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さっき、父から叱られた
折より今川に向けての出兵に失敗し、撤退したばかりの織田軍を出迎えに行くと、開口一番、父に言われた
「ぶらぶら表を出歩くよりも、少しは三法師のように手習いに勤しめ」と
吉法師はまだ七つだった
遊びたい盛りだった
なのに、武家の跡取りとして生まれてしまったがために、普通の子供らと同じようには行かなかった
この時の吉法師には、その理不尽さが理解できない
理解できず、何故自分ばかりが叱られなくてはならないのかと、不貞腐れて局処の中庭をぶらついていた
「兄上~!」
幼い三法師が駆け寄って来る
「三法師、危ない!転ぶぞ!」
弟を心配する吉法師
案の定
「あ!」
石に躓き、三法師が転んだ
「ああーん!」
「三法師!」
泣き出す三法師に吉法師は慌てて駆け寄った
「大丈夫か?三法師。だから言ったじゃないか」
袴に土が着き、それを払ってやる
「怪我はないか?」
膝を捲り確認するも、少し赤くなっているだけで擦り切れた様子もなかった
「良かった、怪我はないようだな」
そこへ、耳を劈く母の声
「吉法師!何故、弟を泣かせてるのです!」
「母上・・・、違 」
「早く三法師を連れてらっしゃい!」
「は、はい、奥方様」
側に居た侍女が、慌てて庭に出る
「参りましょう、三法師様」
三法師を立たせ、母の許に連れて行く
「三法師、兄と一緒に居てはなりません。お前まで変わり者になってしまう」
「奥方様、若が」
別の侍女が市弥の言葉を遮ろうとする
「構うものですか。あのようなうつけ者、少しは己を自覚した方が良いんです。庶民と轡を並べたがるような大うつけなど、織田には必要ありません!」
「 」
母はいつも、そうだった
大人しい弟を可愛がる
自分は愛された記憶がなかった
どうして愛されないのか、色々考えた
弟のように愛らしい顔をしていないからだろうか、とか、勉強ができないからだろうか、とか
たった二つ違いなのに、その二つ違いが途轍もなく遠い
弟を連れて行く母の、その小さな背中に沿われた手が恋しかった
自分もあんな風に、母の手に触れたかった
だけど、許してもらえなかった
「若」
ぼんやりと、母達の背中を眺めていた吉法師に、なつが声を掛けた
「美濃の親戚から、五平餅を送ってもらいました。勝三郎と一緒に召し上がりませんか?」
「食べる!」
さっきまでの淋しげな表情など掻き消すかのように、吉法師は満面の笑みを浮かばせ、なつの許に駆けて行った
局処の庭の片隅で勝三郎と二人、なつを挟むようにして七輪を眺める
その網の上に置かれた五平餅から立ち上る、香ばしい香りを嗅ぎながら、吉法師はなつに聞いた
「なつ」
「はい、何ですか」
「わしは、変わり者か?」
「ご自分では、どう想われますか?」
「 普通だと想う」
「なら、普通なのでしょう?」
「でもみんな、わしを変わり者だと言う」
「みんなが変わってるんじゃないんですか?」
「 」
なつの返事に、吉法師は目を丸くした
「 そう、なのか・・・?」
「変わり者は大抵、他人を変わり者と言います。それは、相手を理解できないからです。相手を理解できないのは、自分が変わっていることに気付かないからです。誰が言ったのか存じませんが、若は変わり者なんかじゃありませんよ」
「そうか・・・」
「ええ、そうです」
「そうだな」
なつの応えに、吉法師は満足げな顔をして笑った
「まだかな、まだ焼けないかな」
「味噌を着けたらもう一度焼きますからね、あと少しですよ」
「うん!」
吉法師は、なつが大好きだった
いつも自分の味方をしてくれるなつが、大好きだった
なつの息子の勝三郎も、大好きだった
自分を本当の兄のように慕ってくれるから
だけど、本当は
吉法師は、三法師とも仲良くしたかった
なのに、母がそれを邪魔する
どうして邪魔をするのか、自身、まだ幼い吉法師にもわからなかった
そんな庭の片隅の光景を、縁側から三法師がじっと見ていた
「参りますよ、三法師様」
連れ添っていた侍女が、三法師の手を掴んで歩き出した
三法師は何度も振り返り、兄の姿を見ていた
「かか様」
「お帰りなさい、三法師。お風呂はどうでしたか」
「三法師、食べたい物があります」
「何ですか?何でも仰い。何でも与えてあげますよ。何が食べたいの?」
母の言葉に気を良くした三法師は、元気いっぱいに声を張り上げた
「五平餅!」
「五平餅?」
侍女が間に入った
「お庭で池田の方様がさっき、焼いてらっしゃったんです。三法師様が湯殿にゆかれる前」
「 」
その途端、さっきまで機嫌の良かった市弥の表情が険しくなる
「三法師。あなたは織田の御曹司なのですよ?御曹司がそのような庶民の食べ物に、関心を持つんじゃありません。全く。池田は何を考えてるのかしら。誰か行って、池田に注意をして来てちょうだい!そんなもの、今度から台所でやってと!」
市弥の張り上げる声に驚いて、数人の侍女が慌てて部屋を出た
「三法師。あなたは吉法師とは違うのよ。将来、立派な侍になるの。それらしい教養と仕来りを覚えてちょうだい。吉法師のように、ならないで」
母は三法師をぎゅっと抱き締めた
優しい温もりと、香の香りが三法師を包み込む
吉法師には決して与えてはもらえない物を、三法師は持っていた
与えられる者はその意味を知らない
当たり前だと想っているから・・・
吉法師は周りの大人の目を盗んで、那古野の城下町に出るのが好きだった
町に出ると言うよりも、立派な大人を出し抜くことに喜びを感じている
「若~!若~!」
少し年増に差し掛かった侍女が自分を呼ぶ声がする
吉法師はさっと縁側の下に潜り込み、身を隠した
「若!どちらですか!お手習いの時期ですよ!若ったら!」
その侍女の声が遠ざかるのを、吉法師は息を殺して待っていた
「お絹は口喧しいからな、見付かったら夕餉を抜かれるぞ」
小さく口の中で呟く
お絹の足音が頭の真上に差し掛かり、吉法師の心の臓も激しい鼓動を打ち鳴らす
「若!」
お絹は苛立ちの余り、廊下の板をドスン!と踏み均した
その音がまともに頭の上でするものだから、吉法師は耳の膜が破れそうなほどの激痛と、心の臓が破裂してしまうような驚きに見舞われる
「ほんっとに毎日毎日、どこかに行ってしまうんだから。池田様が下手に庇うから、周りは良い迷惑だわ」
吉法師が自分の足の下に居るとも知らず、お絹は愚痴を零し立ち去った
自分の所為で大好きななつが悪く言われるのは悲しいが、兎に角これで難を逃れた
「いけね。急がないと、米屋が帰っちまう」
お絹が完全に消えるのを確認すると、吉法師は蜘蛛の巣だらけになった体を払いながら駆け出す
その吉法師の背中を、三法師が声を掛けた
「兄上」
「 ッ」
見付かった・・・と、吉法師は驚いた顔で恐る恐る振り返る
「どこかにお出掛けですか」
「三法師」
「三法師も連れてってください」
「連れてってやりたいけど、そうしたら母上に叱られるぞ?」
「構いません。三法師だって、たまには町に出たいです」
「そうだなぁ・・・」
三法師の下の弟や妹は、居るには居るがまだ遊び相手としては不十分だった
吉法師や三法師の上に兄や姉は居るが、母の市弥が関わりを持たせたらがらない
産んだ母親の身分の低さが原因だった
自分も母の子ではなかったら、同じように疎外されていたのだろうか
今も目の敵にされているのにそれでも、吉法師は自分を産んでくれた母だから、嫌いにはなれなかった
いつかわかり合える日が来ると信じていた
「一緒に連れてって下さい」
可愛い弟の頼みに、吉法師は嫌だとは言えなかった
「じゃぁ、少しだけだぞ?少し町を歩いたら帰るぞ?」
「はい!」
兄の返事に三法師は嬉しさの余り、大きな声で応える
「バカ!誰かに気付かれちまうだろ」
吉法師は慌てて三法師の口を手で押えた
吉法師が三法師を連れ向かった先は、台所の搬入口だった
ここから普段自分達が口にする食材が運び込まれている
「若様」
吉法師を見付けた米問屋の、馴染みの使用人が声を掛けた
「すまん、待たせたか」
「いいえ、然程ではありませんよ」
中年に差し掛かった男は、客商売向けの清々しい愛想笑いを浮かべ応える
「兄様、どうするんですか?」
「ん?それはな、城を出るための作戦だ」
「作戦?」
「若様、こちらは」
台所どころか、城のあちこちをうろうろしている吉法師を知らない者は居ないが、局処から滅多に出ない三法師を知っている者は少ない
米屋の使用人の男は、見慣れぬ三法師を聞いた
「ああ、わしの弟の三法師だ」
「若様の弟君様でしたか、それは知らずご無礼を」
「そんなことより、この三法師も一緒に頼めるか?」
「え?お二人ですか?」
「見付かってしもうた。追い返せば母上に気付かれるしな、最近は駿府との争いで父上も気が立ってる。できる限り隠密に事を進めたい」
「はぁ・・・」
だったら大人しく城の中に居ろよ、とは、この可愛らしい若様には言えなかった
「少し窮屈ですよ?構いませんか?」
「ああ、構わん」
「では、荷台の方へ」
使用人の男が指し示す先に、米を運んで来た荷台が置かれていた
その台座の上には小さな樽がひとつ、積まれている
「兄上、この樽はなんですか?」
「米糠を詰めていた物だ。香の物を作る時、米糠が必要だろ?」
「そうなんですか。米糠って?」
「知らないのか?」
「はい」
「 」
三法師の返事に、吉法師はぽかんとした
武士として必要な教育は受けているだろう三法師が、米糠を知らないとは驚きである
いや、寧ろ偏った教育しか受けていないからこそ、米糠を知らないのだろうか
「米の周りに付いている黄色い粉のことだ。これが米を乾燥から守ってる」
「そうなんですか」
「それに、栄養の塊だぞ?香の物が美味いのも、米糠のお陰なんだからな」
「そうですか、勉強になりました」
米糠一つで踏ん反り返り、兄らしい虚勢に胸を張る吉法師と、そんな兄を素直に感心する三法師の遣り取りは、今が戦国の時代だと言うことをほんの少しでも忘れさせてくれるような、そんなほのぼのさがあった
微笑ましく眺めている男に、吉法師は声を掛ける
「おっと、急がないと誰かに気付かれてしまう。早く出よう」
「そうですね」
「三法師、来い」
荷台に上がりながら、吉法師は三法師に手を差し出した
「はい、兄上」
ひとつしかない小さな樽に、ふたりで押し込む
樽の中で吉法師が三法師を抱き抱えるように収まっている
「兄様」
「なんだ?」
「臭いです・・・」
「仕方ないだろう?城を出るまでの辛抱だ。少し我慢しろ」
「はい」
素直に頷く三法師の頭を、吉法師は優しく撫でてやった
その頃局処では、三法師の姿がないことに市弥が騒ぎ始めていた
「三法師はまだ見付からないの?!」
「も、申し訳ございません・・・ッ!」
「今、総員を以って探しております」
「早く見付けなさい!」
「は、はい!」
市弥の苛々に振り回され、侍女達は城中を走り回される羽目になる
「三法師様ー!」
「三法師様ー!」
中には不平を口にする者も居た
「全く。子供がどこかに行ったって言うだけで、これだけギーギー言われたんじゃ、堪ったもんじゃないわよ」
「本当。所詮、金で買われた女だもの。粗相が起きないよう必死なのよ」
「不始末でもあれば、実家に帰されてもおかしくない立場だものね」
「だからって、こっちに八つ当たりするのも止めて欲しいわぁ」
そう言い合う侍女の後ろから、お絹が声を掛ける
「あなた達」
「 ッ」
侍女達はビクンと震えて振り返った
