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「半年減俸!」
そう脅され、バタバタと逃げるように本丸に戻る資房らの群から一人、貞勝が戻って来た
「吉兵衛、減俸希望ですか?」
「あ、いえ、そうではなくて 」
お客様が、お待ちです
と、貞勝の言葉に、帰蝶はその客が待っている表座敷へと向った
今日から自分がここの、全ての『主』になった
今までのように局処で暮らすことができない
信長との想い出の詰まった局処の私室から、本丸の、信長の私室に移る
血の海で汚れた畳は全て張り替えられ、だけどそれ以外は決して手を加えぬよう命じた
一年にも満たない間だったが、その部屋には信長の匂いも詰まっている
それを消してしまいたくなかった
床の間に飾った、憎き仇・斎藤義龍から贈られた兼定
決して忘れぬように、と、敢えて飾ることにした
その刀でいつか、義龍の首を落としてやる
そう、決意を固めるかのように
その兼定の上に、父が夫に譲った『土岐・兼氏の太刀』も並べて飾る
二本の刀の後ろを、まるで守るかのように、信長の遺品・種子島式鉄砲を置いた
夫が残した、唯一確かな形見
この世で唯一つの守り鉄砲
柄の部分には今もべったりと、信長の流した血がこびり付いている
帰蝶はそれを拭うことはしなかった
夫の無念、奪われた未来、捻じ伏せられた幸せ、夢見ることすら許されなくなった理想
それら全ての想いを決して忘れない、いっときたりとて、夫の残した想いを無駄にはさせぬよう、その目印、証として残した
鉄の部分の血だけは、洗い落とす
幸い、帰蝶は信長から種子島式の分解整備を教わっていたので、夫の血で錆びさせぬよう、丁寧に拭う
こんな、血の通わぬ冷たい鉄であるのに、今は帰蝶にとって、何よりも温かい
夫の手垢の染み付いた、そして、夫の血をも吸ったこの種子島式が、この世に残った夫の『夢の残り』のように想えて、それだけでも物言わぬ鉄砲が愛しくて仕方ない
そんな想いの詰まった鉄砲、刀と同じ床の間に、信長の、最初で最後の贈り物、揚羽蝶の意匠の飾り櫛を小さな座布団を誂えて飾った
もったいない、と、殆ど使わなかった
夫はそれに呆れたが、だけど、今も真新しい鋼の櫛にですら、夫との想い出が詰まっている
大事な、大事な形見の一つになった
新しくなった畳の真ん中に寝転がり、天井を見上げる
目には木目しか映らない
だけど、目蓋を閉じれば信長の顔が浮かぶ
まるで目に見ているかのように、鮮明と、ありありと、夫の顔が浮かぶ
大丈夫
まだ、忘れてない
夫の面影を
夫の声を
夫の手を
夫の癖を
夫の全てを
貞勝を先頭に、表座敷に急ぐ
「誰なの?」
そう聞いても、貞勝は会ってからのお楽しみと、教えてくれなかった
その表座敷の襖の前で恵那が到着を待っていた
「奥方様! 旦那様、お帰りなさいませ」
「恵那・・・。ただいま」
長く局処を留守していたのだから、さぞや大変だったろう、に、恵那は綻ばんばかりの笑顔を帰蝶に向けた
「どうしたの?恵那。なんだか嬉しそう」
「奥方様・・・」
「何かあったのか?」
夫の可成も聞く
「あの・・・っ、父が・・・、父が・・・」
「林が?」
「義父上様が、どうかなさったのか?」
「ぶ、無事でしたっ」
「ええ?」
「本当か?!」
可成は駆け寄り、恵那の腕を掴んだ
「はいっ。今、遠山様が保護してくださってて、明日にも迎えに行きたいのですが・・・ッ」
「構わないわ、朝一番に迎えに行ってらっしゃい」
「あ、ありがとうございます・・・!」
「そう、遠山・・・。与一様が、保護してくださってたのね・・・」
「あ、明智、の若様が・・・、逃げる最中に屋敷に寄ってくださって、父を連れ出してくださって・・・ッ」
「十兵衛兄様・・・が・・・」
それだけで、明智の末路を知ったような気がした
無事逃げ遂(おお)せたと言うことは、長山城は破棄されたと言うことだ
破棄されたと言うことは、明智の一族は
恵那を夫の可成に任せ、帰蝶は表座敷の襖を開けた
その部屋の中央に、見慣れた顔が二つ
見慣れぬ顔が一つ
自分の帰りをずっと待っていた
「 堀田・・・。兵助・・・・・・・・・・」
「ひ・・・、姫様・・・ッ!」
父の近習だった堀田道空と、父の小姓だった猪子兵助が並んで座っていた
その前に居る少年は、誰だろう
帰蝶には思い当たる人物は居なかった
「姫様・・・!姫様ッ!」
兵助が駆け寄り、跪き、帰蝶の両手を掴んで泣き出した
「どうしたの。どうして、ここに」
「姫様」
兵助とは違い、落ち着いた様子の道空は膝を帰蝶に向け、深々と頭を下げた
「お久しゅうございます」
それに倣って、少年も頭を下げる
「その子は・・・・・・・・・」
「新五郎様でございます」
「新五・・・・・・・・・・・・・」
父の、最後の子
自分の実の弟、新五郎利治
「新五・・・・・・・・・・?」
「あ・・・、姉上・・・様・・・」
感動的な、姉弟の対面
と、言うわけには、行かなかった
帰蝶が信長に嫁いだ時、利治はまだ五つだった
互いに温めた想い出も何もない
五つだった頃の利治の顔は想い出せても、その成長過程を見ていない帰蝶にとっては、『どこかの少年』と同じ意味だ
急に肉親の情が沸くわけでもない
それは利治にしても同じだった
いや、それ以上である
自分にとって、姉の記憶など、あるかないかの曖昧さなのだから
こうして『姉上様』と呼んだ覚えすらない
そんな二人が、父、そして、夫の死で再会することになるとは、なんと言う運命の悪戯か
「 父様、は」
ともすれば崩れてしまいそうな膝を、帰蝶は気力だけで押え付け、表座敷の上座、それまでは信長の指定席だったその座布団の上に座った
落ち着かない兵助は、縋るように帰蝶の側に膝を落とす
「聞き及びかと存じますが」
「ええ」
弥三郎から聞かされていた
その首は義龍に取られたと
だが、薄情かも知れないが、帰蝶には夫のことで手一杯で、父のことまで感傷に浸っていられる余裕はなかった
今頃になって、じわじわと悲しみが降り注ぐ
それでも帰蝶は泣かなかった
しっかと両の目蓋を開き、道空の報告を受ける
「父様の死に際は」
「敵陣、その中央にて、見事討ち果たされました」
「では、自刃ではなく」
「はい。敵と刃交わしながら」
「父様も、ご自分の年も考えず、無謀なことを」
苦笑いしか浮かばない
「されど、斎藤道三は我が誇り。決して落胆すべきことではない」
「はっ」
「それで、お前達はこうして無事逃げ果(おお)せたか」
「はい。辛くも、でございますが」
「誰が手引きした」
「武井様が」
「 先生・・・が・・・」
つい、昔々の呼び方をしてしまい、慌てて顔を顰める
そんな帰蝶を、なつは小さくぷっと笑った
幸い帰蝶には気付かれなかった
「それで、何をしにここに来た」
「お、奥方様・・・、それ、ちょっと酷過ぎませんか?」
