森の城主。となると、次は必然的に喜蔵が城主に抜擢されても不思議ではないと想うのですが」
『今川の人質に落ちた迂闊者』とは、事実上織田家の長男・信広のことだった
帰蝶が信長に嫁いだ年は、今川との争いが激しかった頃であり、信長の庶兄信広は三河の安祥城に於いて、一度は今川軍を撃退したものの、その武勇に溺れて二度目の迎撃に失敗し、今川家の軍略家・太原雪斎によって生け捕りにされた
そのことを言っているのだろう
勿論、信広のことを揶揄されたところで、市弥には痛くも痒くもない
織田家では信広を信秀の子とは認めておらず、一門扱いでしか待遇されていない
市弥が立腹しているのは、守山城の新城主が、その信広の実弟である信時だと言うことである
「順当に行けば、次は三十郎の筈です。何故三十郎を除外して喜蔵を抜擢したのですか」
「年順当で行けば、間違った選択ではないと想いますが」
「あの二人は、織田の子ではない」
「ですが、父上が作った子に間違いはないでしょう?」
「吉法師・・・ッ!」
苛立ちに、市弥は立ち上がった
「お前は、実の弟が可愛くないのですかッ?!」
「血の繋がりは、何より大事です。それ以上に、即戦力と成る者の抜擢は、何より大事ではありませんか、母上様。三十郎よりも年長である喜蔵を守山の城主に任命することの何処が不味いのか、それをお教えいただけませんか。それとも、母上以外の女が産んだ子が城主では、何か不都合でもあるのでしょうか」
「そんなものはない。私はお前の、その薄情さが不愉快なだけです」
母子の対決を、なつはハラハラした気持ちで見守った
どちらも一歩も引かない
強情っ張りなところは、よく似ている
互いが反発し合うのは、『同族嫌悪』にしか想えなかった
「血縁者の情に流されて正しい判断ができなくなっては、守護代としての務めも果たせません。私は尾張守護代として、正しい判断を下したと自負しております。異議あらば、然るべきところに訴え出ていただけませんか」
「ならば、喜六郎殺害の件はどうなる」
「それに関しては、当該者である洲賀をお連れしました」
「 何・・・?」
信長の申し出に、市弥の顔色が陰る
清洲城に戻った帰蝶は真っ直ぐ、局処の脇にある蝉丸の小屋に向った
帰蝶の姿を確認し、蝉丸が小屋の中で羽根をばたつかせる
お陰で辺り一面に蝉丸の羽根が散乱した
「ただいま、蝉丸」
小屋の格子の向うから、軽く曲げた人差し指を差し出す
蝉丸は格子に掴まりながら、帰蝶のその指を軽く啄んだ
「心配してくれてたの?いつもありがとう」
帰蝶の言葉に、蝉丸は『カァー』と応えた
「吉法師様は、大丈夫かしら。義母上様と喧嘩なんて、なさっていなければ良いのだけど・・・」
一息吐いたからか、別の心配の種が生まれる
「ねぇ、蝉丸。こっそり、末森を覗きに行かない?」
そう、『鴉』に提案する帰蝶だが、蝉丸はそれに応えなかった
『行くな』とでも言いたいのか
それは帰蝶も理解できたようで、膨れっ面になる
「肝心なところで、私はいつも蚊帳の外。 仕方ないわよね、私は、織田の人間じゃないもの・・・・・・・」
「そんなこと、はないですよ」
蝉丸はそう言いたくて、一際高く『アァー!』と鳴いた
「蝉丸は、優しいね」
まるで、亡くなられた義父上様の魂が、宿っているみたい
「それじゃぁ、吉法師様の仰るとおり、大人しくしてますか」
「アァーッ!」
『賛成!』とでも言いたげに、蝉丸は高く鳴いた
そんな蝉丸に帰蝶は苦笑いする
洲賀才蔵の話を一通り聞くも、聞けば聞くほどこちらの分が悪くなる内容に、市弥の忍耐にも限界があった
「例え若輩者の無礼とは言えど、それでも殺さなくてはならない理由になるのですか・・・」
声が怒りに震えている
「これは事故です。念のため、その場に居た他の者にも聞いて回りました」
「全て孫十郎の手の内の者ばかりなのでしょう?公平に聞いたわけではないのでしょうッ?!」
「叔父上の川狩りが終わるのを、側で待っていた漁師が何人かおりました。この洲賀の証言により、一人一人吟味した結果、みな、同様に喜六郎が一方的に無礼を働いたと申しております」
信長も守山の周辺を探索に出ていた
信勝の軍勢が城下に火を放つのを黙って見ていた裏で、証人集めをしていたのだと、なつは後から聞かされた
「 私は・・・、誤って喜六郎様を殺してしまいました・・・。殿に罪はございません・・・。どうか、罰するなら、私一人を・・・。守山の民を巻き込むのは、どうかお止めください・・・ッ」
才蔵は額を床に擦り付けて土下座した
「今も勘十郎は守山城下の騒乱から手を引こうとはしておりません。それを止めることができるのは、母上様だけでございます。どうか、勘十郎に手を引くよう、ご命令くださいませ。お願い申し上げます」
「若・・・ッ」
母に頭を下げる信長の姿に、なつは息を呑んだ
人当たりは優しいが、それでもやはり織田の子だった
信長も誰にも負けぬほど自尊心が強い
その信長が、頭を下げている
なつは信長に恥を掻かせまいと、自分も慌てて市弥に平伏した
この光景に市弥も驚くには驚くが、それでもまだ許せる気持ちには程遠い
「 頭を下げる数が、一つ足りないようですね」
「数?」
母の言葉の意味が判らず、信長は顔を上げて聞いた
「美濃の女狐はどうしました。一番最初に頭を下げるべきではないのですか」
「美濃の女狐と申しますと、もしや我が妻、帰蝶のことでございましょうか」
「他に誰が居る」
「 」
しばらく黙り込む信長を、少し下がった後ろからなつはじっと見詰めた
二人で見送った帰蝶の背中が想い出される
「ほんと、奥方様のやんちゃぶりにも困った物です。まるで、若の幼い頃の光景をまた、見ているかのようですよ」
「ははは!俺はあいつほど賢い行動なんて、したことがない。だから・・・・・・・・・・・」
「 普通の女とは、違う?」
「 」
応えず、信長はなつの目線を戻した
それから、ぽつりぽつりと、呟くように話した
「親父がまだ生きてた頃、年頭挨拶にここへ来た時のことだ」
「はい」
帰蝶の懐妊に、挨拶は避けられなかった
あの時のことは、なつもよく覚えている
「中庭で勘十郎は、俺ではなく、あいつをじっと見ていた」
「 」
なつもその光景は、陰から見て知っていた
市弥は忌々しげに
信勝は羨望の眼差しで眺めていた
「あいつは、男として帰蝶を欲している。あの目を見たらな、そう想わざるを得ない」
「若・・・・・・・・」
美濃とは関係なく
魂の深い部分で欲している
だから、信勝自身、自覚していなかった
何故兄嫁を欲しいと願うのか
将来的に美濃を手に入れるためと言うのは、ただ詭弁を弄したに過ぎない
ついさっき、表で信長がそう話していたのを想い出す
その信長が、凛とした顔付きできっぱりと言い返した
「我が妻は、『美濃の女狐』に非ず。自由に空を飛ぶ揚羽蝶にございます」
「揚羽蝶・・・・・・・・・」
「誰の手にも止められず、誰の自由にもならない揚羽蝶。それが、我が妻、帰蝶でございます」
「 」
何も言えず、ただ黙って立ったままの市弥の許に、苦虫を噛んだ顔の信勝が戻って来た
「勘十郎・・・。どうしたのですか」
「母上。 兄上も、ご一緒でしたか」
信長は応えず、代わりになつが頭を下げる
「養徳院殿も。扱き使われているご様子ですね」
「いいえ、とんでもない・・・」
「どうしましたか、勘十郎。急の帰陣は聞いておりませんよ」
焦る市弥を他所に、信勝は至って冷静な表情で応えた