「下らない噂話に花を咲かせている暇があるのなら、三法師様を見付けなさい」
「は、はい!お絹様!」
走り去る侍女達の背中に、お絹は溜息を漏らす
「全く。人の口に戸は立てられないと言うけれど、本当ね」
局処で悪口を言われるようになれば、お仕舞いだ
尚更、市弥は神経を尖らせているのだろうと、お絹は感じた
金で買われた
表現は辛辣だが、目的としては間違っていない
美濃と尾張の境界線でもある木曽川の制河権は、美濃の土田家が握っていた
木曽川は物の流通の運搬には欠かせない場所であり、美濃との政治交渉の場としても重要な位置にある
その木曽川を制するのが美濃・岐阜屋と土田家であった
しかし岐阜屋は大店とは言え一般家庭であるため、そこから嫁をもらうのに一族の殆どが反対した
『商人』と『武家』の隔たりがあるからだ
それを理解できる者は、この時の織田には一人も居なかった
代わって土田家は小さいとは言え一応は氏族でもあるため、反対する声も少ない
織田がこれから尾張で勢力を揮うためには、『金を持っている』後ろ盾が必要だった
本家織田や分家、今川とも争わなくてはならないためだ
戦をするには金が要る
金を産んでくれる家を持つ女が必要だった
だから信秀は、土田家から市弥をもらった
今居る妻に金を積ませ、実家に帰らせてまで
そう言った経緯があるため、織田家の侍女達からの受けが悪かった
それが市弥を苛立たせる原因の一つなのかも知れない
自分は家から「織田に嫁に行け」と言われただけである
なのに、「前妻を追い出した」と謂れのない中傷を受けているのだから、尚更産んだ我が子に期待し、織田を今よりもっと大きな家にしてやると言う意地を持っても、責められるものではなかった
家を大きくできた女と、逆に潰してしまった女とでは、世間の評価も当然違う
望まれた結婚ではあっても、望んだ結婚ではなかったが故に、余計市弥を意固地にさせてしまっていた
加えて、女にだらしのない男を夫に持つと、女としての感情も良くはない
これで夫婦仲が良好であったなら、家内も穏便だっただろう
市弥にとって良くない条件が揃ってしまっているがため、自分の期待通りにはなってくれない吉法師への不満も尚更である
「吉法師は居たの?」
「それが、若様もお姿が見えず・・・」
おずおずと侍女が答える
「まさか吉法師が三法師を何処かに・・・?」
嫌な予感がして仕方がない市弥であった
「若様、お城から随分離れましたよ。そろそろ表に出ても大丈夫じゃないですかね?」
「そうか」
外から声を掛けられ、吉法師は樽の中から返事する
しばらくして蓋がごとごとと動き、最初に三法師が出て来た
その三法師を米屋の男が抱き上げ、樽から出してやり、その後を吉法師が自力で出る
ずっと息苦しい想いをしていた三法師は、呼吸する空気が一気に躰の奥へ流れ込むような感覚になり、正しく新鮮な想いに包まれた
深く深呼吸し、初めて踏む那古野の町の土の感触を楽しむように飛び跳ね、その光景に吉法師は笑った
「兄様はいつもこうやって、お城の外に出てるんですか?」
「またにだぞ?毎回これだといつかばれるからな、色々作戦を立てるんだ」
「そうなんですか」
「それじゃぁ、若様、私はこれで」
と、二人の間に米屋の男が入る
「ああ、すまなかったな。また頼む」
「はい、それでは失礼します」
吉法師と三法師の其々に頭を下げ、男は荷車を押して店への帰路に着いた
「さぁて。三法師、何処に行きたい?どこにでも連れてってやるぞ」
「わーい!」
幼い三法師にとってこれは、冒険以外の何物でもなかった
初めて見る光景、初めて見る店先、初めて見る町民
局処の奥では決して目にすることのできない世界が、ここにはある
兄の吉法師に手を繋がれ、三法師はワクワクする気持ちを抑えられず、時には自ら兄の手を引いて走り出すこともあった
「兄上、こっちこっち!」
「急に走るな、三法師。転んだらどうするんだ」
「早く早く!」
兄の忠告も耳に入らないほど、今の三法師は目にするもの全てが楽しくて仕方がない
生まれて一度も、那古野城の外から出たことがないのだから
出させてもらえなかったのだから
古着市も干し魚の佃煮屋も団子屋も
金物屋の軒先ですら三法師は、目を輝かせて見て回った
局処の文机の前で手習いするのも必要だろう
だけどそれよりもっと大事な物が、世間にはあった
それは誰かに教わるものではなく、自分の目で見て学ぶべきものであり、学ぶには『自由』が必要だった
吉法師は母からの愛を得られぬ代わりに『自由』を手に入れ、三法師は母の愛を得る代わりに『自由』を失った
どちらが幸せなのかは、誰にもわからない
本人達にもわからないものを、誰が理解できようか
「兄様!」
遂には兄の手を離し、自分の足で走り出す三法師を、吉法師は止めようとはしなかった
今のこの瞬間が、三法師にとって必要なことだと子供ながらに感じたから
昼餉が来ても、三法師の姿は見付からない
「どこを探しているの!隅々まできっちり探しなさい!」
市弥の怒号が響く
三法師は自分の期待に応えて賢く育ってくれている
その大事な三法師の姿がないのは、市弥にとって不安この上ないものだった
当りたくなくとも、つい侍女達に当り散らしてしまう
『立派な子供』を産むか、『不出来な子供』を産むかで評価は別れ、吉法師と三法師はその両極端に位置していた
我が子を理解できない親は大抵、自分の範疇を超えていると『変わり者』扱いしたがる
理解するよりも、排除する方が簡単で楽だからだ
「早く三法師を探し出して!手習いの暇がなくなってしまうわ!」
吉法師が期待に沿わない育ち方をしてしまったなら、次の子である三法師に希望の全てを寄せてしまうのは、親として仕方がないことだった
これが三法師を雁字搦めにしているとは市弥自身、気付いていない
市弥の怒鳴り声は外に居たなつの耳にも届く
当然、側に居た勝三郎も聞いていた
「母上・・・」
自分を心配そうな顔で見上げる勝三郎に、なつも苦笑いで宥める
「若様ったら、またどこかに行ってしまったようね。しょうがないお子」
「帰って来たら、奥方様に叱られないでしょうか」
「そうならないよう、母からも頼んでみますね」
「はい、母上」
「三法師、食べたい物はないか?」
「あります」
「何だ?」
「五平餅!」
「五平餅?」
「この間、兄上様が食べてらしたのを見てました」
「そうだったのか。声を掛けてくれれば良かったのに」
「でも、小雪が一緒でしたから・・・」
小雪は母の侍女である
母から三法師を自分とは関わらせないよう、言い付けられているのだろう
「そうか。じゃぁ、行くか」
「団子屋ですか?」
「そこよりももっと美味い店があるんだ。三法師、付いて来い」
「はい!」
元気いっぱいに走り出す兄弟
端の目から三法師の方は良家の坊ちゃまに見え、吉法師はその召使のような恰好に見えなくもない
そんな下らない世間の目など気にもせず、吉法師は三法師を連れ馴染みの店に走った
「権兵衛!」
店先で店主の名を叫ぶ
「兄上、ここは?」
吉法師が連れて来たのは、団子屋ではなく乾物屋だった
美味しそうな匂いのするものは見当たらない
キョトンとする三法師に説明しようと振り返った吉法師に、店主の返事が聞こえる
頭に白い物が混じった小太りな男が出て来た
「これは吉法師様。今日は随分とお早いですな」
「ああ、権兵衛。五平餅を焼いてくれないか」
「五平餅ですか?はい、少々お待ちください」
権兵衛はニコニコして、店の奥に引っ込んだ
「兄上、どうしてここに五平餅があるんですか?団子屋じゃないですか?」
「団子屋にあるのは、もう焼いてる餅だ。ここはまだ焼いてない餅を置いてるんだよ。五平餅ってのは、米を半分乾かしてるから、乾物屋にも置いてるんだ」
「乾物屋って、ここのことですか?」
「そうだ。三法師、自分の目で見てみろ。人に教わるより、自分の目で見て知ったことの方がずっと長く覚えていられるし、理解もできる。乾物屋に何が置いてあるか、じっくり見てみろ」
「はい、兄上」
三法師は兄の言葉どおり、店の中に入って陳列している商品を一つ一つじっくり眺めた
乾かした小魚、スルメもある
海草も当然置いてあるし、しなびた椎茸もあった
父達が戦に持って行く糒(ほしいい)も、大きな樽に入れられ並んでいた
「これって、米屋にだけあるもんじゃないんだ。それだと、米屋の独占商売にはならないな。でも、米屋と乾物屋と言う店が争っているって言う話も聞かない」
一人でぶつぶつと呟く三法師は、素直に吉法師に聞いた
「兄上」
「何だ」
「どうして乾物屋に糒があるんですか?これって米屋で扱っているものじゃないんですか?どうして米屋と乾物屋は糒を巡って争わないのでしょうか」
「糒は米屋が米を乾物屋に卸し、乾物屋が干して俺達に売る。これが流通ってもんだ。米屋は乾物屋に米を売って儲け、乾物屋は俺達に糒を売って儲ける。米屋は糒を売れない分儲けは減る。だけど、米を干すだけの場所の維持費や人件費は削れる。乾物屋は米を干す場所の維持費と人件費を負担している分、俺達から儲けを取れる。こうやって世の中は巡ってるんだ。これが、この世の仕組みだ」
「そうなんですか・・・」
難しい話だろうに、賢い三法師はきちんと理解できたのか、商人と武家のあり方をもこの店で学ぼうとしている姿勢だけは見て取れた
そんな三法師が将来、自分の片腕として働いてくれたら、織田はきっと磐石なものになると吉法師は確信する
母はきっと反対するだろうが
「お待たせしました」
奥に引っ込んでいた権兵衛が皿を乗せた七輪を抱えて出て来た
「じゃぁ、焼きましょうか」
「ああ、頼む」
吉法師を出し抜き、三法師が店先に七輪を置いた権兵衛の側に駆け寄った
「お坊ちゃんは五平餅、お好きですか」
その身形から良いところの子息であることはわかるのだろう
権兵衛は愛想の良い笑顔を浮かべ、三法師に聞いた
「まだ食べたことがないんだ」
「なんと、まだ食べたことがないとは今までの人生、損をして来られましたな」
「そうなのか?」
「こんな美味しい物を食べたことがないとは。しかし、今日からの人生、変わりますぞ?」
「え?」
「権兵衛、大袈裟なことを言うな。三法師は純粋なんだから、直ぐ信じてしまうだろ」
と、吉法師が苦笑いで忠告する
「ああ。美味しかった!」
まだ小さいためにそれほどの量は食べられなかった
それでも満足したかのように笑顔で町を歩く三法師を、少し後ろから付いて歩く吉法師もまた、満足げな顔で眺めていた
「兄上、これからどうされるんですか?もうお城に戻られるんですか?」
「お前はどうしたい?帰りたいか?」
「まさか!もっと色んな物を見て回りたいです」
「そうか。じゃぁ、そうだな、少し歩くけど行ってみるか」
「何処へですか?」
「賑やかなとこだ」
吉法師はニカッと、弾ける笑顔で応えた
「行けー!」
大勢の村人が入り乱れ、其々思い思いの掛け声を投げる
「それ!掬い上げろ!」
「踏ん張れ踏ん張れ!」
「今だ、押せー!」
村の鎮守の社の広場で、体格の良い男同士が組み合い、相撲を取っていた
今は奉納相撲の時季ではないが、時折村の興行として開く場合もある
相撲見学の客目当てに露店が並び、売り上げの何割かが村に入り、それを目的として開催するのだ
また、賭け相撲も行なわれており、自分の贔屓の相撲取りに対する札を買い、勝てば賭けに応じた賞金が返って来る
強い者ほど賞金が少なく、弱い者ほど高くなっていると言うのも、人間の心理を上手く突いた遣り方だった