弥三郎が、想わず突っ込む
「そりゃね、殿が死んだばかりで大変なのはわかりますが、お身内じゃないですか。奥方様を頼ってここまで来たってのに、その言い草はあんまりです」
「亡くなられた・・・?」
まさか、と、道空の目が大きく見開かれた
利治も同じである
「ええ、その通りよ。あなた達が頼ろうとしていた織田信長は、もう居ない」
「そんな・・・・・・・・」
思惑が外れ、大きく落胆する道空とは対照的に、弟の利治は改めて顔を引き締め、姉に訊ねた
「それで、姉上様は、如何なさりたいのですか」
「お前なら、どうする」
「私なら、父の仇を取ります」
「同じだ」
「では、姫様・・・ッ」
「斎藤との同盟は破棄ッ!これより、宣戦布告を行なう。なつ」
「はいっ」
「河尻、滝川、丹羽、池田、森、太田、前田、それと、斯波兄弟を呼んで」
「はっ、はい!」
なつは慌てて表座敷を飛び出し、貞勝も手伝おうとその後を追った
「奥方様・・・・・」
心細そうな顔をして自分を見詰める弥三郎に、帰蝶は苦笑いする
「力を貸してくれるって、言ったじゃない。あれ、嘘だったの?」
「嘘じゃありませんよ!でも、いきなり宣戦布告って、急過ぎませんか?俺にだって心の準備ってもんがね?」
「心の準備をするより、先に遺言状でも作っておいたらどう?弥三郎の財産の全ては、妻菊子に譲渡するって」
「俺の財産て、長船しかないんですけど・・・」
「売れば当面の足しにはなるでしょ?」
「高かったんですよ?買うのにお菊と、どんだけ言い争ったか」
そんな二人の遣り取りに、兵助はぽかんとし、利治はクスクス笑い、道空は変わらぬ帰蝶のその性格に安堵した
「姫様・・・。いえ、奥方様、と、お呼びすればよろしいのでしょうか」
「どっちでも良いわ」
「では、奥方様。父上、大殿の遺言状を」
懐に大事に仕舞っていた、油紙で包んだ遺言書を、帰蝶に差し出した
「作ってたの?」
「出陣なさる直前に。恐らくは、新九郎様との争いの、その先を予見なさっておられたのかも知れません」
受け取りながら、帰蝶は聞いた
「知りたかったの。教えて」
「はい、なんでございましょう」
「この弥三郎の報告では、兄・・・、いえ、斎藤義龍の兵力は一万五千超え、対し父上は二千にも満たなかったとか。なのにどうして、父上は負け戦を仕掛けたのですか」
道空は帰蝶の質問に逃げず誤魔化さず、真っ直ぐな気持ちで応えた
「あなた様を、そして、あなた様のご主人様を守るためです」
「 私と、吉法師・・・様・・・を?」
「はい」
帰蝶の目が開かれる
「どうして・・・?」
「新九郎様が、密かにこちらの織田の一族と手を組んでいたのは、大殿も気付いておられました。ですが、ご自分が引退すれば、美濃は新九郎様の物になります。それで満足してくださると、大殿は想っておられました。ところが、新九郎様はこの尾張をも着手しようとお考えで、それには、台頭して来られた織田上総介信長様が、邪魔」
「 ええ・・・」
それは帰蝶も知っていた
そのため、信長と、その実の弟である信勝とを争わせようとしていた
帰蝶は兄・義龍と手を組むことで、信勝との争いを避けさせようとしていたのだ
その目論見は外れ、夫は父に味方し、挙句、死んだ
「新九郎様は何れ、尾張に戦を仕掛けるおつもりだったようです。上総介様の、お身内から切り崩して」
「 織田・・・勘十郎信勝・・・ですか」
「はい。自分の手の内に納め、そして、身内同士で争わせ、勿論、新九郎様は織田勘十郎様に援軍を送る盟約も交わされておられたようです」
「つまりは、父上が長井時代、土岐のご兄弟を争わせたのと同じことを再現しようとしたのね?」
それは、帰蝶自ら清洲織田と斯波を争わせるため画策したことと同じだった
但し、こちらは成功して、あちらは失敗に終わった
それだけが自負だった
最も、それによって信長の死亡と言う、大きな痛手を受けたわけだが
「はい、その通りです。しかし、上総介様には大殿の薫陶を受けた奥方様が着いておいでです。いかなる手段も崩されると、新九郎様は読んでおられました。ですから、大殿はご自分が国主に返り咲けば、奥方様と娘婿である上総介様を同時に守れるとお考えになられたのです」
「だから、無謀な戦を仕掛けたの?」
「はい」
「どうして?」
「それは、新九郎様が 」
言いにくそうにするする道空に、帰蝶は詰め寄った
「何?」
「あなた様を無理矢理奪い、織田勘十郎様に差し出すもつもりだったからです」
「どうして、私・・・・・?」
「あなた様が」
道空は、なんでもない顔をしながら、その両目から静かに涙を流す
流しながらこう言った
「美濃の、国譲状だからです」
「 」
なつと貞勝に連れられた秀隆らの面前で、道空が道三の遺言状を読み上げる
一、墓は美濃・常在寺に祀ること
一、六男・藤衛、七男・文右衛門は京・妙覚寺にて、その穢れを注ぐよう
一、道三の財産は全て、九男・新五郎に委ねること
一、美濃の今後は娘・帰蝶と相談すること
一、美濃一国を娘婿・織田上総介に任せること
一、新五郎の身上は、上総介に相談すること
一、仇討ちはせぬこと
一、仲良き恙無く暮らすこと
一、帰蝶は心安く、慎ましく生きること
一、上総介と仲違いせぬこと
一、夫婦助け合って生きること
一、日々感謝を忘れぬこと
一、父のことは、忘れること
一、美濃を愛すること
一、民を愛すること
一、全ての遺言が有効であるのは、帰蝶が上総介の妻であること、上総介が健康であること、将来、美濃にも足を運ぶ事を条件とする
つまりは、帰蝶が信長の妻でなければ、この遺言状は無効だと言うことである
「 」
信長が死に、男も女も泣いた
それでも、道三の遺言書に再び涙する
最後の最後まで、信長・帰蝶夫婦を思い遣る優しさを知り、そして人知れず見守っていたことを知り、誰もが涙した
ただ、帰蝶だけは涙するよりも、優しい想いになれたのか、薄っすらと微笑んでいた
「父様が吉法師様にお任せするよう指示した領地は、どこですか」
「 井ノ口です」
「井ノ口・・・」
それは、美濃の中心
全ての中心
美濃国主の権力の象徴
その井ノ口を、父は夫に委ねた
委ねたいと願っていた
「ならば、我らのすることは、ただ一つ」
「奥方様?」
「井ノ口から義龍を追い出す」
一瞬にしてざわめきが起きる
「そ、そんな・・・!」
「井ノ口が父様から正式に吉法師様に譲られたのなら、井ノ口は吉法師様の物です。それ以外の者が司ることを許してはならないッ」
「ですが、今の我らには無理です!斎藤は大き過ぎる!」
「そうです!身中の虫を抱えたままでは、充分に戦えませんッ」
「それでもやらねばならないッ!強大だからと逃げるのであれば、末森に行けッ!私は止めない!」
「奥方様・・・ッ」
縋るように、なつが帰蝶の肩を掴んだ