「我々の負けです、母上」
「負け・・・?」
「尾張守護・斯波岩竜丸義銀様直々の命令が下りました」
「何・・・ッ?」
信長は、尾張の『守護代』でしかない
『尾張の守護』はまだ斯波家であり、当主である義銀がそれであった
「末森は即刻、守山から撤退するように、と」
「 」
信長は、ここに居る
その信長が義銀を動かしたわけではないことは、市弥にもわかった
ならば、清洲に居る帰蝶か
だが、その帰蝶も動いた形跡はない
誰が
弥三郎、可成が解放されたのは、この日の夕刻前のことだった
信長、なつと共に末森を後にする
「斯波家が出て来たのは、若のご指図ですね?」
なつの問いに、信長はしらっとした顔で応えた
「まぁね。末森が守山から手を引かなければ、岩竜丸を動かせって平三郎に言っておいたんだよ」
「兄貴に?」
弥三郎が訊き返す
「お前の兄貴は、普段は地味な仕事に就いてるがな、手の内にゃぁ斯波があるんだぜ?大したもんだよ、土田の跡取りは」
「 」
信長に兄を誉められ、弥三郎は素直に嬉しくなる
帰りはニヤニヤして仕方なかった
「気持ち悪いぞ、弥三郎」
「だって」
今ではすっかり気心の知れ合った可成に腕を肘で小突かれ、よろよろとよたつくのを、信長となつは笑って見ていた
その一方で、信勝、市弥を中心とした末森派の動きが益々不穏なものへと変化して行くのを、誰も止められなかった
「う~ん。千載一遇の好機を、勘十郎はみすみす逃したか。今回は帰蝶も動いておらんのだろう?」
稲葉山城の一角で、義龍一派が集う
そこには当然のように利三の姿もあった
「はい」
義龍に応えるのは、反道三派の筆頭・安藤守就
「まだ幼いとは言え、斯波家当主は元服も済ませております。それに、代々尾張の守護を務めていた実績もあり、また、尾張の民の信頼も厚いまま。織田上総介があくまで守護代として斯波義銀の後見人以上の立場を失わない限り、民の目は斯波家に集まります」
「その斯波を動かして、末森を沈黙させたか。織田上総介と言うのは、中々抜け目のない男のようだな」
義龍の言葉に数年前、尾張小牧で見掛けたあの、奇抜な恰好をした青年を想い出す
同時に、押えようのない殺意も込み上げる
「その織田上総介様と繋がりを持てば、この美濃は磐石なものになります。若、ここは一つ、方向転換と言うのは如何でしょう」
口を挟んだのは、武井夕庵
「方向転換?」
夕庵の言葉に、義龍だけではなく美濃三人衆も首を傾げた
夕庵は、元々は道三の父の代から仕えていた男だ
道三寄りと見られても仕方がなかった
「どう言うことだ、夕庵」
「我々はそれまで、織田上総介様を潰すことを目的として参りました。ですが織田上総介様は、我々の期待を大きく外し、しかも予想を大きく上回る実績を残しつつあります。このまま上総介様と敵対した方針を固めるのは賢いのかどうか、私は疑問に想うようになりました」
「つまりは、上総介と手を組め、と?」
「はい」
「それは合点が行きません、武井様」
夕庵の言葉に耳を傾けようとする義龍を抑えるかのように、守就が口を挟んだ
「と、言いますと?」
「これまで我らは織田上総介を亡き者にするため、様々な対策を講じて参りました。岩倉は既にこちらの手の内にあります。上総介舎弟も、若に与することを誓約しております。なのに今更その上総介と和解だなどと、どの口で申せましょうか」
「しかし、現に我らが敷いた計略を、上総介様は次々と破っております。上総介様ご舎弟が帰蝶姫を口説くと意気込んだ割りに、何の成果も上げられなかったのが良い例ではありませんか」
夕庵の言葉に、同席していた利三の胸がドクンと鳴る
「それに関しては、私も得心が行かなかったことがあります」
「何でしょうか」
「上総介舎弟信勝が帰蝶姫を落とそうとして会談に持ち込んだものの、確かに失敗には終わりましたが、それは事前に知らせた者がいるのではありませんか?」
「と、申しますと?」
嫌に食い下がる守就に、夕庵の表情も険しくなる
「こう言ってしまうと角が立ちますが、武井様は確か、帰蝶姫様の傅役だったとか」
「確かにお世話はさせていただきましたが、それも姫様が幼少の頃の事。傅役と言うほどのことではございません。もしや私をお疑いに?」
「いいえ、そうではありません。言葉を誤ったのでしたら謝罪します。ですが当日、この美濃で探りを入れていた者の存在を確認しております」
「ほう、誰なんだ、それは」
夕庵ではなく、義龍が興味深げに聞いて来る
「わかりません。ですが、この美濃から出て尾張に向かった者とだけは確認しております。恐らくは、信長の手の内の者。となると、斎藤から織田に鞍替えした森三左衛門が疑わしき人物として浮上します」
その言葉に、一堂にざわめきが起こった
「森が美濃を探っていたと?」
「確たる証拠はございませんが、疑い出せば切がない」
それを言うなら去年の初め、信長が三河の村木砦を攻略した際、末森の信勝と接触したであろう証拠を残して来た守就も同じではないかと、夕庵は言いたくなった
だが、それを口にすれば今、自分に向けられている疑いが濃厚になるだけである
「ならば、一番真偽の掛けられる人物は私ではなく、森殿の舅である林殿が怪しいことになりますな。しかし、林殿はあの通り老齢に差し掛かったご老人。間者の真似事など、とてもではないが務まるとは想えません。確かに、疑い出せば切がない。しかし、疑うとなればここに居る者全てがその該当者とはなり得ませんか」
「武井様・・・ッ!」
自分まで疑いの目で見られるのかと、稲葉一鉄が片膝を立てて抗議しようとした
それを義龍が止める
「やめんか。内輪揉めを起したところで、帰蝶が喜ぶのは目に見えている。上総介舎弟と接触した事で、帰蝶も何らかの情報ぐらいは手に入れているだろう。それを白日の下に晒すような真似をしては、自分で自分の首を絞める結果になるだけだ。それでは勘十郎の二の舞になる」
「 申し訳ございません」
いなされ、守就は大人しくなり、一鉄はばつが悪そうに膝を落とした
「 武井様や林様に疑いの目が向けられるのであれば、私も同様です」
大人しくしていた利三が口を開く
「清四郎?」
「私は幼少の頃より、姫様の学友として、姫様が嫁がれる寸前まで行動を共にしておりました。もしも斎藤の情報を流した者が居るとしたら、私も疑われても仕方がない立場でございます」
「清四郎を疑う必要などない」
義龍はすぐさま利三を庇った
「清四郎は馬廻り衆として、この上ない働きをしている。帰蝶が嫁ぐ前に私に忠誠を誓っているのだ。それを疑うなど、私が許すものか」
「若・・・」
「それよりも、道三様にも目立った動きが」
空気を換えるように、夕庵が言う
「どうせ、私が土岐の落胤だと吹聴して回っているのだろう?好きにさせておけ。向うが言い触らせば言い触らしただけ、美濃の民は私に靡く。尾張の斯波同様、この美濃でも土岐の名は根深く息衝いている。それをどうすることなどできんのだよ」
「ならば、それを逆手に取って道三様を引退に追い込むと言うのは如何でしょう」
「できるのか?」
言い出した守就に、義龍は再び目を向けた
「民は慈悲深き領主を求めるものでございます。今の道三様には、それが足りない。最早神懸り的な統率力だけでは、人は着いて来ない。甘い汁でも飲まさない限り、は 」
「 」
そうだろうか
利三は守就の言葉に少しだけ、違和感を覚えた
神懸り的な統率力は、何より大事だ