だからこそ人は見返りを求めて賞金の高い力士を応援する
故に白熱した応援合戦が展開されていた
ここは比較的人口の多い村であるため、人の集まりも良い
吉法師は今日が相撲のある日だと知っていて、三法師を連れて来たのだった
「どうだ?三法師。楽しいか?」
「はい!兄上!」
さっき五平餅を食べたばかりの三法師の手には、串団子が握られている
半刻ほど歩いた所為か、小腹が空いたのだと言う
その三法師に串団子を買ってやり、吉法師は注意した
「良いか?三法師。串を持ったまま走り回ったりするなよ?もし転んで串が刺さったら痛いだろう?」
「はい・・・」
想像したからか、三法師の顔が悲しげに歪む
「食べ終わったら、わしに渡せ。後で捨ててやるから」
「はい、わかりました、兄上」
そう言い聞かせたのだが、初めて見る相撲に我を忘れたのか、三法師は半分食べた串団子の串をつい振り回してしまった
その串の先が隣に居た若い男の太腿にポンと当る
「いってぇ!」
実際、それほど痛くはないだろう
男は古い股引を履き、太腿の部分はきちんと守られていたのだから
それでも、相手が年端も行かない子供だろうが、虫の居所が悪かった男には通じるものではない
「このガキ!何しやがる!」
男は三法師の細く小さな手首を掴み上げ、周りを見渡した
当然、周囲は騒然とし、当人である三法師も驚きの余り泣きそうな顔になった
「弟に何をする!」
吉法師は自分の何倍もある男の手を掴み、三法師の手首を離そうと握り締めた
「何をするのはこっちの言う言葉だ!てめぇの弟が、俺の脚にこの串を刺しやがったんだよ!」
「三法師が?本当か?三法師」
「 あ・・・、当っただけです・・・!」
「弟はそう言ってる。だけど、刺したと言うのならわしが謝る。子供のこと故、許してもらえるとありがたい」
「ふざけんじゃねぇよ?痛い目に遭わされたんだぞ?すまんも言わずに許せってか?おりゃぁ仏様じゃねーんだよ!」
「 そうか・・・」
吉法師は男の手を離し、なんの躊躇いもなくその場で土下座した
「すまんかった。弟の無礼、どうか許してくれ」
弟の方は武家の御曹司と言う身形だが、弟の代わりに土下座している少年はそんな雰囲気にない
これが男を調子付かせてしまったのか
「それが謝る態度か?あぁ?」
男は土下座する吉法師の後頭部に草鞋の裏を押し付け、踏んだ
「兄上!」
大好きな兄にこんな仕打ちをする男が許せなかった
三法師は、それでも男の脚を払わず、自分のために許しを乞うてくれる吉法師に悪いと言う想いが溢れ、大きく泣き出してしまった
それを見かねた周りの大人達が間に立つ
「おい、若いの。相手は子供じゃないか。好い加減勘弁してやったらどうだ」
「そうだぞ、みっともないじゃないか」
「何をぉ?てめぇらはかんけーねーだろ。すっこんでろ!」
「大の大人のすることじゃねぇよ、その足、降ろしてやんな」
「チビの手も、離してやれよ」
「うっせぇ!」
周囲が一斉に敵に回ったからか、男は尚も意固地になって吉法師の後頭部に足をぐりぐりと押し付ける
「兄上は悪くない!ああーん!ああーん!」
泣きじゃくる三法師が気になった
だけど、足を払えば三法師の許しはもらえない
吉法師は地面に拳を押し付け、屈辱に耐えた
その足が、急にふと軽くなる
「なっ、何しやがる!」
男の声が上がったのは、その直後だった
「好い加減にしねぇか。子供相手に虚勢張って、何が楽しいってんだ」
見かねた力士が吉法師と三法師を助けようと、男を軽々と持ち上げていた
顔を上げた吉法師は、その光景にぽかんとする
「勇気のあるにーちゃんだね。感心したよ」
「別に、誉めてもらうようなことじゃ・・・」
自分達を助けてくれたのは、賭け相撲でも人気のある甚作と言う若い男だった
大きさとしては優に五尺を超える高さだろうか
「助けてくれて、ありがとう」
吉法師は甚作を見上げ、礼を言った
三法師はまだ泣き止まない
「いいや、礼には及ばないよ。そんなことよりも、あんちゃんのために泣いてくれた弟を、大事にしてやれよ?坊主もだぞ?お前のために体張ってくれたにーちゃんを尊敬しろよ?」
「う、うん・・・」
泣きながら返事する三法師を、甚作は笑いながらその大きな手で撫でてやった
そんな微笑ましい光景を、恥を掻かされたさっきの男が物陰から盗み見ている
途轍もなく邪悪な目付きだった
予期せぬ事件は起きたが、それでも助けてくれた甚作の笑顔に救われ、二人は楽しい気分のまま帰路に着けた
その最中、急に三法師の足取りが遅くなった
「どうした?三法師。疲れたか?」
「はい・・・、少しだけ」
「はしゃがせ過ぎたかな。どれ、負ぶってやろう、来い」
「はい、兄上」
しゃがむ兄の背中にしがみ付き、三法師はぐったりと体を預けた
その三法師の体温が高い
「三法師?」
見えはせぬが吉法師は、後ろの三法師に振り返る
名を呼んでも、三法師の返事はなかった
「大変だ」
吉法師は慌てて城への道を急いだ
「まだなの?!」
市弥の苛々は頂点に達していた
もう夕焼けがやって来る
半日見付からない三法師への心配の余り、無実の侍女を張り倒さんばかりの勢いで食って掛かっている
「お前達はどこを探しているの!城の外も探しに行ったの?!」
「そ、そこまでは・・・」
「揃いも揃って、無能ばかりね!早く探してらっしゃいッ!」
「は、はい・・・!」
バタバタと部屋を出て行く侍女達を見送り、なつが市弥の部屋の外に膝を落とす
「奥方様」
「池田?どうしたの。三法師を見付けたの?」
「いえ、そうではありません」
「だったら、お前も手伝いなさい!」
「奥方様。若もいらっしゃいません」
「知ってるわ。でも吉法師はいつものことでしょう?あの子は野良猫のようにどこかにふらりと出て行って、野良猫のように戻って来るけれど、三法師は違うのよ」
「もしかしたら、若とご一緒なのかもしれません」
「わかってるわよ!だから探させているんでしょう?!」
「奥方様、若がご一緒でしたら安心です。どうか戻って来るのをお待ちいただけませんか。こんなに大騒ぎをしてしまっては、周囲の者も不安になってしまいます」
「池田。側室の分際で、私に意見しようと言うの?」
「そうではありません。ただ、子供には遊びの時期も必要です。それを取り上げてしまっては、子供と言うのは大きく成長しません」
「じゃぁ、自由気侭な吉法師は大きく成長しているのかしら。武家のことも織田のことも考えず、自分勝手にふらふらしているようにしか見えないのだけど?」
「若は若なりに色々考えてらっしゃると想います。ですから奥方様、若と三法師様がお戻りになられても、どうか叱らず、今日一日の出来事を聞いてあげてくださいませ」
「黙って!お前の言うことは一々癇に障るのよ。自分が一番理解しているみたいな顔をして、私に偉そうに説教する。それで満足なの?私より上に立ってると想いたいの?殿の寵愛を独り占めしているとでも想っているのッ?!」
「そんな・・・・・・・・」
矢継ぎ早に自分を責める市弥に、なつも気落ちした
何より女に対し情愛の念など持たぬ信秀に、どの女が一番かなど、基準を求めること自体が間違っている
それすらわからぬわけでもないのに、今の市弥にはなつの言葉すら遠い
「私は、ただ・・・」
どう言えば市弥を怒らせずに話ができるのか、なつは懸命に考えた
そんな時、侍女がやって来る
「奥方様、三法師様がお戻りになられました」
「三法師が?!」
その言葉に市弥は部屋を急ぎ出る
ところが、戻った三法師は熱を出し、自室に布団を敷きぐったりとしていた
三法師の部屋の庭には吉法師がしょんぼりして立っている
「 お前と言う子は・・・・・・・・」
市弥は悲しさに眉を寄せ、吉法師の頬を力いっぱい引っ叩いた
女とは言え、大人の力である
子供の吉法師の躰は簡単に倒れた
「三法師を殺す気ですかッ!」
「わ、私は、そんな・・・」
「まだ小さいのよ?どうしてこんなに暗くなるまで引っ張り回すの。どうしてお前と言う子は、弱き者への配慮に欠けるの・・・ッ!」
「 」
言い返してやろうかと想った
だけど、吉法師はそれをやめた
母の目が、涙で光っていたからだ
悲しいんだ、と、想った
三法師は疲れで熱を出した
それは自分が三法師に対して、思い遣ると言う気持ちに欠けていた所為だと想った
初めて城の外に出たのだから、外界の刺激は三法師にとって軽い物ではなかったのだろう
それを知らず町を歩き回り、ここから相当離れた村にまで出掛け、帰りにはすっかり日も暮れてしまっていた
自分が連れ回した所為で幼い弟は熱を出し、布団の中で苦しんでいる
自分の責任だと想った
「 ごめんなさい・・・」
小さく呟き、吉法師は立ち上がると庭を去った
その吉法師の背中を、市弥は変わらず悲しそうな目をして見送る
知って欲しかった
わかって欲しかった
長男として生まれた者の『責任』と言うものを
自覚して欲しかった
自分が織田を継ぐのだと言うことを
なのに吉法師は、そんな自分の想いなど知りもせず、自由に勝手に飛び回る
挙句、将来の補佐ともなろう三法師を、疲労で寝込ませるまでのことをしてしまった
楽しいことばかりを考えていては、立派な当主にはなれない
わかって欲しかった
どうして自分がつらく当るのかを
まだ幼い吉法師に、わかって欲しかった
でも、まだ幼い吉法師には、その想いは届かなかった
それから三法師の、母の監視の目が厳しくなった
兄とも気軽に声を掛け合えない状態になってしまった
季節が流れ、なつが父の子を宿した
勝三郎も将来池田家を再興せねばならない身となり、局処で三法師のように武士としての教育を受けるため、吉法師は遊び相手を失ってしまった
今日も城を抜け出し、自由気侭に歩き回る
ふと甚作のことを想い出し、相撲の興行はないかと訊ねて歩いた
「力士の甚作?ああ、あの人なら殺されたよ」
「 え・・・?」
あの時、相撲を興行していた村にまで行き、どこかでやってないかと聞いてみたら、想像もしていない返事が返って来て、吉法師を戸惑わせた
「ど、どうして・・・」
「何ヶ月前のことか忘れちまったけどね、破落戸に刺されて死んじまったよ」
「そんな 」
一瞬、あの時三法師が厄介を起した男を想い出す
顔までは覚えていないが
その村人の話しに因れば、夜、一人で歩いているのを後ろから襲われたのだと言う
どんな巨漢も背後からいきなり襲われては一溜まりもない
どうして甚作が殺されなきゃならないのか、吉法師にはわからなかった
この世の理不尽さを想い知らされたような気がした
落ち込んだまま城に帰る
出迎えてくれる者の中に、今の自分の想いを話せる相手は居なかった
新しい年が来て、なつが女の赤子を産んだ
名はありふれたものだが、『稲』と名付けられた
勝三郎は父親違いの妹の誕生に、嫌でも親離れをしなくてはならなくなった
それと同時に、吉法師もなつから独立せざるを得ない状況になる
自分を庇ってくれる者の喪失は大きかった
今日も手習いをさぼって城を抜け出す
城では吉法師を探し回るお絹の声が響き渡る
市弥の限界も超えていた
「吉法師を独立させてください」
そう、信秀に嘆願した
「あの子は、あのままでは自分のことしか考えられない愚か者になってしまいます。うつけならうつけでも構わない。だけど、他人を思い遣れる子になってもらわないと、家臣の心は掴めません。どうか、吉法師に城を与え、考える暇を与えてやってくださいませ」
しっかりした子に育って欲しい
そう想い、突き放して来た
自分の育て方が間違っていたのか
愛情を注げば甘ったれた子になってしまう