「冷静になってください、奥方様!奥方様が取り乱しては、みなが不安になります!」
「誰が取り乱したの。私は冷静よ」
「ですが・・・、どうやって斎藤と競うのですかッ。今の織田はたかだか三千の兵力しかありませんッ。しかも、その殆どは農家のものです。これから田植えや草刈に勤しむ時期に来ているというのに、どうやって戦うんですかッ!」
「それを考えるのが私の役目でしょうッ?!あなた達に押し付けるつもりはないわッ!」
「奥方様・・・ッ!」
悲しそうな顔をするなつの後ろで、秀隆が溜息混じりに言った
「やれやれ、連れないことを」
「 河尻」
「あのね、俺達全員、奥方様に着いて行くって決めたんですよ。何で一人で抱えようとするかなぁ」
「そうですよ。奥方様の悪い癖です」
秀隆に続いて、可成も言う
「ええ、本当に」
可成の後を、恒興が続く
「奥方様ってほんと、一人で突っ走っちゃって、周り、置いてけぼりなんですから」
「勝三郎・・・」
呟くなつの手から、帰蝶の肩が離れた
「少しは頼ってくださいって、言ったでしょう?みんなで考えましょうよ。だって、急に言い出したからって、明日までに斎藤を落とせなんて、さすがに奥方様だって言わないでしょう?それならじっくり、考える暇があるってことじゃないですか」
「そうそう」
恒興の後を、弥三郎が
「じっくり力蓄えて、それからドッカーン!と、斎藤に一泡吹かせてやりましょうよ。殿を失った俺達の悲しみ、憎しみ、怒り、全部ぶちまけてやりましょうよ!ねっ?!奥方様」
「そうだよ。俺だって怒ってるんだよ。うちなんかさ、今家督争いの最中でさ、兄貴が前田継ぐか、俺が継ぐかって親族だけで勝手に相談しちゃっててさ、俺なんかもう蚊帳の外よ?当事者だっつーに。だからさ、織田で力付けて肩書きだってもらおうって、それでゴタゴタ収めようって想った矢先にさ、こんなことになってさ、もうね、やってらんないんすよ。それ、怒り全部斎藤に引き受けてもらいますわ。実家なのに、奥方様には申し訳ないですけど」
「いや・・・」
利家の爆発した不満に、帰蝶は苦笑いした
「お前んちの事情なんか、こっちかんけーねーだろ、何どさくさに紛れてぶちまけてんだよ」
「良いじゃないっすか、河尻様。ついで、ついで」
「何がついでだよ、お前な」
「奥方様」
周囲が秀隆と利家の会話に失笑している中を、義近がおずおずと進み出た
「私はまだ小姓の身分ですが、必要とあればこの岩竜丸の命、どうか奥方様の盾にしてください」
「岩竜丸殿・・・」
「私は・・・。斯波はもう、尾張の国主ではなくなりました。本来なら、何処へなりとも行って野垂れ死ねと言われても仕方がない状況でした。なのに上総介様・・・。殿は、私だけではなく、私の兄弟をも保護し、養育してくださいました。その恩に、どうしても報いたいのです。ですから、どうか、この岩竜丸を 」
「岩竜丸様、その想いは、俺達も一緒ですよ」
言葉の詰まった義近に、秀隆が助け舟を出す
「俺も、殿の遺志を継ぎたい。奥方様」
「 」
帰蝶は義近から秀隆に目を移した
「この河尻与兵衛秀隆、あなたのために生きてゆきます」
「河尻・・・」
「俺だって!奥方様となら例え地の果て地獄の底、どこにだって行けますよ!」
「犬千代・・・」
「俺も。殿には武士にしてもらった恩があります。それを返さなきゃね。まだ満足にお返ししてませんもん」
「弥三郎・・・」
「わ、私だって!」
これ以上先を越されて堪るかと、恒興が裏返った声を張り上げる
「母上様の折檻が怖いから、着いて行くわけじゃありませんっ。私は奥方様と一緒に居たいからっ」
周りから失笑が流れる
「 勝三郎・・・」
なんて恥しい宣言だと、なつは頭から汗を浮かばせた
「ありがとう、勝三郎・・・」
「奥方様。勘定奉行はもう、お決まりですか?まだでしたらこの吉兵衛を、ご推薦くださいましな。東西どこの大名家にも負けぬ国営を、保証いたしますぞ」
「吉兵衛・・・」
「奥方様は、まだ弓の腕が未熟でございますからな、又助の指南、まだまだ必要でございましょう?」
「又助・・・」
「不肖の弟子を中途半端に放り出すのは、又助の名が廃ります。どうか、お側に置いてくださいませ」
「 うん・・・」
「奥方様。私の故郷は小牧の近くですから、美濃の防衛に生まれ故郷を活用くださいませ。ですが、条件が一つ」
「何?五郎左衛門」
「この五郎左衛門が、奥方様のお側に居ることが必須です」
「五郎左衛門・・・」
「奥方様」
「はい」
時親が帰蝶に語り掛ける
「斯波の『旧家臣団』は、まだ生きております。そして、彼らを束ねるのは、この私です」
「ええ」
「ですから、斯波を生かすも殺すも、奥方様次第です」
「平三郎・・・」
「よろしいですよね、岩竜丸様」
「うん、平三郎の好きにしてくれて良い。斯波家臣団と私は、既に決別している。彼らは私の所有物ではない。彼らに生きる道を選ばせてやって欲しい」
「承知いたしました、岩竜丸様」
「岩竜丸殿・・・」
自分よりも幼いこの少年は、自分よりもずっとしっかり、自分の道を歩こうとしている
その姿は眩しいくらいだった
「久助さんからは、なんもないんですか?」
「ん?」
秀隆に声を掛けられ、一益は少しキョトンとして帰蝶に目を向けた
「奥方様」
「はい」
一益はどんな宣言をするのだろう、と、誰もが固唾を呑んで見守る
そんな中で、なんとも言えない一言を発する
「末森に不穏な動きあり」
一斉に、全員がすっ転んだ
「やはり」
ただ、事情を知らない道空、兵助、利治と、それと、一益の報告を期待していた帰蝶だけは転ぶことはない
「あのね、滝川様。何、いきなり軍議?」
「悪いの、か?」
「そう言うんじゃないけど、空気の流れ、わかってる?」
「ふむ・・・」
「どうでも良いでしょ、犬千代。少し黙ってなさい」
「はぁい・・・」
帰蝶に咎められ、ブスッと膨れて引き下がる
「何はともあれ、我ら織田家臣団、これからも奥方様と共に織田の発展のため、邁進して参ります。どうか、よろしくお願い申し上げます」
纏まらない表座敷の空気を、なつが引き締める
改めて平伏するなつに、秀隆、恒興、利家、長秀、貞勝、資房、時親、弥三郎、一益、そして、可成は宣言など必要ないとでも言いたげな顔を続けて下げ、全員が深々と頭を下げる
そんな彼らに、帰蝶は、満面の笑みを浮かばせ、信長の真似をした
「一同、大儀である!」
「 ははッ!」
この光景に、兵助、利治は勿論、冷静沈着なはずの道空ですら目を見張った
斎藤の姫君様は、織田に嫁いだだけの、単なる政略の道具でしかなかったはずだ
それなのに、どうだろう
誰も彼もが織田の人間として
いや
それ以上の
自分達の生きる道標として、後から着いて来ている
誰も彼もが彼女を『主君』と認めている
それは、有り得ない話だった
その家の跡取りを生んだ後でなら、女は敬われ、大切にされる