「この人の為に命を賭けたい」と想える相手になら、人はどんな痛みも苦しみも乗り越えられる
それは、強い軍団の要素でもあり、何にも換えられない絆にもなる
道三への不信感が強まったのは、単なる『老害』に過ぎず、それが年々際立って来ただけのことではないのか、と、想った
美濃の民の反感を買わず、そして、神懸り的な統率力を持ち、この、頑固な美濃衆を束ねられる人物を、利三は一人だけ知っていた
それは、義龍ではない
自分でもない
この世に唯一の存在
その名を想い浮かべた時
胸に、鈍い痛みが生まれた
同じ月、この直後、帰蝶の実兄・龍元と龍之が義龍の手によって殺害された
だが、この時の帰蝶にはその情報は齎されなかった
「吉法師様!」
清洲の玄関で、夫の無事を確認できた帰蝶は想わず駆け寄り、そして
「ぎゃぁ!」
小袖の裾を引っ掛けてしまい、見事に転んだ
「おいおい、帰蝶」
苦笑しながら起してやる
「 ご無事で、何よりです」
「ああ、ただいま」
「あらあら、私達のことは眼中にないんですね、奥方様」
離れたところからなつが声を掛けるも、耳にも届かないのか帰蝶の反応はない
「ないみたいですね」
可成が継ぎ、弥三郎も苦笑する
そんな二人を、身を案じていた其々の妻が出迎える
なつには愛息・恒興が迎えるが、「色気がない」と、なつは詰まらなさそうな顔をした
信勝が放った火により被災した町人への賠償は、全て信長が持つことになった
少し前なら困窮して財布の中が空になっても仕方がなかったが、貞勝の始めた商売により今のところ財源は豊かだ
町の復興にも惜しみない援助を出すことで、信長の評判は益々上がる
世間では「弟の尻拭いを兄がやった」程度にしかないだろうが、そんな些細な評価を何より嫌うのが信長なのだから、民への信頼を買うと同時に、弟にこの上ない屈辱を味合わせられたことが殊の外嬉しいらしい
ここのところずっと、信長の機嫌はよかった
機嫌が良いまま新年に突入する
新しい年は暮れ前に起きた織田家の、庄内川の事件もすっかり忘れられ、今までとは違う希望に夢を乗せて誰もが自由に、そして楽しげに過ごせた
年頭挨拶では一門が揃い、当然信勝の姿もある
この席で守山城主になった信時に、尾張豪族・荒尾善次の娘・千郷が嫁ぐことを発表した
「豪族とは言え、荒尾様は知多の大野城城主、佐治家のご子息。名門と言えば名門ですね」
「向かいには、伊勢」
つまり、何れ伊勢をも手に入れると言う、信長の願いが込められた婚姻であった
知多郡は伊勢湾を挟んで伊勢とは向かい合う地域に当たる
知多を味方に引きこんでおけば、伊勢を攻めるにしても陸路と水路の両方を制することも可能だった
打算の末の婚姻だとしても、織田家が尾張の外から出るには必要不可欠な政略でもある
また、佐治から荒尾を受け継いだ善次にとっても、織田が後ろ盾となってくれるのなら西尾張でもある程度の利権は生まれるのだから、断る理由も見付からない
「京へ向うには、近江、伊勢のどちらかを掌握しておかなければならない」
「吉法師様・・・。それは」
にっと笑う信長に、帰蝶も頬が緩んだ
夫の目の先に浮かんだ目標
それは、『上洛』
京に織田の旗印を立てるつもりなのだと、帰蝶は感じ取る
いよいよ夫が本腰を入れ始めた
そう想っただけで、心がソワソワして仕方がない帰蝶であった
その先にある不幸に、少しも気付かず
正月の三ヶ日が過ぎた頃、那古野に残っていたお能が四番目の子を出産した
めでた続きの織田家では正月が過ぎても祝い事が絶えない
尾張の半分を手にしただけではなく、商業的にも楽市が成功し、斯波家からは全幅の信頼を寄せられるまでになり、あの義銀が将来は信長と共に戦場に立ちたいとまで言い出したと時親から聞かされた時は、想わず帰蝶に頬を抓ってもらうことまでしたほどだった
「斯波が尾張の覇権を殿に譲られたとなれば、いよいよ尾張制覇も現実を帯びて参りましたな」
「いや。これも全て、岩竜丸に対し変わらぬ忠義を尽くしてくれたお前と、斯波の兄弟達の面倒を一切見て来てくれたお能のお陰だ。感謝する」
ぺこりと時親に頭を下げる信長の隣で、帰蝶も頭を下げた
「特にお能は既に子が三人も居て、妊娠中も色々と不便だったでしょうに、それでも文句一つ言わず斯波兄弟達の世話をしていたと聞きます。本来なら私がせねばならぬことを、全てお能一人に押し付けたまま現在に至ります。何もしようとしない私を、どうか許してください」
「何を仰いますか、奥方様。岩竜丸様方の養育費の全てを出していただいて、こちらこそ礼を申さねばならない立場です。どうか、恐縮なさらないでください」
「ところで、生まれた子だが、男か?女か?」
「女、娘です」
少し照れ臭そうにはみかみながら、時親は応えた
「そうか。なら将来は、土田家に恥じぬ相手を探さねばならんな」
「そんな碌の高い家柄ではございません」
「何を言うか。もう立派な、斯波家の重臣だろう?」
「風前の灯火みたいな家ですが」
遠慮して言った言葉だろうが、言い得て妙であるため失笑しか生まれない
そうだろう
守護家と言っても、尾張の実質的な運営は全て信長の手に委ねられている
大きなことは相談しながらとしていても、それ以外のことは信長の独断で決められていた
派手なことをしていないだけで、そろそろ守護を織田家に移行させても良い頃合かと、朝廷でも見ているだろう
これこそ、帰蝶が求めていた『無血の下剋上』であった
父・道三がやったのと同じ手法では、何れ災いの種が生まれる
それでは意味がない
夫に、父と同じ轍を踏ませるわけにはいかなかった
「慌しく過ぎて行きそうですね」
「そうだな。喜六郎の事件は悲しいことだったが、あれがなければ世間は俺には傾かなかった」
「ですね。勘十郎様が大人しく事を見守っておられたら、世論も動くことはなかったでしょう」
守山城下を焼き払ったことは、常に優等生であり続けようとしていた信勝にとって『汚点』以外の何物でもない
弟の敵討ちに、何の関係もない守山の民を巻き込んだ愚行は、決して拭えないのだから
つまり、今後も続くであろうと想われていた信秀の後継者争いに、信勝の方から自滅した形になる
もしも最初に行動を取っていたのが信長であったらば、今頃この清洲に信勝が上がりこんでも誰も文句は言えまい
信勝はそれだけの失態をしでかした
「報復は、遣り方を間違えたら命取りになるだけです」
「そうだな。今回の事で俺も勉強になった」
身内同士のいざこざに民を巻き込めばどうなるのか、信長にとっては良い経験をしたとも言える
「守山の復興と、逐電された孫十郎様の捜索。やることはたくさんありますよ、吉法師様」
「おうよ」
「私も、微力ながら尽力させていただきます」
「う~ん、お前は別に・・・」
「吉法師様?」
自分は必要ではないのか
最早、なんの助力もさせてはもらえないのかと、絶望の淵に立たされる
そんな帰蝶に、信長は相変わらずの笑顔を浮かべ言い放った
「お前は今のまま、自由にしてくれ」
「 吉法師様?」
「想えば今までお前が黙って行動して来た結果、事が良い方向に進んでるってことに、やっと気付いてな」
「え・・・?」
「だからさ、お前は今のままで良いよ」
「どう言う・・・?」
「自由に空を舞う揚羽のままで良いってことだ」
「揚羽・・・?」
信長の言っていることが、さっぱりわからない
キョトンとした帰蝶を、信長はただずっと笑っている