家を支えられるだけの強い子に育って欲しかった
だから、態と冷たい態度で接して来た
それが全部、裏目に出てしまっている
そうだろう
自分を庇ってくれる者の存在が、吉法師を甘い考えの持ち主へとさせてしまっていたのだから
その者が誰かなどは言うに及ばないが、今更責めたところでどうにかなるわけがない
だったら、自分が領主なのだ、城主なのだと言う自覚を持ってくれさえすれば、織田の跡取りとして恥しくない人物に育つだろう、そう考えた
その結果、市弥の考えを信秀は飲み、吉法師には生まれ育った那古野の城を与えられることになった
代わりに信秀らは末森に城を建て、そちらに移り住むことが決定された
吉法師が九つになった夏、父は家族を連れ吉法師だけを残し、新しく築城した末森の城に移った
前年、今川を相手の戦に大勝した所為か、その引越しも派手な物だった
道中には町民に菓子を投げ配り、時折小銭も投げる
町民はこの道中に熱気を上げた
信秀は道中に正妻である市弥を連れ、他の側室達は後から追うことになり、なつもその一組に入っていた
「若」
那古野の玄関先で、馴染んだ城と吉法師に別れを告げる
「離れているとは言え、那古野と末森はちこうございます。いつでもお越しなさいな」
「なつ・・・」
なつが末森に行くと言うことは、その息子である勝三郎も一緒だった
吉法師は家族だけではなく、母親代わりのなつや、弟のような勝三郎とも離れなくてはならなかった
勝三郎は家臣扱いであるため、更にその後からの出発となるので、今は吉法師の隣に居る
だが、それはいっときのことであり、なつらの一行が出発すれば勝三郎も秀隆らに混じって那古野を発つ
まやかしの慰めなど、吉法師にはなんの意味もなかった
「わしは平気じゃ。小煩いお前達が居なくなって、清々しておる。勝三郎も遠慮せず、なつと共に行け」
「え?」
自分に振られ、勝三郎はキョトンと驚く
強がりをと、なつは苦笑いした
「若」
「さっさと行け。わしは平気じゃ!」
そんななつに、心を見透かされたと吉法師は益々強がった
心なしか涙目になっている
九つになったとは言え、端から見て充分に親の愛を受けて育ったわけじゃない
まだ親の愛を欲しがる年頃でもある
なのに、無理矢理引き離され、否応なしに独立させられた
平気なわけがなかった
それでも泣くのをじっと我慢している吉法師が不憫で仕方ない
なつは吉法師と視線を合わせるため膝を下ろし、両の肩をそっと抱き包み言った
「いつかこの城に、あなたの家族がやって来ます。それまで、ここで待つのです。良いですか?」
「わしの家族?」
なつの言葉に、吉法師はキョトンとした顔をする
「ええ。あなたを支えてくれる家族が、必ずやって来ます。だからそれを信じて待ちなさい」
その言葉は暗く沈んだ吉法師の心に、一筋の光を差す
「いつ来るんだ?わしの家族は」
縋るような目で自分を見る吉法師に、なつはそっと微笑み、言った
どんな難しい言葉でも、この若様は理解できる
愚かな振りをした賢者であることを、なつは知っていた
「若が大人になられたら。それまでたくさんのことを学びなさい、たくさんのことを知りなさい。広い世の中を知りなさい。ありとあらゆる姿を見なさい。そして、あなたの家族がやって来た時に、あなたが見知り、理解したことを教えてあげなさい」
「 」
それは永遠の課題か、あるいは希望の道筋か
だが、間違いなくなつの言葉は吉法師を奮い立たせた
「 わかった。わしの家族が来るまで、わしはこの世の全てを見て回る。わしの家族に自慢できるだけの知識を得る。そして、わしの家族に伝えてやる。この世の広さ、素晴らしさを」
「そうですよ、若」
賢いこの少年に、なつは満足げな微笑みを浮かべた
「あなたの家族にこの世の全てを訓(おし)えるのは、あなただけです。若」
なつの言葉に、吉法師は黙って頷いた
大きな大きな城に、小さな小さな城主が誕生した
名を、織田吉法師
まだ元服も迎えていない少年は、その大きな城で一人、自分を支えてくれる家族がやって来るのを信じて待っていた
秋が近付く、ある夏の別れの場面は過ぎる
美濃・稲葉山
「早く早く!お清!」
少女の元気な声がする
「待ってくださいよぉ、姫様!」
「ほら!もう秋茜が飛んでる。今年は秋が早いのだな」
「ああ、本当ですね」
秋が来れば、この少女も一つ大人になる
自分と少しだけ年が近くなる
そんな些細なことに、侍従の少年は胸を弾ませた
「今年は栗拾いができるかな」
「どうでしょう。尾張に逃げ込んだ土岐が、織田と手を組んだと聞きます。それに、越前の朝倉もその連合に加入したと言いますし、もしかしたら近々戦が始まるかも知れませんよ。そうなると、優雅に栗など拾っている場合じゃありません」
「だけど、そのどれもこの稲葉山に入れるわけじゃない」
幼い少女は、自分よりも年上の少年に言い挑んだ
「精々麓の村を燃やして斎藤を脅すだけで、手も足も出せん。美濃は土岐から斎藤に移ったばかりで、まだ不安定だ。その不安定な中を余所者に掻き回されるのは、民が許さん。図らずも、美濃の民が斎藤の味方になる。土岐は愚かだ。味方にする相手を間違えた。私なら、織田や朝倉ではなく六角を味方に付ける」
「六角ですか?どうして」
姫君の言葉に、少年は目を丸くした
「六角は近畿の名門だ。おまけに京の要所でもある近江を長く統治している。その実力は、この美濃にも広く知れ渡っているのだから、斎藤から美濃の国主の座を奪い返しても、情勢は安定できると民は想い込む。その安心感を得てこそ、民の支持は掴めるのだ。土岐はその民の信頼を自ら手放した。土岐が再び美濃に戻ったとしても、民はもう土岐を当てにはせんだろう。それが、生かして逃がした父上の本当の狙いだ。殺さず生かし、そして再び立ち上がる力を奪う。だからこそ、民は斎藤を信じてくれた。その信頼を失っては、斎藤は土岐と同じ轍を踏む」
「そうですか」
難しい話であろうに、この少女と少年は少しも顔を歪ませることなく話し合っている
不思議な光景だった
「そんなことよりも、お清。早く桔梗を見付けよう。母様に持って帰ってやりたいのだ」
「でも、桔梗は」
「父上がお嫌いなのは知ってる。だから、こっそり持って帰ってやるんだ。それに桔梗の花びらは良い青を出すからな、焼き物にも使えるし、染色にも使える。最近は局処で染色が流行ってるから、女達も喜ぶだろう」
「そうですね。こっそり持って帰ればわかりませんよね」
「そうだ。行くぞ、お清」
少年の言葉に少女は気を良くして駆け出した
その少女を、少年は慌てて追い駆ける
「待ってくださいよぉ、姫様!」
「お清は足が遅いな」
少女の笑い声が遠ざかった
この数年後、少女はまさか自分がその織田に嫁に行くことになるとは、露とも考えていない初秋のことだった
折より今川に向けての出兵に失敗し、撤退したばかりの織田軍を出迎えに行くと、開口一番、父に言われた
「ぶらぶら表を出歩くよりも、少しは三法師のように手習いに勤しめ」と
吉法師はまだ七つだった
遊びたい盛りだった
なのに、武家の跡取りとして生まれてしまったがために、普通の子供らと同じようには行かなかった
この時の吉法師には、その理不尽さが理解できない
理解できず、何故自分ばかりが叱られなくてはならないのかと、不貞腐れて局処の中庭をぶらついていた
「兄上~!」
幼い三法師が駆け寄って来る
「三法師、危ない!転ぶぞ!」
弟を心配する吉法師
案の定
「あ!」
石に躓き、三法師が転んだ
「ああーん!」
「三法師!」
泣き出す三法師に吉法師は慌てて駆け寄った
「大丈夫か?三法師。だから言ったじゃないか」
袴に土が着き、それを払ってやる
「怪我はないか?」
膝を捲り確認するも、少し赤くなっているだけで擦り切れた様子もなかった
「良かった、怪我はないようだな」
そこへ、耳を劈く母の声
「吉法師!何故、弟を泣かせてるのです!」
「母上・・・、違
「早く三法師を連れてらっしゃい!」
「は、はい、奥方様」
側に居た侍女が、慌てて庭に出る
「参りましょう、三法師様」
三法師を立たせ、母の許に連れて行く
「三法師、兄と一緒に居てはなりません。お前まで変わり者になってしまう」
「奥方様、若が」
別の侍女が市弥の言葉を遮ろうとする
「構うものですか。あのようなうつけ者、少しは己を自覚した方が良いんです。庶民と轡を並べたがるような大うつけなど、織田には必要ありません!」
「
母はいつも、そうだった
大人しい弟を可愛がる
自分は愛された記憶がなかった
どうして愛されないのか、色々考えた
弟のように愛らしい顔をしていないからだろうか、とか、勉強ができないからだろうか、とか
たった二つ違いなのに、その二つ違いが途轍もなく遠い
弟を連れて行く母の、その小さな背中に沿われた手が恋しかった
自分もあんな風に、母の手に触れたかった
だけど、許してもらえなかった
「若」
ぼんやりと、母達の背中を眺めていた吉法師に、なつが声を掛けた
「美濃の親戚から、五平餅を送ってもらいました。勝三郎と一緒に召し上がりませんか?」
「食べる!」
さっきまでの淋しげな表情など掻き消すかのように、吉法師は満面の笑みを浮かばせ、なつの許に駆けて行った
局処の庭の片隅で勝三郎と二人、なつを挟むようにして七輪を眺める
その網の上に置かれた五平餅から立ち上る、香ばしい香りを嗅ぎながら、吉法師はなつに聞いた
「なつ」
「はい、何ですか」
「わしは、変わり者か?」
「ご自分では、どう想われますか?」
「
「なら、普通なのでしょう?」
「でもみんな、わしを変わり者だと言う」
「みんなが変わってるんじゃないんですか?」
「
なつの返事に、吉法師は目を丸くした
「
「変わり者は大抵、他人を変わり者と言います。それは、相手を理解できないからです。相手を理解できないのは、自分が変わっていることに気付かないからです。誰が言ったのか存じませんが、若は変わり者なんかじゃありませんよ」
「そうか・・・」
「ええ、そうです」
「そうだな」
なつの応えに、吉法師は満足げな顔をして笑った
「まだかな、まだ焼けないかな」
「味噌を着けたらもう一度焼きますからね、あと少しですよ」
「うん!」
吉法師は、なつが大好きだった
いつも自分の味方をしてくれるなつが、大好きだった
なつの息子の勝三郎も、大好きだった
自分を本当の兄のように慕ってくれるから
だけど、本当は
吉法師は、三法師とも仲良くしたかった
なのに、母がそれを邪魔する
どうして邪魔をするのか、自身、まだ幼い吉法師にもわからなかった
そんな庭の片隅の光景を、縁側から三法師がじっと見ていた
「参りますよ、三法師様」
連れ添っていた侍女が、三法師の手を掴んで歩き出した
三法師は何度も振り返り、兄の姿を見ていた
「かか様」
「お帰りなさい、三法師。お風呂はどうでしたか」
「三法師、食べたい物があります」
「何ですか?何でも仰い。何でも与えてあげますよ。何が食べたいの?」
母の言葉に気を良くした三法師は、元気いっぱいに声を張り上げた
「五平餅!」
「五平餅?」
侍女が間に入った
「お庭で池田の方様がさっき、焼いてらっしゃったんです。三法師様が湯殿にゆかれる前」
「
その途端、さっきまで機嫌の良かった市弥の表情が険しくなる
「三法師。あなたは織田の御曹司なのですよ?御曹司がそのような庶民の食べ物に、関心を持つんじゃありません。全く。池田は何を考えてるのかしら。誰か行って、池田に注意をして来てちょうだい!そんなもの、今度から台所でやってと!」