だが、斎藤の姫君はまだ、その『子』を産んでいない
産まぬまま、惣領が死んだ
それなのに、彼らはそれに悲観することも落胆することもなく、美濃の斎藤から嫁いだこの姫君を、自分達の主、織田の惣領と認めたのだ
絶対に、有り得ない話だった
絶対に、あるわけのない話だった
なのに、自分達のその目の前で、有り得ない話が現実となっている
こうして誰も彼もが彼女に目を合わせ、そして、頭を垂れている
斎藤帰蝶と言う人物は、どれほどの器を持って生まれて来たと言うのか
それはまるで、底なしのように想えた
未知数の未来が今、自分の目の前で扉を開こうとしていた
「滝川、末森の動向は」
「はっ。昨日より城周辺を探っておりますが、那古野より林様が精力的に接近なさっておいでです」
「林・・・。吉法師様が警戒していた相手ですね」
自分が嫁入りした際、木曽大橋まで迎えに来た若侍を想い出す
「はい。殿の 」
「滝川殿」
報告を続ける一益に、なつが口を挟む
「はい、おなつ様。なんでございましょうか」
「今日からこの方が、我らの『殿』です。それなりの呼び方があるでしょ?」
「あ、そうでした・・・」
「な、なつ・・・ッ」
「奥方様、いえ」
なつは再び帰蝶に顔を向け直し、頭を下げ直し、続けた
「殿。どうぞ、ご采配を」
「 」
殿
と、なつは最後まで、信長にはそう呼ばなかった
息子のような存在だったからか、あるいはまだまだ子供と舐めていた部分があったのか、死んだ後でもなつは信長を『若』と呼び続けた
そのなつが、誰かを『殿』と呼んだのは、信秀が死んで以来のことだった
帰蝶の目が開き、それから、たおやかな笑顔を浮かべた
「林様は、先代様の傅役で、誰よりも逸早く先代様に付けられたお方です。その林様が以前より末森に傾倒していることは奥・・・殿もご存知かとは想いますが 」
「滝川」
「はい」
「無理に急に殿なんて呼ばなくて良いのよ。胸に覚えてくれれば、それで良い」
「奥・・・殿」
「みんなも。なつもよ」
「ですが」
「もうしばらく、吉法師様を覚えていて。お願い」
「忘れるわけがありませんよ」
「そうです」
「ええ。ですがやはり、けじめはけじめとして」
「それなら、私が戦に勝った時、呼んでちょうだい。それまでは、今までどおりでお願い」
「 殿・・・」
一人、二人と、静かに無言で頭を下げる
そんな風景に、利治はそっと道空に言った
「あの方が、私の姉上様なのだな・・・」
「 ええ、そうですよ。あの方が、若様の姉上様です。美濃の、至宝です」
「自慢に想おう」
「ええ、そうですね」
まだ年若い利治は、姉・帰蝶を誇らしげに見詰めた
そんな利治に、道空も微笑む
「岩竜丸殿」
「はい」
「大滝丸殿」
「・・・はい」
少し遅れて義近の弟・秀頼も返事する
「ここに来てもらったのは、他でもありません。この土田平三郎時親と共に、斯波家臣団の再編成をお願いしたかったからです」
「斯波・・・の、再編成・・・?」
義近の目がいっぱいに開いた
「何れは日吉丸殿も元服なされるでしょう。その時は、兄弟三人助け合って、共に織田のために尽力していただきとう存じます」
「よ・・・、喜んで・・・!」
まだなんの武功も上げていない自分を、新しい主は一人前と認めてくれた
そして、斯波家旧家臣団再編成と言う大役を与えてくれた
義近は破顔して応えた
こののち、織田家家臣団に組み込まれた斯波旧臣が数多く存在する
数年前より信長に内応していた梁田親子は言うに及ばず、後の『桶狭間合戦』の英雄を輩出した飯尾家、下方家、梶川家、服部家、毛利家、水野家
大膳の一族ながら織田に忠誠を誓う坂井家
『小六』の名で後に名を馳せる蜂須賀家
天下の悪書『武功夜話』で有名な前野家
そして、千秋家
全て義近が帰蝶のために編成した新生斯波家臣団であった
それ以外にも、多くの斯波の旧臣らが弾正忠織田家に拾われる
帰蝶が信頼した家臣らは、彼女の期待に応え、充分に働くこととなるのは、それよりまだ後年のこととしても、この世に帰蝶が作り、育てた軍団ほど、より深い絆で結ばれたものは、どこにも存在しない
どこにも
ここに、新たな『信長軍団』が始動した、運命的な一瞬だった
そう脅され、バタバタと逃げるように本丸に戻る資房らの群から一人、貞勝が戻って来た
「吉兵衛、減俸希望ですか?」
「あ、いえ、そうではなくて
お客様が、お待ちです
と、貞勝の言葉に、帰蝶はその客が待っている表座敷へと向った
今日から自分がここの、全ての『主』になった
今までのように局処で暮らすことができない
信長との想い出の詰まった局処の私室から、本丸の、信長の私室に移る
血の海で汚れた畳は全て張り替えられ、だけどそれ以外は決して手を加えぬよう命じた
一年にも満たない間だったが、その部屋には信長の匂いも詰まっている
それを消してしまいたくなかった
床の間に飾った、憎き仇・斎藤義龍から贈られた兼定
決して忘れぬように、と、敢えて飾ることにした
その刀でいつか、義龍の首を落としてやる
そう、決意を固めるかのように
その兼定の上に、父が夫に譲った『土岐・兼氏の太刀』も並べて飾る
二本の刀の後ろを、まるで守るかのように、信長の遺品・種子島式鉄砲を置いた
夫が残した、唯一確かな形見
この世で唯一つの守り鉄砲
柄の部分には今もべったりと、信長の流した血がこびり付いている
帰蝶はそれを拭うことはしなかった
夫の無念、奪われた未来、捻じ伏せられた幸せ、夢見ることすら許されなくなった理想
それら全ての想いを決して忘れない、いっときたりとて、夫の残した想いを無駄にはさせぬよう、その目印、証として残した
鉄の部分の血だけは、洗い落とす
幸い、帰蝶は信長から種子島式の分解整備を教わっていたので、夫の血で錆びさせぬよう、丁寧に拭う
こんな、血の通わぬ冷たい鉄であるのに、今は帰蝶にとって、何よりも温かい
夫の手垢の染み付いた、そして、夫の血をも吸ったこの種子島式が、この世に残った夫の『夢の残り』のように想えて、それだけでも物言わぬ鉄砲が愛しくて仕方ない
そんな想いの詰まった鉄砲、刀と同じ床の間に、信長の、最初で最後の贈り物、揚羽蝶の意匠の飾り櫛を小さな座布団を誂えて飾った
もったいない、と、殆ど使わなかった
夫はそれに呆れたが、だけど、今も真新しい鋼の櫛にですら、夫との想い出が詰まっている
大事な、大事な形見の一つになった
新しくなった畳の真ん中に寝転がり、天井を見上げる
目には木目しか映らない
だけど、目蓋を閉じれば信長の顔が浮かぶ
まるで目に見ているかのように、鮮明と、ありありと、夫の顔が浮かぶ
まだ、忘れてない
夫の面影を
夫の声を
夫の手を
夫の癖を
夫の全てを
貞勝を先頭に、表座敷に急ぐ
「誰なの?」
そう聞いても、貞勝は会ってからのお楽しみと、教えてくれなかった
その表座敷の襖の前で恵那が到着を待っていた
「奥方様!