首を傾げる帰蝶の髪に差された、あの鋼の飾り櫛が、日の光に反射してきらりと輝いた
まるで信長の言う、『舞う揚羽』のように
代わりに守山城からは、事の発端である洲賀才蔵を連れ出すことに、成功
才蔵はそのまま清洲の信長に引き渡された
帰蝶は可成と弥三郎の解放交渉のため、清洲ではなく末森に向った
「このまま城に上がられるんですか?」
帰蝶の恰好は清洲城攻略の時と同じ姿である
頭に被っている面当も同じ物であり、それは信勝に「あの時の若武者は自分だ」と言うことを告白するのと同じ行為であった
「だけど、悠長に清洲に戻ってる暇がある?」
自分を心配する恒興に、帰蝶は困窮した顔で言った
弥三郎は尾張衆に入るかもしれないが、可成は美濃衆に分類される
末森が無事に帰してくれるとは考えられなかった
「喜蔵様を守山に入れてしまった以上、勘十郎様は敗北したのよ?すんなり帰してくれるとは想えない」
「ですが・・・」
「お前は帰ってなさい。とばっちりを食らうのは、嫌でしょう?」
「そう言うことを言ってるんじゃありません!私は奥方様の身を案じて
まるで纏わり着くような恒興に、帰蝶は苛立った声を上げた
「わかってる、なつの命令だものね?私に何かあれば、あなたが責任を問われる。なつの折檻が怖いんでしょ?」
「違いますッ!」
「
普段穏やかで、自分やなつに振り回されているだけの恒興の怒声に、帰蝶はビクンと震えた
「母上の命令など、何ももらってません!私はただ、奥方様が心配なだけです!」
「勝三郎・・・」
「どうして、そうなんですか・・・。どうしていつも、自分ひとりで背負い込もうとなさるんですか・・・。私は、何なんですか・・・。何のために、いつも一緒に居るんですか・・・。どうして、私を頼ってくださらないのですかッ!」
「
帰蝶は、母親に言われ、ただ自分の側に居るのだと、ずっと想っていた
恒興の直接の上司は夫の信長で、今日もその夫から恒興を借りているだけに過ぎない
普段の接点など、ほとんどないに等しい
それでも、真剣に自分のためを想って怒鳴ってくれている
嬉しかった
「
「奥方様・・・」
「弥三郎も三左も、今はもう、吉法師様を支える家臣の一人。大事な存在なの。私一人と引き換えに二人を返してもらえるのなら、安いとは想わない?」
「
恒興は俯き、黙って首を振った
「勝三郎」
「それでも私は、あなたを引き止めます。お二人が織田にとって大事な存在ならば、あなた様は殿にとっても大事なお方です。そのお方を一人末森に置いて帰ったとあれば、殿がどのように想われるか、想像なさってくださいませ」
「勝・・・・・・・」
その時
「よく言った、勝三郎」
「
信長の声がして、二人は驚いて後ろを振り返った
恒興の部隊を掻き分け、信長が姿を見せる
「殿ッ!」
「吉法師様・・・」
信長は、半分笑い、半分呆れた顔をしている
「帰蝶、お前な
なんて言えば良いのか、言葉が見付からない
「奥方様!」
その後を追って、なつも姿を見せた
「なつ」
「母上」
「やっぱり、無茶をなさろうとしてましたね?」
「
自分をきっと睨み付けるなつに、帰蝶はやはり小さくなる
「でも、洲賀の吟味は?まだなんじゃないですか?」
「なつがな、お前が中々戻らないからまさか末森に乗り込んでるんじゃないかって、さ。来てみたら、案の定だな。なつの言うとおりだ。それに、蝉丸が小屋の中で落ち着かねぇ。早く帰って、安心させてやれ」
「でも・・・・・・・」
「弥三郎も三左も大事だ。だけどな、お前の方がもっと大事だ」
「吉・・・・・・・・・・」
公然の前で、なんて恥しいことを言い出すのかと、帰蝶は顔を真っ赤にして俯く
周囲の兵士らも、気恥ずかしさに当てられて顔を赤くし、あっちを向いたりこっちを向いたりしている
「駒はいくらでも集められる。女房は、お前しか居ない」
「吉法師様・・・・・・」
その言葉は嬉しいが、周りの『駒』にとってはあまり嬉しくない
「だから、大人しく帰れ!」
「はいぃっ!」
信長の声に押されて、帰蝶は恒興に連れられて清洲に戻ることにした
「いやぁ、当てられっ放しでございます」
「煩い・・・」
自分を冷やかす恒興に、帰蝶は恨みの睨みを送りながら帰路に着く
その背中を信長となつが見送った
「では、参りましょうか。若」
「
母親と、きちんと顔を合わせるのは何年振りか
父親の信秀の葬儀の際も、互いに目を逸らし合っていた
今は母親から目を背けている場合ではないと感じる
自然と、背筋が伸びた
記憶の中の母は、いつも不機嫌な顔をしていた
何が原因か、信長にはわからなかった
今もこうして、何が面白くないのか、仏頂面で自分の正面に居る母に居た堪れない気持ちが芽生える
できることなら今直ぐ、清洲に帰りたかった
「何用か」
母の声を聞くのも、いつ以来か
覚えていない
「森三左衛門と土田弥三郎の解放をお願いします」
「解放?まるでこちらが拉致でもしたかのような言い草ですね」
「そうは言っておりません。しかし、守山城下の放火をやめるよう説得に向わせた二人が、未だ戻りません。私とて、ことを荒立てたくはありません。今直ぐ解放していただけませんか」
「引き換え条件は何だ?」
「引き換え条件?」
「何も提示せず、無礼を働いた者を解放せよと言うのか」
「無礼を働いたとは、誰のことでしょう」
「
「弥三郎が?」
未だ庶民感覚の抜け切れていない弥三郎だが、主君の母親に対して無礼を働くほど躾のなっていない家庭で育ったわけではない
帰蝶の話によれば、母親のやえはおっとりとした性格だが、躾に関してはしっかり行き届いた教育をしていると聞いている
「どのような無礼を働いたのか、もしよろしければお聞かせ願えませんか。全く見当が付かないものでして」
「
「この度の、予期せぬ不遇の事故について、愛息を亡くされた大方様の心中を察しますに、余りあるところ。しかしながら、相手の言い分も聞かぬ内に成敗と言うのも、如何なものでしょう。どうか、今直ぐ勘十郎様を守山から引き上げさせるよう、大方様からもご説得頂けませんでしょうか」
正直なところ、どうして馬廻り衆の自分達が交渉役に買われたのか、可成も弥三郎もわからなかった
単に誰よりも早く馬を走らせられると言うだけで選抜を受けたのだとしたら、随分迷惑な話だ
可成は美濃衆
尾張衆とは相反する対極の位置におり、末森織田にしてみれば『敵国』の人間なのだから、些細なことでも命取りになる
弥三郎はこの市弥の祖父に家を乗っ取られた因縁を持つ
可成以上に、できることなら市弥とは関わり合いたくなかった
「吉法師は、実の弟が殺されたと言うのに、全く動かないのは何故ですか」
「殿は現在、清洲にて情報収集を行なっておられます。正しいことを知らなければならないのは、もしも後になって間違いでもあれば、それは織田の命運に関わるからでございます」
「孫十郎が喜六郎を殺したのは紛れもない事実であろう?!それを疑うのか、吉法師はッ!」
「疑うと言うものではなく、双方の話を聞かぬ以上、どうにも判断できぬ複雑な話でございます。簡単に結論を出してしまうのは尚早かと」
「黙れ!よもや孫十郎と結託し、喜六郎を殺したわけではあるまいな?!」
「そ、そのようなこと、決して
「殿は裏で何かを企むような、そんな面倒なことを考えられるようなお方ではありません」
それまでずっと黙っていた弥三郎が、漸く口を開いた
「弥三郎」
自分の助け舟を出してくれたのかと、可成が弥三郎を見る
「弥三郎?