市弥の張り上げる声に驚いて、数人の侍女が慌てて部屋を出た
「三法師。あなたは吉法師とは違うのよ。将来、立派な侍になるの。それらしい教養と仕来りを覚えてちょうだい。吉法師のように、ならないで」
母は三法師をぎゅっと抱き締めた
優しい温もりと、香の香りが三法師を包み込む
吉法師には決して与えてはもらえない物を、三法師は持っていた
与えられる者はその意味を知らない
当たり前だと想っているから・・・
吉法師は周りの大人の目を盗んで、那古野の城下町に出るのが好きだった
町に出ると言うよりも、立派な大人を出し抜くことに喜びを感じている
「若~!若~!」
少し年増に差し掛かった侍女が自分を呼ぶ声がする
吉法師はさっと縁側の下に潜り込み、身を隠した
「若!どちらですか!お手習いの時期ですよ!若ったら!」
その侍女の声が遠ざかるのを、吉法師は息を殺して待っていた
「お絹は口喧しいからな、見付かったら夕餉を抜かれるぞ」
小さく口の中で呟く
お絹の足音が頭の真上に差し掛かり、吉法師の心の臓も激しい鼓動を打ち鳴らす
「若!」
お絹は苛立ちの余り、廊下の板をドスン!と踏み均した
その音がまともに頭の上でするものだから、吉法師は耳の膜が破れそうなほどの激痛と、心の臓が破裂してしまうような驚きに見舞われる
「ほんっとに毎日毎日、どこかに行ってしまうんだから。池田様が下手に庇うから、周りは良い迷惑だわ」
吉法師が自分の足の下に居るとも知らず、お絹は愚痴を零し立ち去った
自分の所為で大好きななつが悪く言われるのは悲しいが、兎に角これで難を逃れた
「いけね。急がないと、米屋が帰っちまう」
お絹が完全に消えるのを確認すると、吉法師は蜘蛛の巣だらけになった体を払いながら駆け出す
その吉法師の背中を、三法師が声を掛けた
「兄上」
「
見付かった・・・と、吉法師は驚いた顔で恐る恐る振り返る
「どこかにお出掛けですか」
「三法師」
「三法師も連れてってください」
「連れてってやりたいけど、そうしたら母上に叱られるぞ?」
「構いません。三法師だって、たまには町に出たいです」
「そうだなぁ・・・」
三法師の下の弟や妹は、居るには居るがまだ遊び相手としては不十分だった
吉法師や三法師の上に兄や姉は居るが、母の市弥が関わりを持たせたらがらない
産んだ母親の身分の低さが原因だった
自分も母の子ではなかったら、同じように疎外されていたのだろうか
今も目の敵にされているのにそれでも、吉法師は自分を産んでくれた母だから、嫌いにはなれなかった
いつかわかり合える日が来ると信じていた
「一緒に連れてって下さい」
可愛い弟の頼みに、吉法師は嫌だとは言えなかった
「じゃぁ、少しだけだぞ?少し町を歩いたら帰るぞ?」
「はい!」
兄の返事に三法師は嬉しさの余り、大きな声で応える
「バカ!誰かに気付かれちまうだろ」
吉法師は慌てて三法師の口を手で押えた
吉法師が三法師を連れ向かった先は、台所の搬入口だった
ここから普段自分達が口にする食材が運び込まれている
「若様」
吉法師を見付けた米問屋の、馴染みの使用人が声を掛けた
「すまん、待たせたか」
「いいえ、然程ではありませんよ」
中年に差し掛かった男は、客商売向けの清々しい愛想笑いを浮かべ応える
「兄様、どうするんですか?」
「ん?それはな、城を出るための作戦だ」
「作戦?」
「若様、こちらは」
台所どころか、城のあちこちをうろうろしている吉法師を知らない者は居ないが、局処から滅多に出ない三法師を知っている者は少ない
米屋の使用人の男は、見慣れぬ三法師を聞いた
「ああ、わしの弟の三法師だ」
「若様の弟君様でしたか、それは知らずご無礼を」
「そんなことより、この三法師も一緒に頼めるか?」
「え?お二人ですか?」
「見付かってしもうた。追い返せば母上に気付かれるしな、最近は駿府との争いで父上も気が立ってる。できる限り隠密に事を進めたい」
「はぁ・・・」
だったら大人しく城の中に居ろよ、とは、この可愛らしい若様には言えなかった
「少し窮屈ですよ?構いませんか?」
「ああ、構わん」
「では、荷台の方へ」
使用人の男が指し示す先に、米を運んで来た荷台が置かれていた
その台座の上には小さな樽がひとつ、積まれている
「兄上、この樽はなんですか?」
「米糠を詰めていた物だ。香の物を作る時、米糠が必要だろ?」
「そうなんですか。米糠って?」
「知らないのか?」
「はい」
「
三法師の返事に、吉法師はぽかんとした
武士として必要な教育は受けているだろう三法師が、米糠を知らないとは驚きである
いや、寧ろ偏った教育しか受けていないからこそ、米糠を知らないのだろうか
「米の周りに付いている黄色い粉のことだ。これが米を乾燥から守ってる」
「そうなんですか」
「それに、栄養の塊だぞ?香の物が美味いのも、米糠のお陰なんだからな」
「そうですか、勉強になりました」
米糠一つで踏ん反り返り、兄らしい虚勢に胸を張る吉法師と、そんな兄を素直に感心する三法師の遣り取りは、今が戦国の時代だと言うことをほんの少しでも忘れさせてくれるような、そんなほのぼのさがあった
微笑ましく眺めている男に、吉法師は声を掛ける
「おっと、急がないと誰かに気付かれてしまう。早く出よう」
「そうですね」
「三法師、来い」
荷台に上がりながら、吉法師は三法師に手を差し出した
「はい、兄上」
ひとつしかない小さな樽に、ふたりで押し込む
樽の中で吉法師が三法師を抱き抱えるように収まっている
「兄様」
「なんだ?」
「臭いです・・・」
「仕方ないだろう?城を出るまでの辛抱だ。少し我慢しろ」
「はい」
素直に頷く三法師の頭を、吉法師は優しく撫でてやった
その頃局処では、三法師の姿がないことに市弥が騒ぎ始めていた
「三法師はまだ見付からないの?!」
「も、申し訳ございません・・・ッ!」
「今、総員を以って探しております」
「早く見付けなさい!」
「は、はい!」
市弥の苛々に振り回され、侍女達は城中を走り回される羽目になる
「三法師様ー!」
「三法師様ー!」
中には不平を口にする者も居た
「全く。子供がどこかに行ったって言うだけで、これだけギーギー言われたんじゃ、堪ったもんじゃないわよ」
「本当。所詮、金で買われた女だもの。粗相が起きないよう必死なのよ」
「不始末でもあれば、実家に帰されてもおかしくない立場だものね」
「だからって、こっちに八つ当たりするのも止めて欲しいわぁ」
そう言い合う侍女の後ろから、お絹が声を掛ける
「あなた達」
「
侍女達はビクンと震えて振り返った
「下らない噂話に花を咲かせている暇があるのなら、三法師様を見付けなさい」
「は、はい!お絹様!」
走り去る侍女達の背中に、お絹は溜息を漏らす
「全く。人の口に戸は立てられないと言うけれど、本当ね」
局処で悪口を言われるようになれば、お仕舞いだ
尚更、市弥は神経を尖らせているのだろうと、お絹は感じた
表現は辛辣だが、目的としては間違っていない
美濃と尾張の境界線でもある木曽川の制河権は、美濃の土田家が握っていた
木曽川は物の流通の運搬には欠かせない場所であり、美濃との政治交渉の場としても重要な位置にある
その木曽川を制するのが美濃・岐阜屋と土田家であった
しかし岐阜屋は大店とは言え一般家庭であるため、そこから嫁をもらうのに一族の殆どが反対した
『商人』と『武家』の隔たりがあるからだ
それを理解できる者は、この時の織田には一人も居なかった
代わって土田家は小さいとは言え一応は氏族でもあるため、反対する声も少ない
織田がこれから尾張で勢力を揮うためには、『金を持っている』後ろ盾が必要だった
本家織田や分家、今川とも争わなくてはならないためだ
戦をするには金が要る
金を産んでくれる家を持つ女が必要だった
だから信秀は、土田家から市弥をもらった
今居る妻に金を積ませ、実家に帰らせてまで
そう言った経緯があるため、織田家の侍女達からの受けが悪かった
それが市弥を苛立たせる原因の一つなのかも知れない
自分は家から「織田に嫁に行け」と言われただけである
なのに、「前妻を追い出した」と謂れのない中傷を受けているのだから、尚更産んだ我が子に期待し、織田を今よりもっと大きな家にしてやると言う意地を持っても、責められるものではなかった
家を大きくできた女と、逆に潰してしまった女とでは、世間の評価も当然違う
望まれた結婚ではあっても、望んだ結婚ではなかったが故に、余計市弥を意固地にさせてしまっていた
加えて、女にだらしのない男を夫に持つと、女としての感情も良くはない
これで夫婦仲が良好であったなら、家内も穏便だっただろう
市弥にとって良くない条件が揃ってしまっているがため、自分の期待通りにはなってくれない吉法師への不満も尚更である
「吉法師は居たの?」
「それが、若様もお姿が見えず・・・」
おずおずと侍女が答える
「まさか吉法師が三法師を何処かに・・・?」
嫌な予感がして仕方がない市弥であった
「若様、お城から随分離れましたよ。そろそろ表に出ても大丈夫じゃないですかね?」
「そうか」
外から声を掛けられ、吉法師は樽の中から返事する
しばらくして蓋がごとごとと動き、最初に三法師が出て来た
その三法師を米屋の男が抱き上げ、樽から出してやり、その後を吉法師が自力で出る
ずっと息苦しい想いをしていた三法師は、呼吸する空気が一気に躰の奥へ流れ込むような感覚になり、正しく新鮮な想いに包まれた
深く深呼吸し、初めて踏む那古野の町の土の感触を楽しむように飛び跳ね、その光景に吉法師は笑った
「兄様はいつもこうやって、お城の外に出てるんですか?」
「またにだぞ?毎回これだといつかばれるからな、色々作戦を立てるんだ」
「そうなんですか」
「それじゃぁ、若様、私はこれで」
と、二人の間に米屋の男が入る
「ああ、すまなかったな。また頼む」
「はい、それでは失礼します」
吉法師と三法師の其々に頭を下げ、男は荷車を押して店への帰路に着いた
「さぁて。三法師、何処に行きたい?どこにでも連れてってやるぞ」
「わーい!」
幼い三法師にとってこれは、冒険以外の何物でもなかった
初めて見る光景、初めて見る店先、初めて見る町民
局処の奥では決して目にすることのできない世界が、ここにはある
兄の吉法師に手を繋がれ、三法師はワクワクする気持ちを抑えられず、時には自ら兄の手を引いて走り出すこともあった
「兄上、こっちこっち!」
「急に走るな、三法師。転んだらどうするんだ」
「早く早く!」
兄の忠告も耳に入らないほど、今の三法師は目にするもの全てが楽しくて仕方がない
生まれて一度も、那古野城の外から出たことがないのだから
出させてもらえなかったのだから
古着市も干し魚の佃煮屋も団子屋も
金物屋の軒先ですら三法師は、目を輝かせて見て回った
局処の文机の前で手習いするのも必要だろう
だけどそれよりもっと大事な物が、世間にはあった
それは誰かに教わるものではなく、自分の目で見て学ぶべきものであり、学ぶには『自由』が必要だった
吉法師は母からの愛を得られぬ代わりに『自由』を手に入れ、三法師は母の愛を得る代わりに『自由』を失った
どちらが幸せなのかは、誰にもわからない
本人達にもわからないものを、誰が理解できようか
「兄様!」
遂には兄の手を離し、自分の足で走り出す三法師を、吉法師は止めようとはしなかった
今のこの瞬間が、三法師にとって必要なことだと子供ながらに感じたから
昼餉が来ても、三法師の姿は見付からない
「どこを探しているの!隅々まできっちり探しなさい!」