「恵那・・・。ただいま」
長く局処を留守していたのだから、さぞや大変だったろう、に、恵那は綻ばんばかりの笑顔を帰蝶に向けた
「どうしたの?恵那。なんだか嬉しそう」
「奥方様・・・」
「何かあったのか?」
夫の可成も聞く
「あの・・・っ、父が・・・、父が・・・」
「林が?」
「義父上様が、どうかなさったのか?」
「ぶ、無事でしたっ」
「ええ?」
「本当か?!」
可成は駆け寄り、恵那の腕を掴んだ
「はいっ。今、遠山様が保護してくださってて、明日にも迎えに行きたいのですが・・・ッ」
「構わないわ、朝一番に迎えに行ってらっしゃい」
「あ、ありがとうございます・・・!」
「そう、遠山・・・。与一様が、保護してくださってたのね・・・」
「あ、明智、の若様が・・・、逃げる最中に屋敷に寄ってくださって、父を連れ出してくださって・・・ッ」
「十兵衛兄様・・・が・・・」
それだけで、明智の末路を知ったような気がした
無事逃げ遂(おお)せたと言うことは、長山城は破棄されたと言うことだ
破棄されたと言うことは、明智の一族は
恵那を夫の可成に任せ、帰蝶は表座敷の襖を開けた
その部屋の中央に、見慣れた顔が二つ
見慣れぬ顔が一つ
自分の帰りをずっと待っていた
「
「ひ・・・、姫様・・・ッ!」
父の近習だった堀田道空と、父の小姓だった猪子兵助が並んで座っていた
その前に居る少年は、誰だろう
帰蝶には思い当たる人物は居なかった
「姫様・・・!姫様ッ!」
兵助が駆け寄り、跪き、帰蝶の両手を掴んで泣き出した
「どうしたの。どうして、ここに」
「姫様」
兵助とは違い、落ち着いた様子の道空は膝を帰蝶に向け、深々と頭を下げた
「お久しゅうございます」
それに倣って、少年も頭を下げる
「その子は・・・・・・・・・」
「新五郎様でございます」
「新五・・・・・・・・・・・・・」
父の、最後の子
自分の実の弟、新五郎利治
「新五・・・・・・・・・・?」
「あ・・・、姉上・・・様・・・」
感動的な、姉弟の対面
と、言うわけには、行かなかった
帰蝶が信長に嫁いだ時、利治はまだ五つだった
互いに温めた想い出も何もない
五つだった頃の利治の顔は想い出せても、その成長過程を見ていない帰蝶にとっては、『どこかの少年』と同じ意味だ
急に肉親の情が沸くわけでもない
それは利治にしても同じだった
いや、それ以上である
自分にとって、姉の記憶など、あるかないかの曖昧さなのだから
こうして『姉上様』と呼んだ覚えすらない
そんな二人が、父、そして、夫の死で再会することになるとは、なんと言う運命の悪戯か
「
ともすれば崩れてしまいそうな膝を、帰蝶は気力だけで押え付け、表座敷の上座、それまでは信長の指定席だったその座布団の上に座った
落ち着かない兵助は、縋るように帰蝶の側に膝を落とす
「聞き及びかと存じますが」
「ええ」
弥三郎から聞かされていた
その首は義龍に取られたと
だが、薄情かも知れないが、帰蝶には夫のことで手一杯で、父のことまで感傷に浸っていられる余裕はなかった
今頃になって、じわじわと悲しみが降り注ぐ
それでも帰蝶は泣かなかった
しっかと両の目蓋を開き、道空の報告を受ける
「父様の死に際は」
「敵陣、その中央にて、見事討ち果たされました」
「では、自刃ではなく」
「はい。敵と刃交わしながら」
「父様も、ご自分の年も考えず、無謀なことを」
苦笑いしか浮かばない
「されど、斎藤道三は我が誇り。決して落胆すべきことではない」
「はっ」
「それで、お前達はこうして無事逃げ果(おお)せたか」
「はい。辛くも、でございますが」
「誰が手引きした」
「武井様が」
「
つい、昔々の呼び方をしてしまい、慌てて顔を顰める
そんな帰蝶を、なつは小さくぷっと笑った
幸い帰蝶には気付かれなかった
「それで、何をしにここに来た」
「お、奥方様・・・、それ、ちょっと酷過ぎませんか?」
弥三郎が、想わず突っ込む
「そりゃね、殿が死んだばかりで大変なのはわかりますが、お身内じゃないですか。奥方様を頼ってここまで来たってのに、その言い草はあんまりです」
「亡くなられた・・・?」
まさか、と、道空の目が大きく見開かれた
利治も同じである
「ええ、その通りよ。あなた達が頼ろうとしていた織田信長は、もう居ない」
「そんな・・・・・・・・」
思惑が外れ、大きく落胆する道空とは対照的に、弟の利治は改めて顔を引き締め、姉に訊ねた
「それで、姉上様は、如何なさりたいのですか」
「お前なら、どうする」
「私なら、父の仇を取ります」
「同じだ」
「では、姫様・・・ッ」
「斎藤との同盟は破棄ッ!これより、宣戦布告を行なう。なつ」
「はいっ」
「河尻、滝川、丹羽、池田、森、太田、前田、それと、斯波兄弟を呼んで」
「はっ、はい!」
なつは慌てて表座敷を飛び出し、貞勝も手伝おうとその後を追った
「奥方様・・・・・」
心細そうな顔をして自分を見詰める弥三郎に、帰蝶は苦笑いする
「力を貸してくれるって、言ったじゃない。あれ、嘘だったの?」
「嘘じゃありませんよ!でも、いきなり宣戦布告って、急過ぎませんか?俺にだって心の準備ってもんがね?」
「心の準備をするより、先に遺言状でも作っておいたらどう?弥三郎の財産の全ては、妻菊子に譲渡するって」
「俺の財産て、長船しかないんですけど・・・」
「売れば当面の足しにはなるでしょ?」
「高かったんですよ?買うのにお菊と、どんだけ言い争ったか」
そんな二人の遣り取りに、兵助はぽかんとし、利治はクスクス笑い、道空は変わらぬ帰蝶のその性格に安堵した
「姫様・・・。いえ、奥方様、と、お呼びすればよろしいのでしょうか」
「どっちでも良いわ」
「では、奥方様。父上、大殿の遺言状を」
懐に大事に仕舞っていた、油紙で包んだ遺言書を、帰蝶に差し出した
「作ってたの?」
「出陣なさる直前に。恐らくは、新九郎様との争いの、その先を予見なさっておられたのかも知れません」
受け取りながら、帰蝶は聞いた
「知りたかったの。教えて」
「はい、なんでございましょう」
「この弥三郎の報告では、兄・・・、いえ、斎藤義龍の兵力は一万五千超え、対し父上は二千にも満たなかったとか。なのにどうして、父上は負け戦を仕掛けたのですか」
道空は帰蝶の質問に逃げず誤魔化さず、真っ直ぐな気持ちで応えた
「あなた様を、そして、あなた様のご主人様を守るためです」
「
「はい」
帰蝶の目が開かれる
「どうして・・・?」