「父と兄がお世話になりました」
物静かに頭を下げる弥三郎は、あの時と同じ、清廉な顔付きをしている
それはまるで、『鳶が鷹を産んだ』が如くに感じられた
「縁あって、今度は私が大方様ご長男、上総介様に仕える身となり、久しくなります」
「勘十郎から聞いてます。物好き同士だと笑っておったところだ」
「大方様のお口にまで上れるとは、この土田弥三郎利親、冥利に尽きます」
「変わった男ですね。もっと尖がった印象だと聞いてましたが」
「父の実家の因縁でしたら、私が生まれる以前の話。大方様にはなんの恨みもございませんゆえ、私にとっては主君のご生母様。それ以外にございません」
真っ直ぐ、穢れのない瞳で自分を見詰める弥三郎に、市弥は興味を覚える
「ほぅ。吉法師の部下にも、お前のような冷静沈着者が居たとは、意外です」
「お褒め頂き、光栄至極に存じます」
「弥三郎」
「はい」
「吉法師を捨てて、末森に来ませんか」
「
市弥の言葉に、弥三郎だけではなく、隣に居る可成も驚く
「お前のような、打算だけでは動かない男が末森に居れば、他の者の士気を高めるにも役立ちます。どうですか」
市弥が弥三郎に興味を持ったのは、真面目な顔をした時にだけ見せる秀麗な顔立ちか
あるいは、仇も同然の自分を目の前にしても、一切動揺しないその豪胆さか
何が気に入ったのかわからないが、市弥の瞳が色付いて輝いていた
「知行も弾みますよ。吉法師の倍は出しましょう」
「倍、ですか・・・」
「弥三郎ッ!」
まさか魂を売り飛ばしてしまうのか、と、可成は焦った
「口車に乗っては駄目だ!裏切りは、新たな裏切りを生む。それでは、堂々巡りになってしまう!」
「お黙りなさい、美濃の間者風情が!」
「
「どうですか。考えてみませんか」
二十歳を超えた倅が居るとしても、市弥の美貌は全く衰えてはいない
寧ろ円熟した大人の魅力を放っていた
男としてそそられる相手だ
だが
「ありがたい申し出ですが、主をあちらこちらと変えては、尻が落ち着きません。それに、うちのかみさんは奥方様とも懇意にしていただいておりますので、夫婦で主君を裏切るような行為は、とてもではありませんができませんよ」
「何・・・?」
「それじゃぁ、ご先祖様に合わせる顔がない」
下から睨(ね)め付けるような眼差しを真っ直ぐ向け、弥三郎はきっぱりと断った
「私は母から、「どんな貧乏暮らしをしようとも、人様に誇れるような生き方を選べ」と常に教わって育ちました。その甲斐あってこうして、兄弟揃って武家に返り咲いたのです。兄が大方様のお世話になったのは、大変ありがたいことだと感謝しております。ですが、こんにちの私があるのは、全て、上総介様のお陰です。私には過ぎた女房もいただきました。ついこの間、子供も生まれたばかりです。その娘に、「父は主君を裏切って豊かな暮らしを選んだ」と後ろ指を差されるのはだけは、御免蒙ります。大方様」
「
「男が、矜持を手放してしまったら、後には何が残るんですか」
「
自分を袖にしただけではなく、虚仮にまでした弥三郎を居間に監禁するのと同時に、可成はそのとばっちりを食らっただけである
尚更、事実は話せない
黙り込む母に、信長は再三、二人の解放を懇願した
「ならば、喜蔵の守山城主拝命を取り消しなさい」
「それはいくら母上の願いでも、できません。守山には既に次の城主を伝え、町の復興作業も始めようかと言うところを、また、別の者が城主をやると伝えて回っては、織田の信用に関わります。母上、それはできない相談です」
「ならば、せめて陳謝くらいしては如何ですか」
「陳謝?
「お前がです」
「何故私が謝らなければなりませんか。その理由は」
「喜六郎が殺されても、孫十郎に報復をしないどころか、三十郎を蔑ろにして庶子である喜蔵を城主に据え置くとは、どういった了見ですか」
「
『今川の人質に落ちた迂闊者』とは、事実上織田家の長男・信広のことだった
帰蝶が信長に嫁いだ年は、今川との争いが激しかった頃であり、信長の庶兄信広は三河の安祥城に於いて、一度は今川軍を撃退したものの、その武勇に溺れて二度目の迎撃に失敗し、今川家の軍略家・太原雪斎によって生け捕りにされた
そのことを言っているのだろう
勿論、信広のことを揶揄されたところで、市弥には痛くも痒くもない
織田家では信広を信秀の子とは認めておらず、一門扱いでしか待遇されていない
市弥が立腹しているのは、守山城の新城主が、その信広の実弟である信時だと言うことである
「順当に行けば、次は三十郎の筈です。何故三十郎を除外して喜蔵を抜擢したのですか」
「年順当で行けば、間違った選択ではないと想いますが」
「あの二人は、織田の子ではない」
「ですが、父上が作った子に間違いはないでしょう?」
「吉法師・・・ッ!」
苛立ちに、市弥は立ち上がった
「お前は、実の弟が可愛くないのですかッ?!」
「血の繋がりは、何より大事です。それ以上に、即戦力と成る者の抜擢は、何より大事ではありませんか、母上様。三十郎よりも年長である喜蔵を守山の城主に任命することの何処が不味いのか、それをお教えいただけませんか。それとも、母上以外の女が産んだ子が城主では、何か不都合でもあるのでしょうか」
「そんなものはない。私はお前の、その薄情さが不愉快なだけです」
母子の対決を、なつはハラハラした気持ちで見守った
どちらも一歩も引かない
強情っ張りなところは、よく似ている
互いが反発し合うのは、『同族嫌悪』にしか想えなかった
「血縁者の情に流されて正しい判断ができなくなっては、守護代としての務めも果たせません。私は尾張守護代として、正しい判断を下したと自負しております。異議あらば、然るべきところに訴え出ていただけませんか」
「ならば、喜六郎殺害の件はどうなる」
「それに関しては、当該者である洲賀をお連れしました」
「
信長の申し出に、市弥の顔色が陰る
清洲城に戻った帰蝶は真っ直ぐ、局処の脇にある蝉丸の小屋に向った
帰蝶の姿を確認し、蝉丸が小屋の中で羽根をばたつかせる
お陰で辺り一面に蝉丸の羽根が散乱した
「ただいま、蝉丸」
小屋の格子の向うから、軽く曲げた人差し指を差し出す
蝉丸は格子に掴まりながら、帰蝶のその指を軽く啄んだ
「心配してくれてたの?いつもありがとう」
帰蝶の言葉に、蝉丸は『カァー』と応えた
「吉法師様は、大丈夫かしら。義母上様と喧嘩なんて、なさっていなければ良いのだけど・・・」
一息吐いたからか、別の心配の種が生まれる
「ねぇ、蝉丸。こっそり、末森を覗きに行かない?」
そう、『鴉』に提案する帰蝶だが、蝉丸はそれに応えなかった
『行くな』とでも言いたいのか
それは帰蝶も理解できたようで、膨れっ面になる
「肝心なところで、私はいつも蚊帳の外。
「そんなこと、はないですよ」
蝉丸はそう言いたくて、一際高く『アァー!』と鳴いた
「蝉丸は、優しいね」
「それじゃぁ、吉法師様の仰るとおり、大人しくしてますか」
「アァーッ!」
『賛成!』とでも言いたげに、蝉丸は高く鳴いた
そんな蝉丸に帰蝶は苦笑いする
洲賀才蔵の話を一通り聞くも、聞けば聞くほどこちらの分が悪くなる内容に、市弥の忍耐にも限界があった
「例え若輩者の無礼とは言えど、それでも殺さなくてはならない理由になるのですか・・・」
声が怒りに震えている
「これは事故です。念のため、その場に居た他の者にも聞いて回りました」
「全て孫十郎の手の内の者ばかりなのでしょう?公平に聞いたわけではないのでしょうッ?!」
「叔父上の川狩りが終わるのを、側で待っていた漁師が何人かおりました。この洲賀の証言により、一人一人吟味した結果、みな、同様に喜六郎が一方的に無礼を働いたと申しております」