市弥の怒号が響く
三法師は自分の期待に応えて賢く育ってくれている
その大事な三法師の姿がないのは、市弥にとって不安この上ないものだった
当りたくなくとも、つい侍女達に当り散らしてしまう
『立派な子供』を産むか、『不出来な子供』を産むかで評価は別れ、吉法師と三法師はその両極端に位置していた
我が子を理解できない親は大抵、自分の範疇を超えていると『変わり者』扱いしたがる
理解するよりも、排除する方が簡単で楽だからだ
「早く三法師を探し出して!手習いの暇がなくなってしまうわ!」
吉法師が期待に沿わない育ち方をしてしまったなら、次の子である三法師に希望の全てを寄せてしまうのは、親として仕方がないことだった
これが三法師を雁字搦めにしているとは市弥自身、気付いていない
市弥の怒鳴り声は外に居たなつの耳にも届く
当然、側に居た勝三郎も聞いていた
「母上・・・」
自分を心配そうな顔で見上げる勝三郎に、なつも苦笑いで宥める
「若様ったら、またどこかに行ってしまったようね。しょうがないお子」
「帰って来たら、奥方様に叱られないでしょうか」
「そうならないよう、母からも頼んでみますね」
「はい、母上」
「三法師、食べたい物はないか?」
「あります」
「何だ?」
「五平餅!」
「五平餅?」
「この間、兄上様が食べてらしたのを見てました」
「そうだったのか。声を掛けてくれれば良かったのに」
「でも、小雪が一緒でしたから・・・」
小雪は母の侍女である
母から三法師を自分とは関わらせないよう、言い付けられているのだろう
「そうか。じゃぁ、行くか」
「団子屋ですか?」
「そこよりももっと美味い店があるんだ。三法師、付いて来い」
「はい!」
元気いっぱいに走り出す兄弟
端の目から三法師の方は良家の坊ちゃまに見え、吉法師はその召使のような恰好に見えなくもない
そんな下らない世間の目など気にもせず、吉法師は三法師を連れ馴染みの店に走った
「権兵衛!」
店先で店主の名を叫ぶ
「兄上、ここは?」
吉法師が連れて来たのは、団子屋ではなく乾物屋だった
美味しそうな匂いのするものは見当たらない
キョトンとする三法師に説明しようと振り返った吉法師に、店主の返事が聞こえる
頭に白い物が混じった小太りな男が出て来た
「これは吉法師様。今日は随分とお早いですな」
「ああ、権兵衛。五平餅を焼いてくれないか」
「五平餅ですか?はい、少々お待ちください」
権兵衛はニコニコして、店の奥に引っ込んだ
「兄上、どうしてここに五平餅があるんですか?団子屋じゃないですか?」
「団子屋にあるのは、もう焼いてる餅だ。ここはまだ焼いてない餅を置いてるんだよ。五平餅ってのは、米を半分乾かしてるから、乾物屋にも置いてるんだ」
「乾物屋って、ここのことですか?」
「そうだ。三法師、自分の目で見てみろ。人に教わるより、自分の目で見て知ったことの方がずっと長く覚えていられるし、理解もできる。乾物屋に何が置いてあるか、じっくり見てみろ」
「はい、兄上」
三法師は兄の言葉どおり、店の中に入って陳列している商品を一つ一つじっくり眺めた
乾かした小魚、スルメもある
海草も当然置いてあるし、しなびた椎茸もあった
父達が戦に持って行く糒(ほしいい)も、大きな樽に入れられ並んでいた
「これって、米屋にだけあるもんじゃないんだ。それだと、米屋の独占商売にはならないな。でも、米屋と乾物屋と言う店が争っているって言う話も聞かない」
一人でぶつぶつと呟く三法師は、素直に吉法師に聞いた
「兄上」
「何だ」
「どうして乾物屋に糒があるんですか?これって米屋で扱っているものじゃないんですか?どうして米屋と乾物屋は糒を巡って争わないのでしょうか」
「糒は米屋が米を乾物屋に卸し、乾物屋が干して俺達に売る。これが流通ってもんだ。米屋は乾物屋に米を売って儲け、乾物屋は俺達に糒を売って儲ける。米屋は糒を売れない分儲けは減る。だけど、米を干すだけの場所の維持費や人件費は削れる。乾物屋は米を干す場所の維持費と人件費を負担している分、俺達から儲けを取れる。こうやって世の中は巡ってるんだ。これが、この世の仕組みだ」
「そうなんですか・・・」
難しい話だろうに、賢い三法師はきちんと理解できたのか、商人と武家のあり方をもこの店で学ぼうとしている姿勢だけは見て取れた
そんな三法師が将来、自分の片腕として働いてくれたら、織田はきっと磐石なものになると吉法師は確信する
母はきっと反対するだろうが
「お待たせしました」
奥に引っ込んでいた権兵衛が皿を乗せた七輪を抱えて出て来た
「じゃぁ、焼きましょうか」
「ああ、頼む」
吉法師を出し抜き、三法師が店先に七輪を置いた権兵衛の側に駆け寄った
「お坊ちゃんは五平餅、お好きですか」
その身形から良いところの子息であることはわかるのだろう
権兵衛は愛想の良い笑顔を浮かべ、三法師に聞いた
「まだ食べたことがないんだ」
「なんと、まだ食べたことがないとは今までの人生、損をして来られましたな」
「そうなのか?」
「こんな美味しい物を食べたことがないとは。しかし、今日からの人生、変わりますぞ?」
「え?」
「権兵衛、大袈裟なことを言うな。三法師は純粋なんだから、直ぐ信じてしまうだろ」
と、吉法師が苦笑いで忠告する
「ああ。美味しかった!」
まだ小さいためにそれほどの量は食べられなかった
それでも満足したかのように笑顔で町を歩く三法師を、少し後ろから付いて歩く吉法師もまた、満足げな顔で眺めていた
「兄上、これからどうされるんですか?もうお城に戻られるんですか?」
「お前はどうしたい?帰りたいか?」
「まさか!もっと色んな物を見て回りたいです」
「そうか。じゃぁ、そうだな、少し歩くけど行ってみるか」
「何処へですか?」
「賑やかなとこだ」
吉法師はニカッと、弾ける笑顔で応えた
「行けー!」
大勢の村人が入り乱れ、其々思い思いの掛け声を投げる
「それ!掬い上げろ!」
「踏ん張れ踏ん張れ!」
「今だ、押せー!」
村の鎮守の社の広場で、体格の良い男同士が組み合い、相撲を取っていた
今は奉納相撲の時季ではないが、時折村の興行として開く場合もある
相撲見学の客目当てに露店が並び、売り上げの何割かが村に入り、それを目的として開催するのだ
また、賭け相撲も行なわれており、自分の贔屓の相撲取りに対する札を買い、勝てば賭けに応じた賞金が返って来る
強い者ほど賞金が少なく、弱い者ほど高くなっていると言うのも、人間の心理を上手く突いた遣り方だった
だからこそ人は見返りを求めて賞金の高い力士を応援する
故に白熱した応援合戦が展開されていた
ここは比較的人口の多い村であるため、人の集まりも良い
吉法師は今日が相撲のある日だと知っていて、三法師を連れて来たのだった
「どうだ?三法師。楽しいか?」
「はい!兄上!」
さっき五平餅を食べたばかりの三法師の手には、串団子が握られている
半刻ほど歩いた所為か、小腹が空いたのだと言う
その三法師に串団子を買ってやり、吉法師は注意した
「良いか?三法師。串を持ったまま走り回ったりするなよ?もし転んで串が刺さったら痛いだろう?」
「はい・・・」
想像したからか、三法師の顔が悲しげに歪む
「食べ終わったら、わしに渡せ。後で捨ててやるから」
「はい、わかりました、兄上」
そう言い聞かせたのだが、初めて見る相撲に我を忘れたのか、三法師は半分食べた串団子の串をつい振り回してしまった
その串の先が隣に居た若い男の太腿にポンと当る
「いってぇ!」
実際、それほど痛くはないだろう
男は古い股引を履き、太腿の部分はきちんと守られていたのだから
それでも、相手が年端も行かない子供だろうが、虫の居所が悪かった男には通じるものではない
「このガキ!何しやがる!」
男は三法師の細く小さな手首を掴み上げ、周りを見渡した
当然、周囲は騒然とし、当人である三法師も驚きの余り泣きそうな顔になった
「弟に何をする!」
吉法師は自分の何倍もある男の手を掴み、三法師の手首を離そうと握り締めた
「何をするのはこっちの言う言葉だ!てめぇの弟が、俺の脚にこの串を刺しやがったんだよ!」
「三法師が?本当か?三法師」
「
「弟はそう言ってる。だけど、刺したと言うのならわしが謝る。子供のこと故、許してもらえるとありがたい」
「ふざけんじゃねぇよ?痛い目に遭わされたんだぞ?すまんも言わずに許せってか?おりゃぁ仏様じゃねーんだよ!」
「
吉法師は男の手を離し、なんの躊躇いもなくその場で土下座した
「すまんかった。弟の無礼、どうか許してくれ」
弟の方は武家の御曹司と言う身形だが、弟の代わりに土下座している少年はそんな雰囲気にない
これが男を調子付かせてしまったのか
「それが謝る態度か?あぁ?」
男は土下座する吉法師の後頭部に草鞋の裏を押し付け、踏んだ
「兄上!」
大好きな兄にこんな仕打ちをする男が許せなかった
三法師は、それでも男の脚を払わず、自分のために許しを乞うてくれる吉法師に悪いと言う想いが溢れ、大きく泣き出してしまった
それを見かねた周りの大人達が間に立つ
「おい、若いの。相手は子供じゃないか。好い加減勘弁してやったらどうだ」
「そうだぞ、みっともないじゃないか」
「何をぉ?てめぇらはかんけーねーだろ。すっこんでろ!」
「大の大人のすることじゃねぇよ、その足、降ろしてやんな」
「チビの手も、離してやれよ」
「うっせぇ!」
周囲が一斉に敵に回ったからか、男は尚も意固地になって吉法師の後頭部に足をぐりぐりと押し付ける
「兄上は悪くない!ああーん!ああーん!」
泣きじゃくる三法師が気になった
だけど、足を払えば三法師の許しはもらえない
吉法師は地面に拳を押し付け、屈辱に耐えた
その足が、急にふと軽くなる
「なっ、何しやがる!」
男の声が上がったのは、その直後だった
「好い加減にしねぇか。子供相手に虚勢張って、何が楽しいってんだ」
見かねた力士が吉法師と三法師を助けようと、男を軽々と持ち上げていた
顔を上げた吉法師は、その光景にぽかんとする
「勇気のあるにーちゃんだね。感心したよ」
「別に、誉めてもらうようなことじゃ・・・」
自分達を助けてくれたのは、賭け相撲でも人気のある甚作と言う若い男だった
大きさとしては優に五尺を超える高さだろうか
「助けてくれて、ありがとう」
吉法師は甚作を見上げ、礼を言った
三法師はまだ泣き止まない
「いいや、礼には及ばないよ。そんなことよりも、あんちゃんのために泣いてくれた弟を、大事にしてやれよ?坊主もだぞ?お前のために体張ってくれたにーちゃんを尊敬しろよ?」
「う、うん・・・」
泣きながら返事する三法師を、甚作は笑いながらその大きな手で撫でてやった
そんな微笑ましい光景を、恥を掻かされたさっきの男が物陰から盗み見ている
途轍もなく邪悪な目付きだった
予期せぬ事件は起きたが、それでも助けてくれた甚作の笑顔に救われ、二人は楽しい気分のまま帰路に着けた
その最中、急に三法師の足取りが遅くなった
「どうした?三法師。疲れたか?」
「はい・・・、少しだけ」
「はしゃがせ過ぎたかな。どれ、負ぶってやろう、来い」
「はい、兄上」
しゃがむ兄の背中にしがみ付き、三法師はぐったりと体を預けた
その三法師の体温が高い
「三法師?」
見えはせぬが吉法師は、後ろの三法師に振り返る
名を呼んでも、三法師の返事はなかった
「大変だ」
吉法師は慌てて城への道を急いだ
「まだなの?!」
市弥の苛々は頂点に達していた
もう夕焼けがやって来る