「新九郎様が、密かにこちらの織田の一族と手を組んでいたのは、大殿も気付いておられました。ですが、ご自分が引退すれば、美濃は新九郎様の物になります。それで満足してくださると、大殿は想っておられました。ところが、新九郎様はこの尾張をも着手しようとお考えで、それには、台頭して来られた織田上総介信長様が、邪魔」
「
それは帰蝶も知っていた
そのため、信長と、その実の弟である信勝とを争わせようとしていた
帰蝶は兄・義龍と手を組むことで、信勝との争いを避けさせようとしていたのだ
その目論見は外れ、夫は父に味方し、挙句、死んだ
「新九郎様は何れ、尾張に戦を仕掛けるおつもりだったようです。上総介様の、お身内から切り崩して」
「
「はい。自分の手の内に納め、そして、身内同士で争わせ、勿論、新九郎様は織田勘十郎様に援軍を送る盟約も交わされておられたようです」
「つまりは、父上が長井時代、土岐のご兄弟を争わせたのと同じことを再現しようとしたのね?」
それは、帰蝶自ら清洲織田と斯波を争わせるため画策したことと同じだった
但し、こちらは成功して、あちらは失敗に終わった
それだけが自負だった
最も、それによって信長の死亡と言う、大きな痛手を受けたわけだが
「はい、その通りです。しかし、上総介様には大殿の薫陶を受けた奥方様が着いておいでです。いかなる手段も崩されると、新九郎様は読んでおられました。ですから、大殿はご自分が国主に返り咲けば、奥方様と娘婿である上総介様を同時に守れるとお考えになられたのです」
「だから、無謀な戦を仕掛けたの?」
「はい」
「どうして?」
「それは、新九郎様が
言いにくそうにするする道空に、帰蝶は詰め寄った
「何?」
「あなた様を無理矢理奪い、織田勘十郎様に差し出すもつもりだったからです」
「どうして、私・・・・・?」
「あなた様が」
道空は、なんでもない顔をしながら、その両目から静かに涙を流す
流しながらこう言った
「美濃の、国譲状だからです」
「
なつと貞勝に連れられた秀隆らの面前で、道空が道三の遺言状を読み上げる
一、墓は美濃・常在寺に祀ること
一、六男・藤衛、七男・文右衛門は京・妙覚寺にて、その穢れを注ぐよう
一、道三の財産は全て、九男・新五郎に委ねること
一、美濃の今後は娘・帰蝶と相談すること
一、美濃一国を娘婿・織田上総介に任せること
一、新五郎の身上は、上総介に相談すること
一、仇討ちはせぬこと
一、仲良き恙無く暮らすこと
一、帰蝶は心安く、慎ましく生きること
一、上総介と仲違いせぬこと
一、夫婦助け合って生きること
一、日々感謝を忘れぬこと
一、父のことは、忘れること
一、美濃を愛すること
一、民を愛すること
一、全ての遺言が有効であるのは、帰蝶が上総介の妻であること、上総介が健康であること、将来、美濃にも足を運ぶ事を条件とする
「
信長が死に、男も女も泣いた
それでも、道三の遺言書に再び涙する
最後の最後まで、信長・帰蝶夫婦を思い遣る優しさを知り、そして人知れず見守っていたことを知り、誰もが涙した
ただ、帰蝶だけは涙するよりも、優しい想いになれたのか、薄っすらと微笑んでいた
「父様が吉法師様にお任せするよう指示した領地は、どこですか」
「
「井ノ口・・・」
それは、美濃の中心
全ての中心
美濃国主の権力の象徴
その井ノ口を、父は夫に委ねた
委ねたいと願っていた
「ならば、我らのすることは、ただ一つ」
「奥方様?」
「井ノ口から義龍を追い出す」
一瞬にしてざわめきが起きる
「そ、そんな・・・!」
「井ノ口が父様から正式に吉法師様に譲られたのなら、井ノ口は吉法師様の物です。それ以外の者が司ることを許してはならないッ」
「ですが、今の我らには無理です!斎藤は大き過ぎる!」
「そうです!身中の虫を抱えたままでは、充分に戦えませんッ」
「それでもやらねばならないッ!強大だからと逃げるのであれば、末森に行けッ!私は止めない!」
「奥方様・・・ッ」
縋るように、なつが帰蝶の肩を掴んだ
「冷静になってください、奥方様!奥方様が取り乱しては、みなが不安になります!」
「誰が取り乱したの。私は冷静よ」
「ですが・・・、どうやって斎藤と競うのですかッ。今の織田はたかだか三千の兵力しかありませんッ。しかも、その殆どは農家のものです。これから田植えや草刈に勤しむ時期に来ているというのに、どうやって戦うんですかッ!」
「それを考えるのが私の役目でしょうッ?!あなた達に押し付けるつもりはないわッ!」
「奥方様・・・ッ!」
悲しそうな顔をするなつの後ろで、秀隆が溜息混じりに言った
「やれやれ、連れないことを」
「
「あのね、俺達全員、奥方様に着いて行くって決めたんですよ。何で一人で抱えようとするかなぁ」
「そうですよ。奥方様の悪い癖です」
秀隆に続いて、可成も言う
「ええ、本当に」
可成の後を、恒興が続く
「奥方様ってほんと、一人で突っ走っちゃって、周り、置いてけぼりなんですから」
「勝三郎・・・」
呟くなつの手から、帰蝶の肩が離れた
「少しは頼ってくださいって、言ったでしょう?みんなで考えましょうよ。だって、急に言い出したからって、明日までに斎藤を落とせなんて、さすがに奥方様だって言わないでしょう?それならじっくり、考える暇があるってことじゃないですか」
「そうそう」
恒興の後を、弥三郎が
「じっくり力蓄えて、それからドッカーン!と、斎藤に一泡吹かせてやりましょうよ。殿を失った俺達の悲しみ、憎しみ、怒り、全部ぶちまけてやりましょうよ!ねっ?!奥方様」
「そうだよ。俺だって怒ってるんだよ。うちなんかさ、今家督争いの最中でさ、兄貴が前田継ぐか、俺が継ぐかって親族だけで勝手に相談しちゃっててさ、俺なんかもう蚊帳の外よ?当事者だっつーに。だからさ、織田で力付けて肩書きだってもらおうって、それでゴタゴタ収めようって想った矢先にさ、こんなことになってさ、もうね、やってらんないんすよ。それ、怒り全部斎藤に引き受けてもらいますわ。実家なのに、奥方様には申し訳ないですけど」
「いや・・・」
利家の爆発した不満に、帰蝶は苦笑いした
「お前んちの事情なんか、こっちかんけーねーだろ、何どさくさに紛れてぶちまけてんだよ」
「良いじゃないっすか、河尻様。ついで、ついで」
「何がついでだよ、お前な」
「奥方様」
周囲が秀隆と利家の会話に失笑している中を、義近がおずおずと進み出た
「私はまだ小姓の身分ですが、必要とあればこの岩竜丸の命、どうか奥方様の盾にしてください」