信長も守山の周辺を探索に出ていた
信勝の軍勢が城下に火を放つのを黙って見ていた裏で、証人集めをしていたのだと、なつは後から聞かされた
「
才蔵は額を床に擦り付けて土下座した
「今も勘十郎は守山城下の騒乱から手を引こうとはしておりません。それを止めることができるのは、母上様だけでございます。どうか、勘十郎に手を引くよう、ご命令くださいませ。お願い申し上げます」
「若・・・ッ」
母に頭を下げる信長の姿に、なつは息を呑んだ
人当たりは優しいが、それでもやはり織田の子だった
信長も誰にも負けぬほど自尊心が強い
その信長が、頭を下げている
なつは信長に恥を掻かせまいと、自分も慌てて市弥に平伏した
この光景に市弥も驚くには驚くが、それでもまだ許せる気持ちには程遠い
「
「数?」
母の言葉の意味が判らず、信長は顔を上げて聞いた
「美濃の女狐はどうしました。一番最初に頭を下げるべきではないのですか」
「美濃の女狐と申しますと、もしや我が妻、帰蝶のことでございましょうか」
「他に誰が居る」
「
しばらく黙り込む信長を、少し下がった後ろからなつはじっと見詰めた
二人で見送った帰蝶の背中が想い出される
「ほんと、奥方様のやんちゃぶりにも困った物です。まるで、若の幼い頃の光景をまた、見ているかのようですよ」
「ははは!俺はあいつほど賢い行動なんて、したことがない。だから・・・・・・・・・・・」
「
「
応えず、信長はなつの目線を戻した
それから、ぽつりぽつりと、呟くように話した
「親父がまだ生きてた頃、年頭挨拶にここへ来た時のことだ」
「はい」
帰蝶の懐妊に、挨拶は避けられなかった
あの時のことは、なつもよく覚えている
「中庭で勘十郎は、俺ではなく、あいつをじっと見ていた」
「
なつもその光景は、陰から見て知っていた
市弥は忌々しげに
信勝は羨望の眼差しで眺めていた
「あいつは、男として帰蝶を欲している。あの目を見たらな、そう想わざるを得ない」
「若・・・・・・・・」
美濃とは関係なく
魂の深い部分で欲している
だから、信勝自身、自覚していなかった
何故兄嫁を欲しいと願うのか
将来的に美濃を手に入れるためと言うのは、ただ詭弁を弄したに過ぎない
ついさっき、表で信長がそう話していたのを想い出す
その信長が、凛とした顔付きできっぱりと言い返した
「我が妻は、『美濃の女狐』に非ず。自由に空を飛ぶ揚羽蝶にございます」
「揚羽蝶・・・・・・・・・」
「誰の手にも止められず、誰の自由にもならない揚羽蝶。それが、我が妻、帰蝶でございます」
「
何も言えず、ただ黙って立ったままの市弥の許に、苦虫を噛んだ顔の信勝が戻って来た
「勘十郎・・・。どうしたのですか」
「母上。
信長は応えず、代わりになつが頭を下げる
「養徳院殿も。扱き使われているご様子ですね」
「いいえ、とんでもない・・・」
「どうしましたか、勘十郎。急の帰陣は聞いておりませんよ」
焦る市弥を他所に、信勝は至って冷静な表情で応えた
「我々の負けです、母上」
「負け・・・?」
「尾張守護・斯波岩竜丸義銀様直々の命令が下りました」
「何・・・ッ?」
信長は、尾張の『守護代』でしかない
『尾張の守護』はまだ斯波家であり、当主である義銀がそれであった
「末森は即刻、守山から撤退するように、と」
「
信長は、ここに居る
その信長が義銀を動かしたわけではないことは、市弥にもわかった
ならば、清洲に居る帰蝶か
だが、その帰蝶も動いた形跡はない
誰が
弥三郎、可成が解放されたのは、この日の夕刻前のことだった
信長、なつと共に末森を後にする
「斯波家が出て来たのは、若のご指図ですね?」
なつの問いに、信長はしらっとした顔で応えた
「まぁね。末森が守山から手を引かなければ、岩竜丸を動かせって平三郎に言っておいたんだよ」
「兄貴に?」
弥三郎が訊き返す
「お前の兄貴は、普段は地味な仕事に就いてるがな、手の内にゃぁ斯波があるんだぜ?大したもんだよ、土田の跡取りは」
「
信長に兄を誉められ、弥三郎は素直に嬉しくなる
帰りはニヤニヤして仕方なかった
「気持ち悪いぞ、弥三郎」
「だって」
今ではすっかり気心の知れ合った可成に腕を肘で小突かれ、よろよろとよたつくのを、信長となつは笑って見ていた
その一方で、信勝、市弥を中心とした末森派の動きが益々不穏なものへと変化して行くのを、誰も止められなかった
「う~ん。千載一遇の好機を、勘十郎はみすみす逃したか。今回は帰蝶も動いておらんのだろう?」
稲葉山城の一角で、義龍一派が集う
そこには当然のように利三の姿もあった
「はい」
義龍に応えるのは、反道三派の筆頭・安藤守就
「まだ幼いとは言え、斯波家当主は元服も済ませております。それに、代々尾張の守護を務めていた実績もあり、また、尾張の民の信頼も厚いまま。織田上総介があくまで守護代として斯波義銀の後見人以上の立場を失わない限り、民の目は斯波家に集まります」
「その斯波を動かして、末森を沈黙させたか。織田上総介と言うのは、中々抜け目のない男のようだな」
義龍の言葉に数年前、尾張小牧で見掛けたあの、奇抜な恰好をした青年を想い出す
同時に、押えようのない殺意も込み上げる
「その織田上総介様と繋がりを持てば、この美濃は磐石なものになります。若、ここは一つ、方向転換と言うのは如何でしょう」
口を挟んだのは、武井夕庵
「方向転換?」
夕庵の言葉に、義龍だけではなく美濃三人衆も首を傾げた
夕庵は、元々は道三の父の代から仕えていた男だ
道三寄りと見られても仕方がなかった
「どう言うことだ、夕庵」
「我々はそれまで、織田上総介様を潰すことを目的として参りました。ですが織田上総介様は、我々の期待を大きく外し、しかも予想を大きく上回る実績を残しつつあります。このまま上総介様と敵対した方針を固めるのは賢いのかどうか、私は疑問に想うようになりました」
「つまりは、上総介と手を組め、と?」
「はい」
「それは合点が行きません、武井様」
夕庵の言葉に耳を傾けようとする義龍を抑えるかのように、守就が口を挟んだ
「と、言いますと?」
「これまで我らは織田上総介を亡き者にするため、様々な対策を講じて参りました。岩倉は既にこちらの手の内にあります。上総介舎弟も、若に与することを誓約しております。なのに今更その上総介と和解だなどと、どの口で申せましょうか」
「しかし、現に我らが敷いた計略を、上総介様は次々と破っております。上総介様ご舎弟が帰蝶姫を口説くと意気込んだ割りに、何の成果も上げられなかったのが良い例ではありませんか」
夕庵の言葉に、同席していた利三の胸がドクンと鳴る
「それに関しては、私も得心が行かなかったことがあります」
「何でしょうか」
「上総介舎弟信勝が帰蝶姫を落とそうとして会談に持ち込んだものの、確かに失敗には終わりましたが、それは事前に知らせた者がいるのではありませんか?」
「と、申しますと?」
嫌に食い下がる守就に、夕庵の表情も険しくなる
「こう言ってしまうと角が立ちますが、武井様は確か、帰蝶姫様の傅役だったとか」
「確かにお世話はさせていただきましたが、それも姫様が幼少の頃の事。傅役と言うほどのことではございません。もしや私をお疑いに?」
「いいえ、そうではありません。言葉を誤ったのでしたら謝罪します。ですが当日、この美濃で探りを入れていた者の存在を確認しております」
「ほう、誰なんだ、それは」
夕庵ではなく、義龍が興味深げに聞いて来る
「わかりません。ですが、この美濃から出て尾張に向かった者とだけは確認しております。恐らくは、信長の手の内の者。となると、斎藤から織田に鞍替えした森三左衛門が疑わしき人物として浮上します」