半日見付からない三法師への心配の余り、無実の侍女を張り倒さんばかりの勢いで食って掛かっている
「お前達はどこを探しているの!城の外も探しに行ったの?!」
「そ、そこまでは・・・」
「揃いも揃って、無能ばかりね!早く探してらっしゃいッ!」
「は、はい・・・!」
バタバタと部屋を出て行く侍女達を見送り、なつが市弥の部屋の外に膝を落とす
「奥方様」
「池田?どうしたの。三法師を見付けたの?」
「いえ、そうではありません」
「だったら、お前も手伝いなさい!」
「奥方様。若もいらっしゃいません」
「知ってるわ。でも吉法師はいつものことでしょう?あの子は野良猫のようにどこかにふらりと出て行って、野良猫のように戻って来るけれど、三法師は違うのよ」
「もしかしたら、若とご一緒なのかもしれません」
「わかってるわよ!だから探させているんでしょう?!」
「奥方様、若がご一緒でしたら安心です。どうか戻って来るのをお待ちいただけませんか。こんなに大騒ぎをしてしまっては、周囲の者も不安になってしまいます」
「池田。側室の分際で、私に意見しようと言うの?」
「そうではありません。ただ、子供には遊びの時期も必要です。それを取り上げてしまっては、子供と言うのは大きく成長しません」
「じゃぁ、自由気侭な吉法師は大きく成長しているのかしら。武家のことも織田のことも考えず、自分勝手にふらふらしているようにしか見えないのだけど?」
「若は若なりに色々考えてらっしゃると想います。ですから奥方様、若と三法師様がお戻りになられても、どうか叱らず、今日一日の出来事を聞いてあげてくださいませ」
「黙って!お前の言うことは一々癇に障るのよ。自分が一番理解しているみたいな顔をして、私に偉そうに説教する。それで満足なの?私より上に立ってると想いたいの?殿の寵愛を独り占めしているとでも想っているのッ?!」
「そんな・・・・・・・・」
矢継ぎ早に自分を責める市弥に、なつも気落ちした
何より女に対し情愛の念など持たぬ信秀に、どの女が一番かなど、基準を求めること自体が間違っている
それすらわからぬわけでもないのに、今の市弥にはなつの言葉すら遠い
「私は、ただ・・・」
どう言えば市弥を怒らせずに話ができるのか、なつは懸命に考えた
そんな時、侍女がやって来る
「奥方様、三法師様がお戻りになられました」
「三法師が?!」
その言葉に市弥は部屋を急ぎ出る
ところが、戻った三法師は熱を出し、自室に布団を敷きぐったりとしていた
三法師の部屋の庭には吉法師がしょんぼりして立っている
「
市弥は悲しさに眉を寄せ、吉法師の頬を力いっぱい引っ叩いた
女とは言え、大人の力である
子供の吉法師の躰は簡単に倒れた
「三法師を殺す気ですかッ!」
「わ、私は、そんな・・・」
「まだ小さいのよ?どうしてこんなに暗くなるまで引っ張り回すの。どうしてお前と言う子は、弱き者への配慮に欠けるの・・・ッ!」
「
言い返してやろうかと想った
だけど、吉法師はそれをやめた
母の目が、涙で光っていたからだ
悲しいんだ、と、想った
三法師は疲れで熱を出した
それは自分が三法師に対して、思い遣ると言う気持ちに欠けていた所為だと想った
初めて城の外に出たのだから、外界の刺激は三法師にとって軽い物ではなかったのだろう
それを知らず町を歩き回り、ここから相当離れた村にまで出掛け、帰りにはすっかり日も暮れてしまっていた
自分が連れ回した所為で幼い弟は熱を出し、布団の中で苦しんでいる
自分の責任だと想った
「
小さく呟き、吉法師は立ち上がると庭を去った
その吉法師の背中を、市弥は変わらず悲しそうな目をして見送る
知って欲しかった
わかって欲しかった
長男として生まれた者の『責任』と言うものを
自覚して欲しかった
自分が織田を継ぐのだと言うことを
なのに吉法師は、そんな自分の想いなど知りもせず、自由に勝手に飛び回る
挙句、将来の補佐ともなろう三法師を、疲労で寝込ませるまでのことをしてしまった
楽しいことばかりを考えていては、立派な当主にはなれない
わかって欲しかった
どうして自分がつらく当るのかを
まだ幼い吉法師に、わかって欲しかった
でも、まだ幼い吉法師には、その想いは届かなかった
それから三法師の、母の監視の目が厳しくなった
兄とも気軽に声を掛け合えない状態になってしまった
季節が流れ、なつが父の子を宿した
勝三郎も将来池田家を再興せねばならない身となり、局処で三法師のように武士としての教育を受けるため、吉法師は遊び相手を失ってしまった
今日も城を抜け出し、自由気侭に歩き回る
ふと甚作のことを想い出し、相撲の興行はないかと訊ねて歩いた
「力士の甚作?ああ、あの人なら殺されたよ」
「
あの時、相撲を興行していた村にまで行き、どこかでやってないかと聞いてみたら、想像もしていない返事が返って来て、吉法師を戸惑わせた
「ど、どうして・・・」
「何ヶ月前のことか忘れちまったけどね、破落戸に刺されて死んじまったよ」
「そんな
一瞬、あの時三法師が厄介を起した男を想い出す
顔までは覚えていないが
その村人の話しに因れば、夜、一人で歩いているのを後ろから襲われたのだと言う
どんな巨漢も背後からいきなり襲われては一溜まりもない
どうして甚作が殺されなきゃならないのか、吉法師にはわからなかった
この世の理不尽さを想い知らされたような気がした
落ち込んだまま城に帰る
出迎えてくれる者の中に、今の自分の想いを話せる相手は居なかった
新しい年が来て、なつが女の赤子を産んだ
名はありふれたものだが、『稲』と名付けられた
勝三郎は父親違いの妹の誕生に、嫌でも親離れをしなくてはならなくなった
それと同時に、吉法師もなつから独立せざるを得ない状況になる
自分を庇ってくれる者の喪失は大きかった
今日も手習いをさぼって城を抜け出す
城では吉法師を探し回るお絹の声が響き渡る
市弥の限界も超えていた
「吉法師を独立させてください」
そう、信秀に嘆願した
「あの子は、あのままでは自分のことしか考えられない愚か者になってしまいます。うつけならうつけでも構わない。だけど、他人を思い遣れる子になってもらわないと、家臣の心は掴めません。どうか、吉法師に城を与え、考える暇を与えてやってくださいませ」
しっかりした子に育って欲しい
そう想い、突き放して来た
自分の育て方が間違っていたのか
愛情を注げば甘ったれた子になってしまう
家を支えられるだけの強い子に育って欲しかった
だから、態と冷たい態度で接して来た
それが全部、裏目に出てしまっている
そうだろう
自分を庇ってくれる者の存在が、吉法師を甘い考えの持ち主へとさせてしまっていたのだから
その者が誰かなどは言うに及ばないが、今更責めたところでどうにかなるわけがない
だったら、自分が領主なのだ、城主なのだと言う自覚を持ってくれさえすれば、織田の跡取りとして恥しくない人物に育つだろう、そう考えた
その結果、市弥の考えを信秀は飲み、吉法師には生まれ育った那古野の城を与えられることになった
代わりに信秀らは末森に城を建て、そちらに移り住むことが決定された
吉法師が九つになった夏、父は家族を連れ吉法師だけを残し、新しく築城した末森の城に移った
前年、今川を相手の戦に大勝した所為か、その引越しも派手な物だった
道中には町民に菓子を投げ配り、時折小銭も投げる
町民はこの道中に熱気を上げた
信秀は道中に正妻である市弥を連れ、他の側室達は後から追うことになり、なつもその一組に入っていた
「若」
那古野の玄関先で、馴染んだ城と吉法師に別れを告げる
「離れているとは言え、那古野と末森はちこうございます。いつでもお越しなさいな」
「なつ・・・」
なつが末森に行くと言うことは、その息子である勝三郎も一緒だった
吉法師は家族だけではなく、母親代わりのなつや、弟のような勝三郎とも離れなくてはならなかった
勝三郎は家臣扱いであるため、更にその後からの出発となるので、今は吉法師の隣に居る
だが、それはいっときのことであり、なつらの一行が出発すれば勝三郎も秀隆らに混じって那古野を発つ
まやかしの慰めなど、吉法師にはなんの意味もなかった
「わしは平気じゃ。小煩いお前達が居なくなって、清々しておる。勝三郎も遠慮せず、なつと共に行け」
「え?」
自分に振られ、勝三郎はキョトンと驚く
強がりをと、なつは苦笑いした
「若」
「さっさと行け。わしは平気じゃ!」
そんななつに、心を見透かされたと吉法師は益々強がった
心なしか涙目になっている
九つになったとは言え、端から見て充分に親の愛を受けて育ったわけじゃない
まだ親の愛を欲しがる年頃でもある
なのに、無理矢理引き離され、否応なしに独立させられた
平気なわけがなかった
それでも泣くのをじっと我慢している吉法師が不憫で仕方ない
なつは吉法師と視線を合わせるため膝を下ろし、両の肩をそっと抱き包み言った
「いつかこの城に、あなたの家族がやって来ます。それまで、ここで待つのです。良いですか?」
「わしの家族?」
なつの言葉に、吉法師はキョトンとした顔をする
「ええ。あなたを支えてくれる家族が、必ずやって来ます。だからそれを信じて待ちなさい」
その言葉は暗く沈んだ吉法師の心に、一筋の光を差す
「いつ来るんだ?わしの家族は」
縋るような目で自分を見る吉法師に、なつはそっと微笑み、言った
どんな難しい言葉でも、この若様は理解できる
愚かな振りをした賢者であることを、なつは知っていた
「若が大人になられたら。それまでたくさんのことを学びなさい、たくさんのことを知りなさい。広い世の中を知りなさい。ありとあらゆる姿を見なさい。そして、あなたの家族がやって来た時に、あなたが見知り、理解したことを教えてあげなさい」
「
それは永遠の課題か、あるいは希望の道筋か
だが、間違いなくなつの言葉は吉法師を奮い立たせた
「
「そうですよ、若」
賢いこの少年に、なつは満足げな微笑みを浮かべた
「あなたの家族にこの世の全てを訓(おし)えるのは、あなただけです。若」
なつの言葉に、吉法師は黙って頷いた
大きな大きな城に、小さな小さな城主が誕生した
名を、織田吉法師
まだ元服も迎えていない少年は、その大きな城で一人、自分を支えてくれる家族がやって来るのを信じて待っていた
秋が近付く、ある夏の別れの場面は過ぎる
「早く早く!お清!」
少女の元気な声がする
「待ってくださいよぉ、姫様!」
「ほら!もう秋茜が飛んでる。今年は秋が早いのだな」
「ああ、本当ですね」
秋が来れば、この少女も一つ大人になる
自分と少しだけ年が近くなる
そんな些細なことに、侍従の少年は胸を弾ませた
「今年は栗拾いができるかな」
「どうでしょう。尾張に逃げ込んだ土岐が、織田と手を組んだと聞きます。それに、越前の朝倉もその連合に加入したと言いますし、もしかしたら近々戦が始まるかも知れませんよ。そうなると、優雅に栗など拾っている場合じゃありません」
「だけど、そのどれもこの稲葉山に入れるわけじゃない」
幼い少女は、自分よりも年上の少年に言い挑んだ
「精々麓の村を燃やして斎藤を脅すだけで、手も足も出せん。美濃は土岐から斎藤に移ったばかりで、まだ不安定だ。その不安定な中を余所者に掻き回されるのは、民が許さん。図らずも、美濃の民が斎藤の味方になる。土岐は愚かだ。味方にする相手を間違えた。私なら、織田や朝倉ではなく六角を味方に付ける」
「六角ですか?どうして」
姫君の言葉に、少年は目を丸くした