「岩竜丸殿・・・」
「私は・・・。斯波はもう、尾張の国主ではなくなりました。本来なら、何処へなりとも行って野垂れ死ねと言われても仕方がない状況でした。なのに上総介様・・・。殿は、私だけではなく、私の兄弟をも保護し、養育してくださいました。その恩に、どうしても報いたいのです。ですから、どうか、この岩竜丸を
「岩竜丸様、その想いは、俺達も一緒ですよ」
言葉の詰まった義近に、秀隆が助け舟を出す
「俺も、殿の遺志を継ぎたい。奥方様」
「
帰蝶は義近から秀隆に目を移した
「この河尻与兵衛秀隆、あなたのために生きてゆきます」
「河尻・・・」
「俺だって!奥方様となら例え地の果て地獄の底、どこにだって行けますよ!」
「犬千代・・・」
「俺も。殿には武士にしてもらった恩があります。それを返さなきゃね。まだ満足にお返ししてませんもん」
「弥三郎・・・」
「わ、私だって!」
これ以上先を越されて堪るかと、恒興が裏返った声を張り上げる
「母上様の折檻が怖いから、着いて行くわけじゃありませんっ。私は奥方様と一緒に居たいからっ」
周りから失笑が流れる
「
なんて恥しい宣言だと、なつは頭から汗を浮かばせた
「ありがとう、勝三郎・・・」
「奥方様。勘定奉行はもう、お決まりですか?まだでしたらこの吉兵衛を、ご推薦くださいましな。東西どこの大名家にも負けぬ国営を、保証いたしますぞ」
「吉兵衛・・・」
「奥方様は、まだ弓の腕が未熟でございますからな、又助の指南、まだまだ必要でございましょう?」
「又助・・・」
「不肖の弟子を中途半端に放り出すのは、又助の名が廃ります。どうか、お側に置いてくださいませ」
「
「奥方様。私の故郷は小牧の近くですから、美濃の防衛に生まれ故郷を活用くださいませ。ですが、条件が一つ」
「何?五郎左衛門」
「この五郎左衛門が、奥方様のお側に居ることが必須です」
「五郎左衛門・・・」
「奥方様」
「はい」
時親が帰蝶に語り掛ける
「斯波の『旧家臣団』は、まだ生きております。そして、彼らを束ねるのは、この私です」
「ええ」
「ですから、斯波を生かすも殺すも、奥方様次第です」
「平三郎・・・」
「よろしいですよね、岩竜丸様」
「うん、平三郎の好きにしてくれて良い。斯波家臣団と私は、既に決別している。彼らは私の所有物ではない。彼らに生きる道を選ばせてやって欲しい」
「承知いたしました、岩竜丸様」
「岩竜丸殿・・・」
自分よりも幼いこの少年は、自分よりもずっとしっかり、自分の道を歩こうとしている
その姿は眩しいくらいだった
「久助さんからは、なんもないんですか?」
「ん?」
秀隆に声を掛けられ、一益は少しキョトンとして帰蝶に目を向けた
「奥方様」
「はい」
一益はどんな宣言をするのだろう、と、誰もが固唾を呑んで見守る
そんな中で、なんとも言えない一言を発する
「末森に不穏な動きあり」
一斉に、全員がすっ転んだ
「やはり」
ただ、事情を知らない道空、兵助、利治と、それと、一益の報告を期待していた帰蝶だけは転ぶことはない
「あのね、滝川様。何、いきなり軍議?」
「悪いの、か?」
「そう言うんじゃないけど、空気の流れ、わかってる?」
「ふむ・・・」
「どうでも良いでしょ、犬千代。少し黙ってなさい」
「はぁい・・・」
帰蝶に咎められ、ブスッと膨れて引き下がる
「何はともあれ、我ら織田家臣団、これからも奥方様と共に織田の発展のため、邁進して参ります。どうか、よろしくお願い申し上げます」
纏まらない表座敷の空気を、なつが引き締める
改めて平伏するなつに、秀隆、恒興、利家、長秀、貞勝、資房、時親、弥三郎、一益、そして、可成は宣言など必要ないとでも言いたげな顔を続けて下げ、全員が深々と頭を下げる
そんな彼らに、帰蝶は、満面の笑みを浮かばせ、信長の真似をした
「一同、大儀である!」
「
この光景に、兵助、利治は勿論、冷静沈着なはずの道空ですら目を見張った
斎藤の姫君様は、織田に嫁いだだけの、単なる政略の道具でしかなかったはずだ
それなのに、どうだろう
誰も彼もが織田の人間として
いや
それ以上の
自分達の生きる道標として、後から着いて来ている
誰も彼もが彼女を『主君』と認めている
それは、有り得ない話だった
その家の跡取りを生んだ後でなら、女は敬われ、大切にされる
だが、斎藤の姫君はまだ、その『子』を産んでいない
産まぬまま、惣領が死んだ
それなのに、彼らはそれに悲観することも落胆することもなく、美濃の斎藤から嫁いだこの姫君を、自分達の主、織田の惣領と認めたのだ
絶対に、有り得ない話だった
絶対に、あるわけのない話だった
なのに、自分達のその目の前で、有り得ない話が現実となっている
こうして誰も彼もが彼女に目を合わせ、そして、頭を垂れている
斎藤帰蝶と言う人物は、どれほどの器を持って生まれて来たと言うのか
それはまるで、底なしのように想えた
未知数の未来が今、自分の目の前で扉を開こうとしていた
「滝川、末森の動向は」
「はっ。昨日より城周辺を探っておりますが、那古野より林様が精力的に接近なさっておいでです」
「林・・・。吉法師様が警戒していた相手ですね」
自分が嫁入りした際、木曽大橋まで迎えに来た若侍を想い出す
「はい。殿の
「滝川殿」
報告を続ける一益に、なつが口を挟む
「はい、おなつ様。なんでございましょうか」
「今日からこの方が、我らの『殿』です。それなりの呼び方があるでしょ?」
「あ、そうでした・・・」
「な、なつ・・・ッ」
「奥方様、いえ」
なつは再び帰蝶に顔を向け直し、頭を下げ直し、続けた
「殿。どうぞ、ご采配を」
「
殿
と、なつは最後まで、信長にはそう呼ばなかった
息子のような存在だったからか、あるいはまだまだ子供と舐めていた部分があったのか、死んだ後でもなつは信長を『若』と呼び続けた
そのなつが、誰かを『殿』と呼んだのは、信秀が死んで以来のことだった
帰蝶の目が開き、それから、たおやかな笑顔を浮かべた
「林様は、先代様の傅役で、誰よりも逸早く先代様に付けられたお方です。その林様が以前より末森に傾倒していることは奥・・・殿もご存知かとは想いますが
「滝川」
「はい」
「無理に急に殿なんて呼ばなくて良いのよ。胸に覚えてくれれば、それで良い」
「奥・・・殿」
「みんなも。なつもよ」
「ですが」
「もうしばらく、吉法師様を覚えていて。お願い」
「忘れるわけがありませんよ」