その言葉に、一堂にざわめきが起こった
「森が美濃を探っていたと?」
「確たる証拠はございませんが、疑い出せば切がない」
それを言うなら去年の初め、信長が三河の村木砦を攻略した際、末森の信勝と接触したであろう証拠を残して来た守就も同じではないかと、夕庵は言いたくなった
だが、それを口にすれば今、自分に向けられている疑いが濃厚になるだけである
「ならば、一番真偽の掛けられる人物は私ではなく、森殿の舅である林殿が怪しいことになりますな。しかし、林殿はあの通り老齢に差し掛かったご老人。間者の真似事など、とてもではないが務まるとは想えません。確かに、疑い出せば切がない。しかし、疑うとなればここに居る者全てがその該当者とはなり得ませんか」
「武井様・・・ッ!」
自分まで疑いの目で見られるのかと、稲葉一鉄が片膝を立てて抗議しようとした
それを義龍が止める
「やめんか。内輪揉めを起したところで、帰蝶が喜ぶのは目に見えている。上総介舎弟と接触した事で、帰蝶も何らかの情報ぐらいは手に入れているだろう。それを白日の下に晒すような真似をしては、自分で自分の首を絞める結果になるだけだ。それでは勘十郎の二の舞になる」
「
いなされ、守就は大人しくなり、一鉄はばつが悪そうに膝を落とした
「
大人しくしていた利三が口を開く
「清四郎?」
「私は幼少の頃より、姫様の学友として、姫様が嫁がれる寸前まで行動を共にしておりました。もしも斎藤の情報を流した者が居るとしたら、私も疑われても仕方がない立場でございます」
「清四郎を疑う必要などない」
義龍はすぐさま利三を庇った
「清四郎は馬廻り衆として、この上ない働きをしている。帰蝶が嫁ぐ前に私に忠誠を誓っているのだ。それを疑うなど、私が許すものか」
「若・・・」
「それよりも、道三様にも目立った動きが」
空気を換えるように、夕庵が言う
「どうせ、私が土岐の落胤だと吹聴して回っているのだろう?好きにさせておけ。向うが言い触らせば言い触らしただけ、美濃の民は私に靡く。尾張の斯波同様、この美濃でも土岐の名は根深く息衝いている。それをどうすることなどできんのだよ」
「ならば、それを逆手に取って道三様を引退に追い込むと言うのは如何でしょう」
「できるのか?」
言い出した守就に、義龍は再び目を向けた
「民は慈悲深き領主を求めるものでございます。今の道三様には、それが足りない。最早神懸り的な統率力だけでは、人は着いて来ない。甘い汁でも飲まさない限り、は
「
そうだろうか
利三は守就の言葉に少しだけ、違和感を覚えた
神懸り的な統率力は、何より大事だ
「この人の為に命を賭けたい」と想える相手になら、人はどんな痛みも苦しみも乗り越えられる
それは、強い軍団の要素でもあり、何にも換えられない絆にもなる
道三への不信感が強まったのは、単なる『老害』に過ぎず、それが年々際立って来ただけのことではないのか、と、想った
美濃の民の反感を買わず、そして、神懸り的な統率力を持ち、この、頑固な美濃衆を束ねられる人物を、利三は一人だけ知っていた
それは、義龍ではない
自分でもない
この世に唯一の存在
その名を想い浮かべた時
同じ月、この直後、帰蝶の実兄・龍元と龍之が義龍の手によって殺害された
だが、この時の帰蝶にはその情報は齎されなかった
「吉法師様!」
清洲の玄関で、夫の無事を確認できた帰蝶は想わず駆け寄り、そして
「ぎゃぁ!」
小袖の裾を引っ掛けてしまい、見事に転んだ
「おいおい、帰蝶」
苦笑しながら起してやる
「
「ああ、ただいま」
「あらあら、私達のことは眼中にないんですね、奥方様」
離れたところからなつが声を掛けるも、耳にも届かないのか帰蝶の反応はない
「ないみたいですね」
可成が継ぎ、弥三郎も苦笑する
そんな二人を、身を案じていた其々の妻が出迎える
なつには愛息・恒興が迎えるが、「色気がない」と、なつは詰まらなさそうな顔をした
信勝が放った火により被災した町人への賠償は、全て信長が持つことになった
少し前なら困窮して財布の中が空になっても仕方がなかったが、貞勝の始めた商売により今のところ財源は豊かだ
町の復興にも惜しみない援助を出すことで、信長の評判は益々上がる
世間では「弟の尻拭いを兄がやった」程度にしかないだろうが、そんな些細な評価を何より嫌うのが信長なのだから、民への信頼を買うと同時に、弟にこの上ない屈辱を味合わせられたことが殊の外嬉しいらしい
ここのところずっと、信長の機嫌はよかった
機嫌が良いまま新年に突入する
新しい年は暮れ前に起きた織田家の、庄内川の事件もすっかり忘れられ、今までとは違う希望に夢を乗せて誰もが自由に、そして楽しげに過ごせた
年頭挨拶では一門が揃い、当然信勝の姿もある
この席で守山城主になった信時に、尾張豪族・荒尾善次の娘・千郷が嫁ぐことを発表した
「豪族とは言え、荒尾様は知多の大野城城主、佐治家のご子息。名門と言えば名門ですね」
「向かいには、伊勢」
つまり、何れ伊勢をも手に入れると言う、信長の願いが込められた婚姻であった
知多郡は伊勢湾を挟んで伊勢とは向かい合う地域に当たる
知多を味方に引きこんでおけば、伊勢を攻めるにしても陸路と水路の両方を制することも可能だった
打算の末の婚姻だとしても、織田家が尾張の外から出るには必要不可欠な政略でもある
また、佐治から荒尾を受け継いだ善次にとっても、織田が後ろ盾となってくれるのなら西尾張でもある程度の利権は生まれるのだから、断る理由も見付からない
「京へ向うには、近江、伊勢のどちらかを掌握しておかなければならない」
「吉法師様・・・。それは」
にっと笑う信長に、帰蝶も頬が緩んだ
夫の目の先に浮かんだ目標
それは、『上洛』
京に織田の旗印を立てるつもりなのだと、帰蝶は感じ取る
いよいよ夫が本腰を入れ始めた
そう想っただけで、心がソワソワして仕方がない帰蝶であった
正月の三ヶ日が過ぎた頃、那古野に残っていたお能が四番目の子を出産した
めでた続きの織田家では正月が過ぎても祝い事が絶えない
尾張の半分を手にしただけではなく、商業的にも楽市が成功し、斯波家からは全幅の信頼を寄せられるまでになり、あの義銀が将来は信長と共に戦場に立ちたいとまで言い出したと時親から聞かされた時は、想わず帰蝶に頬を抓ってもらうことまでしたほどだった
「斯波が尾張の覇権を殿に譲られたとなれば、いよいよ尾張制覇も現実を帯びて参りましたな」
「いや。これも全て、岩竜丸に対し変わらぬ忠義を尽くしてくれたお前と、斯波の兄弟達の面倒を一切見て来てくれたお能のお陰だ。感謝する」
ぺこりと時親に頭を下げる信長の隣で、帰蝶も頭を下げた
「特にお能は既に子が三人も居て、妊娠中も色々と不便だったでしょうに、それでも文句一つ言わず斯波兄弟達の世話をしていたと聞きます。本来なら私がせねばならぬことを、全てお能一人に押し付けたまま現在に至ります。何もしようとしない私を、どうか許してください」
「何を仰いますか、奥方様。岩竜丸様方の養育費の全てを出していただいて、こちらこそ礼を申さねばならない立場です。どうか、恐縮なさらないでください」
「ところで、生まれた子だが、男か?女か?」
「女、娘です」
少し照れ臭そうにはみかみながら、時親は応えた
「そうか。なら将来は、土田家に恥じぬ相手を探さねばならんな」
「そんな碌の高い家柄ではございません」
「何を言うか。もう立派な、斯波家の重臣だろう?」
「風前の灯火みたいな家ですが」
遠慮して言った言葉だろうが、言い得て妙であるため失笑しか生まれない
そうだろう
守護家と言っても、尾張の実質的な運営は全て信長の手に委ねられている