「六角は近畿の名門だ。おまけに京の要所でもある近江を長く統治している。その実力は、この美濃にも広く知れ渡っているのだから、斎藤から美濃の国主の座を奪い返しても、情勢は安定できると民は想い込む。その安心感を得てこそ、民の支持は掴めるのだ。土岐はその民の信頼を自ら手放した。土岐が再び美濃に戻ったとしても、民はもう土岐を当てにはせんだろう。それが、生かして逃がした父上の本当の狙いだ。殺さず生かし、そして再び立ち上がる力を奪う。だからこそ、民は斎藤を信じてくれた。その信頼を失っては、斎藤は土岐と同じ轍を踏む」
「そうですか」
難しい話であろうに、この少女と少年は少しも顔を歪ませることなく話し合っている
不思議な光景だった
「そんなことよりも、お清。早く桔梗を見付けよう。母様に持って帰ってやりたいのだ」
「でも、桔梗は」
「父上がお嫌いなのは知ってる。だから、こっそり持って帰ってやるんだ。それに桔梗の花びらは良い青を出すからな、焼き物にも使えるし、染色にも使える。最近は局処で染色が流行ってるから、女達も喜ぶだろう」
「そうですね。こっそり持って帰ればわかりませんよね」
「そうだ。行くぞ、お清」
少年の言葉に少女は気を良くして駆け出した
その少女を、少年は慌てて追い駆ける
「待ってくださいよぉ、姫様!」
「お清は足が遅いな」
少女の笑い声が遠ざかった
この数年後、少女はまさか自分がその織田に嫁に行くことになるとは、露とも考えていない初秋のことだった
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母の悲しみ
市弥は決して信長を憎んでいたわけではありません
自分の期待に応えてくれない我が子に苛立ちを募らせ、それが何年も続き不満になって行ったのです
ですが信長は決して母の期待を裏切ろうとしたわけではありません
自分なりのやり方で世間を知ろうとしていただけです
親子であろうとも、『自分ではない以上、理解できないことも』あるのです
子は「親だからわかってくれる」と言う安心感に甘え、親は「自分の願うとおりに育ってくれない」と不安を募らせてしまうのは、今も昔も変わらないと想います
そんな不幸が重なり、この物語ではあのような結果になってしまいました
ですが市弥は信長を当主からは引き摺り下ろそうとはしても、殺そうとまでは考えていません
それは前回に書きましたが、男親と違い女親は自分の命を削って子供を産むのですから、出来損ないだからと言う理由で簡単に殺してしまうような、そんな生き物ではありません
子供を産むのはつらいことだと想います
今のように医療技術が進歩している時代ではありません
子供を産むと同時に亡くなってしまうケースもあれば、産後の肥立ちが悪く命を落としてしまうケースもあります
それでも女は子を生み、家を守ろうとしていました
市弥は織田の家を守ろうとしていただけです
その方法を誤っただけでした
少しだけ、市弥の信長に対する愛情と言うものを書き連ねてみました
土田家は当時でもさほど大きな家ではありませんでした
信長の生まれた勝幡織田も、大きな家ではありませんでした
身分相応な家同士の結婚の果て、夫は大躍進を遂げ、美濃国主の大名家から嫁をもらうまでになりました
市弥はそれに相応しい家であって欲しいと願ったのでしょう
ですがそれでも信長は相変わらず自由気侭な生活を送る
親として情けなくも悲しく想ったことではないでしょうか
そんな想いが悲劇を呼んでしまいました
母親は、我が子のためなら鬼にもなれます
どんな中傷を受けようとも、子供を守ろうとするものです(現代ではそうでない親も多少おりますが)
自分自身ですら、盾にする事を厭いません
この時代は、そんな強い母親が大勢居たのです
自分の期待に応えてくれない我が子に苛立ちを募らせ、それが何年も続き不満になって行ったのです
ですが信長は決して母の期待を裏切ろうとしたわけではありません
自分なりのやり方で世間を知ろうとしていただけです
親子であろうとも、『自分ではない以上、理解できないことも』あるのです
子は「親だからわかってくれる」と言う安心感に甘え、親は「自分の願うとおりに育ってくれない」と不安を募らせてしまうのは、今も昔も変わらないと想います
そんな不幸が重なり、この物語ではあのような結果になってしまいました
ですが市弥は信長を当主からは引き摺り下ろそうとはしても、殺そうとまでは考えていません
それは前回に書きましたが、男親と違い女親は自分の命を削って子供を産むのですから、出来損ないだからと言う理由で簡単に殺してしまうような、そんな生き物ではありません
子供を産むのはつらいことだと想います
今のように医療技術が進歩している時代ではありません
子供を産むと同時に亡くなってしまうケースもあれば、産後の肥立ちが悪く命を落としてしまうケースもあります
それでも女は子を生み、家を守ろうとしていました
市弥は織田の家を守ろうとしていただけです
その方法を誤っただけでした
少しだけ、市弥の信長に対する愛情と言うものを書き連ねてみました
土田家は当時でもさほど大きな家ではありませんでした
信長の生まれた勝幡織田も、大きな家ではありませんでした
身分相応な家同士の結婚の果て、夫は大躍進を遂げ、美濃国主の大名家から嫁をもらうまでになりました
市弥はそれに相応しい家であって欲しいと願ったのでしょう
ですがそれでも信長は相変わらず自由気侭な生活を送る
親として情けなくも悲しく想ったことではないでしょうか
そんな想いが悲劇を呼んでしまいました
母親は、我が子のためなら鬼にもなれます
どんな中傷を受けようとも、子供を守ろうとするものです(現代ではそうでない親も多少おりますが)
自分自身ですら、盾にする事を厭いません
この時代は、そんな強い母親が大勢居たのです
本当に(TT)
伊達政宗の実母、義姫も家の為に政宗を毒殺しようとしたのかと思いますが、決して政宗個人を憎んでいたとは思えないです。現代では考えもつかないほどの文字道理生き死にの時代・・・。自分のした事が自身のみでなく家族・家臣にまで及ぶ。誰も助けてくれない、生き延びるためには非常に徹しなくてはいけないときもあったのでしょう。このお話の市弥もそうだったと思います。そしてそのことをきちんとお話の中で読めて嬉しかったです。濃姫のことが好きでこちらのサイトに良くお邪魔させていただいてますが、こうして他の人物の心情にも興味を持って調べようと思う事もあります。Haruhi さんには本当に色々と学べて感謝しています。
Re:本当に(TT)
>伊達政宗の実母、義姫も家の為に政宗を毒殺しようとしたのかと思いますが、決して政宗個人を憎んでいたとは思えないです。
実際、その毒殺計画も本当にあったことなのかどうか、怪しいそうです
と言うのも、義姫が政宗を毒殺しようとしたのは、次男に家を継がせたいからと言う理由ですが、政宗はそれを逆手に取って弟を自害させております
それを伝えるのが伊達家の古文書なので、これ自体が武田の『甲陽監軍』(漢字、合ってましたっけ・・・)と同様、偽装された記述がてんこ盛りの、凡そ史料としてはなんの価値もないものだそうで、もしかしたら毒殺事件そのものがなかったのかも知れません
それにその後の政宗も、母に対して随分心配りを匂わせるような手紙を多数残しております
ぶっちゃけ政宗は、かなりのマザコンだったそうですよ
ですので、義姫が政宗を嫌っていたと言うのも眉唾物かも知れません
>Haruhi さんには本当に色々と学べて感謝しています。
いいえ、こちらこそ色んな事を教わっております
ありがとうございます
実際、その毒殺計画も本当にあったことなのかどうか、怪しいそうです
と言うのも、義姫が政宗を毒殺しようとしたのは、次男に家を継がせたいからと言う理由ですが、政宗はそれを逆手に取って弟を自害させております
それを伝えるのが伊達家の古文書なので、これ自体が武田の『甲陽監軍』(漢字、合ってましたっけ・・・)と同様、偽装された記述がてんこ盛りの、凡そ史料としてはなんの価値もないものだそうで、もしかしたら毒殺事件そのものがなかったのかも知れません
それにその後の政宗も、母に対して随分心配りを匂わせるような手紙を多数残しております
ぶっちゃけ政宗は、かなりのマザコンだったそうですよ
ですので、義姫が政宗を嫌っていたと言うのも眉唾物かも知れません
>Haruhi さんには本当に色々と学べて感謝しています。
いいえ、こちらこそ色んな事を教わっております
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『戦国無双3』が絶望的存在であるため、更新予定はありません
◇◇11/19 Nintendo DSソフト◇◇
『トモダチコレクション』
おのうさま(帰蝶)とノブ(信長)が 結婚しました(笑
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おのれコーエーめ
よくもお濃様を邪険にしおってからに・・・(涙
(画像元:コーエー公式サイト)
オンラインゲームにてお濃様発見
転生絵巻伝 三国ヒーローズ公式サイト:GAMESPACE24
『武将紹介』→『ゲーム紹介』→『Exキャラクター紹介』→『赤壁VS桶狭間』にてお濃様閲覧可
キャラクター紹介文
「 絶世の美貌を持つ信長の妻。頭が良く機転が利き、信長の覇業を深く支えた。
また、信長を愛し通した一途な妻でもあった。」
(画像元:GAMESPACE24公式サイト)
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濃姫好きとしては、飲めなくても見逃せない
岐阜の地酒 日本泉公式サイト

(二本セットの画像)
夫婦セット 吟醸ブレンド(信長・濃姫)
本醸造 濃姫
カップ酒 濃姫®=爽やかな麹の薫り高い、カップとは想えない出来上がりのお酒です
吟醸ブレンド 濃姫® ブルーボトル=自然の香りのお酒です。ほんの少し喉を潤す程度でも香りが深く体を突き抜けます
本醸造 濃姫®=容量的に大雑把な感じに想えて、麹の独特の香りを抑えたあっさりとした風味です
今現在、この3種類を試しておりますが、どれも麹臭い雰囲気が全くしません
飲料するもよし、お料理に使うもよし
お料理に使用しても麹の嫌な独特感は全く残りません
奇跡のお酒です
何よりボトルがどれも美しい
清洲桜醸造株式会社公式サイト


濃姫の里 隠し吟醸
フルーティで口当たりが良いです
一応は『辛口』になってますが、ほんのり甘さも残ってます
わたしは料理に使ってます
清洲城信長 鬼ころし
量的に肉や魚の血落としや、料理用として使っています
麹の香りが良いのが特徴ですが、お酒に弱い人は「うっ」と来るかも知れません
どちらも一般スーパーに置いている場合があります
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本醸造 濃姫®=容量的に大雑把な感じに想えて、麹の独特の香りを抑えたあっさりとした風味です
今現在、この3種類を試しておりますが、どれも麹臭い雰囲気が全くしません
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麹の香りが良いのが特徴ですが、お酒に弱い人は「うっ」と来るかも知れません
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