「そうです」
「ええ。ですがやはり、けじめはけじめとして」
「それなら、私が戦に勝った時、呼んでちょうだい。それまでは、今までどおりでお願い」
「
一人、二人と、静かに無言で頭を下げる
そんな風景に、利治はそっと道空に言った
「あの方が、私の姉上様なのだな・・・」
「
「自慢に想おう」
「ええ、そうですね」
まだ年若い利治は、姉・帰蝶を誇らしげに見詰めた
そんな利治に、道空も微笑む
「岩竜丸殿」
「はい」
「大滝丸殿」
「・・・はい」
少し遅れて義近の弟・秀頼も返事する
「ここに来てもらったのは、他でもありません。この土田平三郎時親と共に、斯波家臣団の再編成をお願いしたかったからです」
「斯波・・・の、再編成・・・?」
義近の目がいっぱいに開いた
「何れは日吉丸殿も元服なされるでしょう。その時は、兄弟三人助け合って、共に織田のために尽力していただきとう存じます」
「よ・・・、喜んで・・・!」
まだなんの武功も上げていない自分を、新しい主は一人前と認めてくれた
そして、斯波家旧家臣団再編成と言う大役を与えてくれた
義近は破顔して応えた
こののち、織田家家臣団に組み込まれた斯波旧臣が数多く存在する
数年前より信長に内応していた梁田親子は言うに及ばず、後の『桶狭間合戦』の英雄を輩出した飯尾家、下方家、梶川家、服部家、毛利家、水野家
大膳の一族ながら織田に忠誠を誓う坂井家
『小六』の名で後に名を馳せる蜂須賀家
天下の悪書『武功夜話』で有名な前野家
そして、千秋家
全て義近が帰蝶のために編成した新生斯波家臣団であった
それ以外にも、多くの斯波の旧臣らが弾正忠織田家に拾われる
帰蝶が信頼した家臣らは、彼女の期待に応え、充分に働くこととなるのは、それよりまだ後年のこととしても、この世に帰蝶が作り、育てた軍団ほど、より深い絆で結ばれたものは、どこにも存在しない
どこにも
ここに、新たな『信長軍団』が始動した、運命的な一瞬だった
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濃姫(帰蝶)好きの方へ
本日は当サイトにお越しいただき、ありがとうございます
先ずはこちらのページを一読していただけると嬉しいです→お願い
文章の誤字・脱字が時折混ざっております
見付け次第修正をしておりますが、それでもおかしな個所がありましたらお詫び申し上げます
了承なしのリンクは謹んでご辞退申し上げます
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更新のお知らせ
(02/20)
(10/16)
(11/04)
(06/24)
(03/25)
◇◇プチお知らせ◇◇
1/22 『信長ノをんな』壱~参 / 公開
現在更新中の創作物(INDEX)
信長 ~群青色の約束~
こんな感じのこと書いてます
カウント(0)は現在非公開中です
管理人の独り言も混じっております
[11/04 Haruhi]
[08/13 kitilyou]
[06/26 kitilyou命]
[03/02 kitilyou命]
[03/01 kitilyou命]
ゲームブログ
千極一夜
家庭用ゲーム専用ブログです
『戦国無双3』が絶望的存在であるため、更新予定はありません
◇◇11/19 Nintendo DSソフト◇◇
『トモダチコレクション』
おのうさま(帰蝶)とノブ(信長)が 結婚しました(笑
家庭用ゲーム専用ブログです
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『トモダチコレクション』
おのうさま(帰蝶)とノブ(信長)が 結婚しました(笑
祝:お濃さま出演 But模擬専… (戦国無双3)
おのれコーエーめ
よくもお濃様を邪険にしおってからに・・・(涙
(画像元:コーエー公式サイト)
オンラインゲームにてお濃様発見
転生絵巻伝 三国ヒーローズ公式サイト:GAMESPACE24
『武将紹介』→『ゲーム紹介』→『Exキャラクター紹介』→『赤壁VS桶狭間』にてお濃様閲覧可
キャラクター紹介文
「 絶世の美貌を持つ信長の妻。頭が良く機転が利き、信長の覇業を深く支えた。
また、信長を愛し通した一途な妻でもあった。」
(画像元:GAMESPACE24公式サイト)
勝手にPR
濃姫好きとしては、飲めなくても見逃せない
岐阜の地酒 日本泉公式サイト

(二本セットの画像)
夫婦セット 吟醸ブレンド(信長・濃姫)
本醸造 濃姫
カップ酒 濃姫®=爽やかな麹の薫り高い、カップとは想えない出来上がりのお酒です
吟醸ブレンド 濃姫® ブルーボトル=自然の香りのお酒です。ほんの少し喉を潤す程度でも香りが深く体を突き抜けます
本醸造 濃姫®=容量的に大雑把な感じに想えて、麹の独特の香りを抑えたあっさりとした風味です
今現在、この3種類を試しておりますが、どれも麹臭い雰囲気が全くしません
飲料するもよし、お料理に使うもよし
お料理に使用しても麹の嫌な独特感は全く残りません
奇跡のお酒です
何よりボトルがどれも美しい
清洲桜醸造株式会社公式サイト


濃姫の里 隠し吟醸
フルーティで口当たりが良いです
一応は『辛口』になってますが、ほんのり甘さも残ってます
わたしは料理に使ってます
清洲城信長 鬼ころし
量的に肉や魚の血落としや、料理用として使っています
麹の香りが良いのが特徴ですが、お酒に弱い人は「うっ」と来るかも知れません
どちらも一般スーパーに置いている場合があります
岐阜の地酒 日本泉公式サイト
(二本セットの画像)
夫婦セット 吟醸ブレンド(信長・濃姫)
本醸造 濃姫
カップ酒 濃姫®=爽やかな麹の薫り高い、カップとは想えない出来上がりのお酒です
吟醸ブレンド 濃姫® ブルーボトル=自然の香りのお酒です。ほんの少し喉を潤す程度でも香りが深く体を突き抜けます
本醸造 濃姫®=容量的に大雑把な感じに想えて、麹の独特の香りを抑えたあっさりとした風味です
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奇跡のお酒です
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わたしは料理に使ってます
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