大きなことは相談しながらとしていても、それ以外のことは信長の独断で決められていた
派手なことをしていないだけで、そろそろ守護を織田家に移行させても良い頃合かと、朝廷でも見ているだろう
これこそ、帰蝶が求めていた『無血の下剋上』であった
父・道三がやったのと同じ手法では、何れ災いの種が生まれる
それでは意味がない
夫に、父と同じ轍を踏ませるわけにはいかなかった
「慌しく過ぎて行きそうですね」
「そうだな。喜六郎の事件は悲しいことだったが、あれがなければ世間は俺には傾かなかった」
「ですね。勘十郎様が大人しく事を見守っておられたら、世論も動くことはなかったでしょう」
守山城下を焼き払ったことは、常に優等生であり続けようとしていた信勝にとって『汚点』以外の何物でもない
弟の敵討ちに、何の関係もない守山の民を巻き込んだ愚行は、決して拭えないのだから
つまり、今後も続くであろうと想われていた信秀の後継者争いに、信勝の方から自滅した形になる
もしも最初に行動を取っていたのが信長であったらば、今頃この清洲に信勝が上がりこんでも誰も文句は言えまい
信勝はそれだけの失態をしでかした
「報復は、遣り方を間違えたら命取りになるだけです」
「そうだな。今回の事で俺も勉強になった」
身内同士のいざこざに民を巻き込めばどうなるのか、信長にとっては良い経験をしたとも言える
「守山の復興と、逐電された孫十郎様の捜索。やることはたくさんありますよ、吉法師様」
「おうよ」
「私も、微力ながら尽力させていただきます」
「う~ん、お前は別に・・・」
「吉法師様?」
自分は必要ではないのか
最早、なんの助力もさせてはもらえないのかと、絶望の淵に立たされる
そんな帰蝶に、信長は相変わらずの笑顔を浮かべ言い放った
「お前は今のまま、自由にしてくれ」
「
「想えば今までお前が黙って行動して来た結果、事が良い方向に進んでるってことに、やっと気付いてな」
「え・・・?」
「だからさ、お前は今のままで良いよ」
「どう言う・・・?」
「自由に空を舞う揚羽のままで良いってことだ」
「揚羽・・・?」
信長の言っていることが、さっぱりわからない
キョトンとした帰蝶を、信長はただずっと笑っている
首を傾げる帰蝶の髪に差された、あの鋼の飾り櫛が、日の光に反射してきらりと輝いた
まるで信長の言う、『舞う揚羽』のように
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力不足でございます
今回も、なんだか戦闘シーンが不十分でした
とは言え、信勝が守山の城下を放火して回った時に争いが起きたって記述が見付けられなかったので、まぁ、あったとしても押し問答程度のことだったのでは、と
信長は弟が火を付けてるのを見てただけのようですので、戦場面はなかったものとして扱いました
今回は自分なりに一気に書き上げられました(正確には『キーボードを叩く』)
ですがいよいよ長良川合戦突入です
この時も信長は戦ってはおりませんので(義兄・義龍に尻まくって逃げてますから)、「者ども、突撃ー!わー、待てー!引き返すぞー!」くらいなレベルのことしか書けないことを予言します(自分で言ってりゃ世話ないわ
相変わらず誤字脱字チェックのため、後から文章の一部が変更になる場合があるかと想われますが、ご了承くださいませ
とは言え、信勝が守山の城下を放火して回った時に争いが起きたって記述が見付けられなかったので、まぁ、あったとしても押し問答程度のことだったのでは、と
信長は弟が火を付けてるのを見てただけのようですので、戦場面はなかったものとして扱いました
今回は自分なりに一気に書き上げられました(正確には『キーボードを叩く』)
ですがいよいよ長良川合戦突入です
この時も信長は戦ってはおりませんので(義兄・義龍に尻まくって逃げてますから)、「者ども、突撃ー!わー、待てー!引き返すぞー!」くらいなレベルのことしか書けないことを予言します(自分で言ってりゃ世話ないわ
相変わらず誤字脱字チェックのため、後から文章の一部が変更になる場合があるかと想われますが、ご了承くださいませ
濃姫(帰蝶)好きの方へ
本日は当サイトにお越しいただき、ありがとうございます
先ずはこちらのページを一読していただけると嬉しいです→お願い
文章の誤字・脱字が時折混ざっております
見付け次第修正をしておりますが、それでもおかしな個所がありましたらお詫び申し上げます
了承なしのリンクは謹んでご辞退申し上げます
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更新のお知らせ
(02/20)
(10/16)
(11/04)
(06/24)
(03/25)
◇◇プチお知らせ◇◇
1/22 『信長ノをんな』壱~参 / 公開
現在更新中の創作物(INDEX)
信長 ~群青色の約束~
こんな感じのこと書いてます
カウント(0)は現在非公開中です
管理人の独り言も混じっております
[11/04 Haruhi]
[08/13 kitilyou]
[06/26 kitilyou命]
[03/02 kitilyou命]
[03/01 kitilyou命]
ゲームブログ
千極一夜
家庭用ゲーム専用ブログです
『戦国無双3』が絶望的存在であるため、更新予定はありません
◇◇11/19 Nintendo DSソフト◇◇
『トモダチコレクション』
おのうさま(帰蝶)とノブ(信長)が 結婚しました(笑
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『トモダチコレクション』
おのうさま(帰蝶)とノブ(信長)が 結婚しました(笑
祝:お濃さま出演 But模擬専… (戦国無双3)
おのれコーエーめ
よくもお濃様を邪険にしおってからに・・・(涙
(画像元:コーエー公式サイト)
オンラインゲームにてお濃様発見
転生絵巻伝 三国ヒーローズ公式サイト:GAMESPACE24
『武将紹介』→『ゲーム紹介』→『Exキャラクター紹介』→『赤壁VS桶狭間』にてお濃様閲覧可
キャラクター紹介文
「 絶世の美貌を持つ信長の妻。頭が良く機転が利き、信長の覇業を深く支えた。
また、信長を愛し通した一途な妻でもあった。」
(画像元:GAMESPACE24公式サイト)
勝手にPR
濃姫好きとしては、飲めなくても見逃せない
岐阜の地酒 日本泉公式サイト

(二本セットの画像)
夫婦セット 吟醸ブレンド(信長・濃姫)
本醸造 濃姫
カップ酒 濃姫®=爽やかな麹の薫り高い、カップとは想えない出来上がりのお酒です
吟醸ブレンド 濃姫® ブルーボトル=自然の香りのお酒です。ほんの少し喉を潤す程度でも香りが深く体を突き抜けます
本醸造 濃姫®=容量的に大雑把な感じに想えて、麹の独特の香りを抑えたあっさりとした風味です
今現在、この3種類を試しておりますが、どれも麹臭い雰囲気が全くしません
飲料するもよし、お料理に使うもよし
お料理に使用しても麹の嫌な独特感は全く残りません
奇跡のお酒です
何よりボトルがどれも美しい
清洲桜醸造株式会社公式サイト


濃姫の里 隠し吟醸
フルーティで口当たりが良いです
一応は『辛口』になってますが、ほんのり甘さも残ってます
わたしは料理に使ってます
清洲城信長 鬼ころし
量的に肉や魚の血落としや、料理用として使っています
麹の香りが良いのが特徴ですが、お酒に弱い人は「うっ」と来るかも知れません
どちらも一般スーパーに置いている場合があります
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